復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー

ノベルバユーザー520245

【第六話】王族狩り 12

「ハハハハ!!ハハハハハハハハハハァァアアアア!!イイゾォオオ!!この感じ!!最高だァ!!もっと楽しませろよ!!もっとヤらせろよ!!もっともっとくれよ!!」


シェルはテンションが高まるあまり、もはや皇太子としての高潔さはどこかにやってしまっているようだった。

戦いの集中は鋭くなる一方で、空気がバチバチと弾け飛ぶ。

王族狩りは相変わらずイラついた様子で、いつまでも決着がつかないこの状況に怒りと憎しみが止まらなかった。

三谷の技をここまで駆使しておきながら倒せないなど、"あってはならない"。


「クソがぁぁぁぁああああ!!いつまでも笑ってんじゃねぇぞ!!何で死なねぇんだ!!」


王族狩りは叫びながら、移動中に分身を作っていった。

三日月と斬撃を絶え間なく繰り出しながら、自分と全く同じ見た目の存在をいくつも生み出していく。

王族狩りの後ろに王族狩りが続き、傍から見れば妖術にしか見えない光景だ。

これこそ、三谷の基本技が一つ、『殺影』。


「刻んでやるぞ、シェル・ローズ!!惨殺だ!!」


1人の声が分身全てからも発される。

本来は1つしか作れない分身を、王族狩りは4つ作ってみせた。

誰にでも出来ることじゃない。

彼だから出来た。

幼い頃から神童と呼ばれるほどの才覚があり、歴代最強と呼ばれたほどの男に育てられた、彼だからこそ出来たのだ。

王族狩りは分身を使い、シェルに直接向かわせる。

4人の分身と王族狩りはそれぞれ全く違うフォームでシェルに斬りかかり、合計5人の王族狩りは一斉に攻撃を仕掛けた。

殺影は今回初めて使ったし、この極限の中でのイレギュラーだ。

"普通なら"慌てふためく。

"普通なら"どれが本物か迷う。

だが、

シェルは、本物の王族狩りだけを見ると、間髪入れずにいきなり球体を放ってきた。


「なっ!?」


予想外の出来事。

予想外の切り返し。

分身を完全に無視した動きに、王族狩りは対処しきれなかった。

今も尚、分身はシェルに攻撃を仕掛けているが、シェルは全く意にも介していない。

虚をつかれた王族狩りは、球体によって弾き飛ばされ、木の幹に背中からぶつかった。


「がはぁっ!!」


口から血が飛び出し、危うく意識を失いかける。

あの不意打ち以来、初のクリーンヒット。

体中が電撃を帯び、ほとんどマトモに食らってしまった。

王族狩りは前を見ると、シェルが剣の切っ先をこちらに向けている。

何をする気かはすぐに分かった。


「デデデでぇぇぇぇぇん(電)!!」


剣の切っ先から放たれる雷撃砲。

横向きの雷は王族狩りにまっすぐ向かい、王族狩りは瞬動を使って瞬時に横へ避けた。

代わりに木が薙ぎ倒される中、王族狩りは辛くも体制を整える。

頭はパニック状態だった。


(何故、他が偽物だと分かった!?)


殺影で作り出した分身に見た目の違いは全く無い。

構えている武器から着物に付いたヨゴレまで、その全てが完全に同じ状態で作られるのだ。

見破られる要素はなかったはずだ。

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