復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー
【第八話】スパイル・ラーチェス ②
「あの黒い塊はホント何だったんだろうな……。雰囲気からして只者じゃないのは間違いねぇが……」
あの時のやり取りを思い出す。
ビスはあの男を『ティアル・サーライト』と呼んでいた。
それは、このヒューゴ村からすぐ側にある『ディオラス』の皇太子の名だ。
悪鬼のような強さと聞いてはいるが、まさか皇太子が一人で他国の領土に現れるとは思わなかった。
いくら腕に覚えがあったって、皇太子が単独で他国をふらつき、敵の実力者に道楽で喧嘩を売るなど普通じゃない。
シェルだってそんなことはしないだろう。
頭がおかしいとしか思えない。
「確か……人を探しているって言ってたな。あんなのに追われるとは、気の毒な奴もいたものだ」
ティアルの異名は『金属人間』だ。
恭司自身、聞いたことはあってもそれがどういう意味なのかは分からなかったが、一度見たら納得した。
なんせ、"そのままの意味"だったからだ。
全身真っ黒なあの体は、本当に金属だったのだろう。
それに、
ビスに対して突撃する間際にも、腕が槍のような形に変わる姿を見た。
それだけでも、どういう戦い方をするかくらいは予想がつく。
修吾との約束がある以上、いずれ戦り合うことになるだろうが、気の重い相手だった。
「ま、攻略方法については当面の課題だな。とりあえず進むか」
恭司は一人でにそう呟くと、早々に支度を整えることにした。
骨折の治療が最大の理由だが、このままではいずれ他の住民が訪ねてきた際に大事になるかもしれないからだ。
昨日のことだから今はまだ大丈夫だが、死体はいずれ腐敗するし、あの家は治療院だ。
何かの際に誰か訪ねてくる可能性は大きい。
事が大きくなる前に、早めに家を出るのが正解だろう。
(ミッドカオスもアレで諦めたとは思えない。ビスとあのイカレ王子の戦いがどうなったかは知らねぇが、俺が生きてると分かった時点でシェルは追手を差し向けてくるだろう。本当に忌々しい……)
恭司は家の中を物色し、必要な物を片っ端から見繕ってカバンにしまっていく。
外は嵐だが、今は少しでも早くドラルスで治療を受ける必要があるし、お尋ね者の恭司としては、この環境下はむしろ都合が良かった。
恭司は家の中にあった薬や食料、金などを根こそぎ奪うと、ゆっくりとドアを開けて外に出る。
幸い、この嵐のおかげで村に人影は無く、絶好の出発日和だ。
恭司はあくまでも周りからの視線を気にしながら、目立たないよう気配を消して、静かに森の中に紛れていった。
あの時のやり取りを思い出す。
ビスはあの男を『ティアル・サーライト』と呼んでいた。
それは、このヒューゴ村からすぐ側にある『ディオラス』の皇太子の名だ。
悪鬼のような強さと聞いてはいるが、まさか皇太子が一人で他国の領土に現れるとは思わなかった。
いくら腕に覚えがあったって、皇太子が単独で他国をふらつき、敵の実力者に道楽で喧嘩を売るなど普通じゃない。
シェルだってそんなことはしないだろう。
頭がおかしいとしか思えない。
「確か……人を探しているって言ってたな。あんなのに追われるとは、気の毒な奴もいたものだ」
ティアルの異名は『金属人間』だ。
恭司自身、聞いたことはあってもそれがどういう意味なのかは分からなかったが、一度見たら納得した。
なんせ、"そのままの意味"だったからだ。
全身真っ黒なあの体は、本当に金属だったのだろう。
それに、
ビスに対して突撃する間際にも、腕が槍のような形に変わる姿を見た。
それだけでも、どういう戦い方をするかくらいは予想がつく。
修吾との約束がある以上、いずれ戦り合うことになるだろうが、気の重い相手だった。
「ま、攻略方法については当面の課題だな。とりあえず進むか」
恭司は一人でにそう呟くと、早々に支度を整えることにした。
骨折の治療が最大の理由だが、このままではいずれ他の住民が訪ねてきた際に大事になるかもしれないからだ。
昨日のことだから今はまだ大丈夫だが、死体はいずれ腐敗するし、あの家は治療院だ。
何かの際に誰か訪ねてくる可能性は大きい。
事が大きくなる前に、早めに家を出るのが正解だろう。
(ミッドカオスもアレで諦めたとは思えない。ビスとあのイカレ王子の戦いがどうなったかは知らねぇが、俺が生きてると分かった時点でシェルは追手を差し向けてくるだろう。本当に忌々しい……)
恭司は家の中を物色し、必要な物を片っ端から見繕ってカバンにしまっていく。
外は嵐だが、今は少しでも早くドラルスで治療を受ける必要があるし、お尋ね者の恭司としては、この環境下はむしろ都合が良かった。
恭司は家の中にあった薬や食料、金などを根こそぎ奪うと、ゆっくりとドアを開けて外に出る。
幸い、この嵐のおかげで村に人影は無く、絶好の出発日和だ。
恭司はあくまでも周りからの視線を気にしながら、目立たないよう気配を消して、静かに森の中に紛れていった。
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