復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー
【第八話】スパイル・ラーチェス ④
「へぇ……。やっぱ一人……か。ミッドカオス人にしちゃあ珍しいな」
すると、
気配の主は恭司の視線の先の茂みからヌッと姿を現した。
若い……。
年齢はおそらく恭司と同じくらいか。
金髪の長い髪をツンツンに突き立て、目は赤いルビー色に染まっている。
さらに、
見張るべきはその体だ。
太く分厚い丸太のような腕に、服の上からでも一目で分かるくらい胸筋や腹筋も発達している。
手にはずいぶんと巨大で長大な爪を身につけ、明らかに切れ味よりも壊れにくさと威力が感じられるその爪身は、まるで化け物の牙のように鈍く輝いていた。
見たら分かるような、『強者』だ。
「お前、何の目的で一人でこんな所通ってんだ?一人でディオラスはないだろうから……ドラルスか?でも、ドラルスなら別にこんな所通らなくても、ミッドカオスからちゃんとした道あるだろう?」
年齢が近そうに思ったからか、男の話しかけてくる言葉にはどこか馴れ馴れしさがあった。
出会って数分では何も分からないが、もしかしたら性格によるものなのかもしれない。
すると、
返答もせずにジッと観察していると、男は茂みから少し跳んで近づいてきた。
戦闘における、射程圏内だ。
「おいッ!!話しかけてんだから答えろよ!!クール気取られても面白くも何ともねぇ!!今俺がわざわざここまで近づいた意味分かるよな!?この距離は俺様の爪の射程圏内だ!!あんまりナメたことしてると、胴体まるごと引き裂くぞ!!」
男から殺気が滲み出る。
挑発だ。
恭司の無視にそこまで腹が立ったのか、それとも元々イラついていたのかは分からないが、今、男の殺気は明らかに恭司の方を向いている。
だが、
恭司は刀に手をかけなかった。
「質問が答えにくかったんだ。俺の目的はドラルス。正規のルートを通らないのは……成り行きだ。で、俺は今急いでいるし、疲れている。できれば戦闘は避けたい。見逃してくれないか?」
恭司は自分にできる最も丁寧な言葉で男に返事を返した。
今のところディオラスに特別な感情は無いし、戦闘を避けられるなら避けたい所だ。
男はニヤリと口を緩める。
「なんだ、ちゃんと喋れるんじゃねぇか。それにホッとしたよ。まさかこの俺が無視されているのかと思ったんだ。悪いな、絡んだりして。先に行きなよ。疲れてるんだろう?ドラルスには良いホテルや宿がたくさんある。さっさと行って休んでくるといいよ」
男はそう言って一歩後ろにひいた。
……射程圏外。
恭司は刀から手を離したまま、クルリと振り返る。
すると……
「死ね!!」
恭司が後ろを向いた途端、男は瞬時に懐からクナイを取り出し、その背中に向けておもいっきり投げ付けてきた。
弾丸のような速度でクナイが飛ぶ。
だが、
クナイが恭司の背中に当たるよりも早く、恭司は上へと跳んでいた。
手は既に刀のもとにあり、刀身が鞘を走る。
三谷の基本技が一つ、『大三日月』。
三日月状の斬撃は空中から男めがけて飛び、
そして……
地面に衝突した。
男は三日月が放たれると、当たる直前に後ろに跳んでいたのだ。
その様子をしっかり見ていた男は、口元を緩ませながら、あの長い爪を構えて笑っていた。
すると、
気配の主は恭司の視線の先の茂みからヌッと姿を現した。
若い……。
年齢はおそらく恭司と同じくらいか。
金髪の長い髪をツンツンに突き立て、目は赤いルビー色に染まっている。
さらに、
見張るべきはその体だ。
太く分厚い丸太のような腕に、服の上からでも一目で分かるくらい胸筋や腹筋も発達している。
手にはずいぶんと巨大で長大な爪を身につけ、明らかに切れ味よりも壊れにくさと威力が感じられるその爪身は、まるで化け物の牙のように鈍く輝いていた。
見たら分かるような、『強者』だ。
「お前、何の目的で一人でこんな所通ってんだ?一人でディオラスはないだろうから……ドラルスか?でも、ドラルスなら別にこんな所通らなくても、ミッドカオスからちゃんとした道あるだろう?」
年齢が近そうに思ったからか、男の話しかけてくる言葉にはどこか馴れ馴れしさがあった。
出会って数分では何も分からないが、もしかしたら性格によるものなのかもしれない。
すると、
返答もせずにジッと観察していると、男は茂みから少し跳んで近づいてきた。
戦闘における、射程圏内だ。
「おいッ!!話しかけてんだから答えろよ!!クール気取られても面白くも何ともねぇ!!今俺がわざわざここまで近づいた意味分かるよな!?この距離は俺様の爪の射程圏内だ!!あんまりナメたことしてると、胴体まるごと引き裂くぞ!!」
男から殺気が滲み出る。
挑発だ。
恭司の無視にそこまで腹が立ったのか、それとも元々イラついていたのかは分からないが、今、男の殺気は明らかに恭司の方を向いている。
だが、
恭司は刀に手をかけなかった。
「質問が答えにくかったんだ。俺の目的はドラルス。正規のルートを通らないのは……成り行きだ。で、俺は今急いでいるし、疲れている。できれば戦闘は避けたい。見逃してくれないか?」
恭司は自分にできる最も丁寧な言葉で男に返事を返した。
今のところディオラスに特別な感情は無いし、戦闘を避けられるなら避けたい所だ。
男はニヤリと口を緩める。
「なんだ、ちゃんと喋れるんじゃねぇか。それにホッとしたよ。まさかこの俺が無視されているのかと思ったんだ。悪いな、絡んだりして。先に行きなよ。疲れてるんだろう?ドラルスには良いホテルや宿がたくさんある。さっさと行って休んでくるといいよ」
男はそう言って一歩後ろにひいた。
……射程圏外。
恭司は刀から手を離したまま、クルリと振り返る。
すると……
「死ね!!」
恭司が後ろを向いた途端、男は瞬時に懐からクナイを取り出し、その背中に向けておもいっきり投げ付けてきた。
弾丸のような速度でクナイが飛ぶ。
だが、
クナイが恭司の背中に当たるよりも早く、恭司は上へと跳んでいた。
手は既に刀のもとにあり、刀身が鞘を走る。
三谷の基本技が一つ、『大三日月』。
三日月状の斬撃は空中から男めがけて飛び、
そして……
地面に衝突した。
男は三日月が放たれると、当たる直前に後ろに跳んでいたのだ。
その様子をしっかり見ていた男は、口元を緩ませながら、あの長い爪を構えて笑っていた。
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