復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー

ノベルバユーザー520245

【第七話】逃走 ③

「お?今、この辺りから殺気を感じたなぁ……」


ビスはそこで移動を止めた。

宙を進むナイフは恭司の真上で停止し、ビスは楽しそうにキョロキョロと見回す。


(しまった……ッ!!)


恭司は後悔に表情を歪めた。

思わず抑えきれなくなってしまったが、今ビスと戦っては勝ち目がない。

まだ正確な場所までは分からないだろうが、勘付かれるキッカケを作ってしまった。

不覚だ。


「クククク……ッ!!元々地道に人探しなんて性に合わなかったんだ。ヒントをくれたようで助かるよ」


ビスはそう言うと、瞬時に数多のナイフを空中展開した。

その数は200にも届くかもしれない。

ビスは嫌らしい笑みを浮かべると、それらを全て、下に向けて解き放った。


「じゃあ……ッ!!処刑開始といこうかッ!!」


200あまりのナイフは凄まじい勢いで森の中に投下された。

ナイフは木々の間を縫い、あるいは枝ごと突き破って、その場一帯をまとめて刃で覆い尽くす。

恭司はそれを、身を隠しながら無言で見つめることしか出来なかった。


(相変わらずふざけた能力だ。あの量のナイフを瞬時に空中展開し、宙を走らせるなんて、どんなチートスキルだ……)


内心で辟易する。

森の中で息を潜める中、運良くナイフには当たらなかったものの、この調子で続けられればいずれは当たらざるを得なくなってくるだろう。

一帯を丸裸にされる前に、どうにかして移動するしかない。


(ナイフだけでそれをするには、最低でもあと1回はさっきのを行う必要があるはず。それまでが移動のチャンスだ)


恭司はそう判断すると、早速動き出した。

木の陰から音もなく姿を現し、存在感を消したまま、物陰を無音で移動する。

しかし、

そこで恭司は思い出した。

ビスの能力。

それは、ナイフだけではなかったはずだ。

恭司は地面に突き刺さっているナイフをハッとして見つめる。

そのナイフたちには、所々に術符が巻き付けられていた。


「ククククククッ!!ここからが本番さぁ!!イッツ!!ショータイム!!」


すると、

術符の巻き付けられたナイフたちの間で赤い光が結ばれると、それらは途端に正方形を作り出した。

それは森の各地で結ばれ、いくつもの正方形が生み出される。

恭司は気付いてすぐに走った。

正方形の中は危険だと、本能と経験が大声で叫んでいた。

そして、

その危険信号は見事に的中する。

赤い光で囲まれた正方形は一気に真っ赤に染まると、そのまま正方形状の火柱が上がった。

天に届きそうなほど巨大な火柱が森の所々で上がり、恭司はその間を駆け抜ける。

発動前に動けて良かった。

初見ならこれで終わっていた。

父や修吾の時に見ていたからこそ気付けたのだ。


(なん……ッて、こと……しやがる……ッ!!)


ビスは元々、ナイフだけで一帯を潰そうとは考えていない。

ナイフを利用した"陰陽術"で、この森を焼き尽くすつもりだ。

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