復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー
【第八話】スパイル・ラーチェス 11
まるで天変地異でも起きたかのように……
空気が乱れ、突風が吹き荒れる。
――風撃閃。
たった2日前に使ったばかりの、三谷の"秘奥"を使う。
恭司は木を踏み台にして溜めに溜めた足の力を爆発させると、空中に身を乗り出した。
力が強すぎたのか、木は爆ぜるように恭司のいた上半分を消し飛ばし、根は力無く地面から引きはがされる。
速くて疾い。
木から離れて男に一直線に向かう恭司の体には凄まじい強風が絡み付き、渦を巻き、その姿を横向きの竜巻へと変えた。
(マ、マズイ!!)
目にして初めて気づいた。
この障壁じゃあ勝てない。
止められない。
もって20秒……いや、10秒。
迷う。
避けるか……反撃するか。
しかし、
迷う時間などあるはずはないし、迷う必要もなかった。
あの竜巻の大きさ……速度。
避けられるはずがない。
男はできる限り肺に空気を溜め込んだ。
限られた時間。
胸が空気でパンパンになるくらい息を吸い込む。
ダガァァン!!
ぶつかった。
恭司の放つ巨大な暴風の槍は炎の障壁と激しく衝突し、巨大な轟音と共に森を揺るがす。
その瞬間、
恭司が障壁を破る間際、男は肺に溜め込んだ全ての空気を解放し、口から巨大な炎を吹き出した。
これが……恭司の感じた悪寒の正体。
男の口から放射される巨大な炎は、恭司の放つ暴風の大砲と直接かちあう形になり、数秒の均衡状態が続く。
しかし、
その均衡は、それほど長くはもたなかった。
「く……ッ!!」
男の体が圧力に負け、徐々に後ろへと下がっていく。
ホンの1分すらもたなかった。
この嵐のせいか、または大量の出血のせいか、男の放つ炎の火力も落ちてきているように見える。
足が地面に引きずられる。
喰斬りでやられた時の傷が思いのほか深い……。
あれから一度も出血が止まらず、男の足元には夥しいまでの血が溜まり、やはり限界なのが目に見えていた。
だが、
それを言えば恭司も同じだ。
クナイを山ほど体に突き刺した上、2度に渡る火の地獄はとてつもないダメージを体に与えたはずだし、控えめに言っても、ダメージは五分といった所だろう。
さっきから恭司の下にも、決して少なくはない量の血の海が出来上がっている。
お互いほぼラストスパートといった所だろうか。
踏ん張るならここだ。
男はまだ残っている全身の血をたぎらせ、少しでも押し返すために、力を振り絞った。
「何ッ!?」
均衡が、再び戻り始める。
男の放つ炎の威力が増すにつれ、周囲の熱気は目に見えて上昇を始めていた。
木が燃える。
森が死を予感させる。
2人の戦いを中心に、その炎火は瞬く間に周囲へと広がっていき、夜であるにもかかわらず、その場はオレンジ色に照らされていた。
空気が乱れ、突風が吹き荒れる。
――風撃閃。
たった2日前に使ったばかりの、三谷の"秘奥"を使う。
恭司は木を踏み台にして溜めに溜めた足の力を爆発させると、空中に身を乗り出した。
力が強すぎたのか、木は爆ぜるように恭司のいた上半分を消し飛ばし、根は力無く地面から引きはがされる。
速くて疾い。
木から離れて男に一直線に向かう恭司の体には凄まじい強風が絡み付き、渦を巻き、その姿を横向きの竜巻へと変えた。
(マ、マズイ!!)
目にして初めて気づいた。
この障壁じゃあ勝てない。
止められない。
もって20秒……いや、10秒。
迷う。
避けるか……反撃するか。
しかし、
迷う時間などあるはずはないし、迷う必要もなかった。
あの竜巻の大きさ……速度。
避けられるはずがない。
男はできる限り肺に空気を溜め込んだ。
限られた時間。
胸が空気でパンパンになるくらい息を吸い込む。
ダガァァン!!
ぶつかった。
恭司の放つ巨大な暴風の槍は炎の障壁と激しく衝突し、巨大な轟音と共に森を揺るがす。
その瞬間、
恭司が障壁を破る間際、男は肺に溜め込んだ全ての空気を解放し、口から巨大な炎を吹き出した。
これが……恭司の感じた悪寒の正体。
男の口から放射される巨大な炎は、恭司の放つ暴風の大砲と直接かちあう形になり、数秒の均衡状態が続く。
しかし、
その均衡は、それほど長くはもたなかった。
「く……ッ!!」
男の体が圧力に負け、徐々に後ろへと下がっていく。
ホンの1分すらもたなかった。
この嵐のせいか、または大量の出血のせいか、男の放つ炎の火力も落ちてきているように見える。
足が地面に引きずられる。
喰斬りでやられた時の傷が思いのほか深い……。
あれから一度も出血が止まらず、男の足元には夥しいまでの血が溜まり、やはり限界なのが目に見えていた。
だが、
それを言えば恭司も同じだ。
クナイを山ほど体に突き刺した上、2度に渡る火の地獄はとてつもないダメージを体に与えたはずだし、控えめに言っても、ダメージは五分といった所だろう。
さっきから恭司の下にも、決して少なくはない量の血の海が出来上がっている。
お互いほぼラストスパートといった所だろうか。
踏ん張るならここだ。
男はまだ残っている全身の血をたぎらせ、少しでも押し返すために、力を振り絞った。
「何ッ!?」
均衡が、再び戻り始める。
男の放つ炎の威力が増すにつれ、周囲の熱気は目に見えて上昇を始めていた。
木が燃える。
森が死を予感させる。
2人の戦いを中心に、その炎火は瞬く間に周囲へと広がっていき、夜であるにもかかわらず、その場はオレンジ色に照らされていた。
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