復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー

ノベルバユーザー520245

【第六話】王族狩り ⑤

「て、敵の攻撃だー!!全員、配置につけー!!」


将軍の慌てた指示が現場に響く。

兵士たちはハッと我に帰るかのように動き出した。

何があったのか分からないが、何かあったのだ。

シェルを守らなければならない。

そして、

それから時を置かずして、気配のあった所に突如、風が吹き始めた。

ゴオオオッと強烈な旋風が巻き上がり、シェルは咄嗟に気付いて雷の障壁を張る。

嫌な予感がしたーー。

途端、

旋風は巨大な螺旋を描き出し、横向きの竜巻となってシェルに突っ込んできた。


「ば、バカなッ!!」


竜巻と障壁がぶつかり、一瞬だけ膠着する。

だが、

咄嗟の障壁では弱すぎた。

あっという間に弾かれ、シェルは背後の兵士ごと後ろに吹き飛ばされる。

道連れにされた兵士たちはその悉くが薙ぎ倒され、シェルの体は森の中にまで突入した。

数多の木々をへし折りながら、シェルの体はようやく木々の1つで止まり、一瞬意識を失いそうになる。

ダメージは深刻だった。


「あ、有り得ない……。有り得ないぞ、コレは……」


朦朧とする意識の中、シェルは呟く。

訓練場の方から兵士たちの悲鳴が聞こえた。

きっと王族狩りが暴れているのだろう。

兵士たちにあんな攻撃を防ぐ術は持たせていない。

おそらくは蹂躙されているはずだ。


「有り得ない……。まさか、また現れるなど、あってはならない……」


シェルは何とか木に掴まり、立ち上がる。

あの風を操る攻撃には覚えがあった。

ありすぎていた。

こんな事が出来るのはあの一族しかいない。

シェルは息を吸い込み、叫ぶ。


「まだ生きていたのか!!三谷一族ッ!!」


シェルの体から電流が放出される。

バチバチと空気を散らし、地面を捲り上がらせるほどの威力と迫力を持って、シェルは怒りを露わにした。

こんなことにならないように、あの日は父『バルキー・ローズ』と綿密に気配を探したのだ。

捜索隊も出し、全員死んでいることを確信するまで、何度も何度も丁寧に探したはずだったのだ。

それなのに……

それなのにだ。


「どうやって生き延びたァ!!絶対に吐いてもらうぞッ!!」


シェルは雷を纏い、さっきいた所まで戻る。

その動きは目に止まらぬほど高速で、およそ人の出せる動きではなかった。

コレも、シェルの雷技が一つ。

その名は、『雷迅』。


「ッ!!」


突如現れたシェルに、王族狩りは動揺を隠せなかった。

まだ生きているだろうと思っていたが、こんなに早く戻ってくるとは予想外だ。

王族狩りは風の障壁を張るが、今度はシェルの方が早い。

シェルは剣を振りかぶると、雷を纏った状態で振り下ろした。

今度は王族狩りが後ろに飛ばされ、森の寸前の所まで吹き飛ばされる。

ようやく、対面の時が来た。

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