復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー

ノベルバユーザー520245

【第六話】王族狩り ③

「シェル様……敵の気配は……」


シェルのすぐ側で待機している将軍が耳元で尋ねる。

シェルは首を横に振った。


「そうですか……」


将軍は相変わらずの緊張した面持ちで持ち場に戻る。

ーーシェルには昔から特別な力があった。

体内で雷を生成できるのだ。

それは空から雷を落としたり、直接的な攻撃に使ったりと、とても強力な能力だが、シェルの一番のお気に入りは『気配察知』ーー。

『雷伝』というシェルのオリジナル技だった。

微弱な電気を自分の周囲に張り巡らし、そこに引っかかる者の居場所を特定できるのだ。

要は雷による索敵網を張る訳だが、精度は恐ろしく正確で、情報をほぼ一瞬で把握することができる。

問題点があるとすればエネルギー消費だ。

雷の生成なんてものが無制限にできる訳はなく、雷伝も範囲を広げれば広げるほどエネルギーを消費する。

雷を空から落とすなんて以ての外だ。

撃てても日に2発か3発が限界だった。


(しかし、雷伝は範囲を調整するだけで大幅にコストを抑えられるからな。軍略を武器とするミッドカオスにとって、コレほど便利な技はない)


雷伝はシェルの意のままに範囲を変えられ、地面に張る形なども思うがままだった。

必要の無い所には張らず、必要な所にだけ集中すれば、効率よく敵の位置を炙り出せる。

大砲と組み合わせれば無敵だ。

だからこそ、

シェルはこの作戦に自信を持っていた。

自分の周囲に限定されるため普段は使えないが、自分に向かってくる相手なら効率的に網を張り、コストを削減できる。

欲しい所にだけ張っておけば、無駄にエネルギーを消費することもない。


(まぁ、それでも普通に現れてくれるのが最良な訳だが、仮にコッソリ来たとしても、この布陣ならすぐに分かる。敵が陣に紛れ込んだ瞬間、雷撃で瞬殺だ)


シェルは内心で目算を立てる。

兵をコの字型に配置したのは、自分との間に極力兵を挟むことで、弓などの遠距離攻撃を防ぐためだ。

正面だけは敢えて開けているが、正面からならどんな攻撃でも防げる自信があった。

そして、

陣の周りには森が広がっているが、今回はそこまで雷伝の網を張っているため、現れた途端、すぐに分かる。

シェルはほくそ笑んだ。


「さぁ、いつでも来い。どれだけいるのか知らないが、返り討ちにしてやるぞ」


表情に余裕が表れる。

すると、

その矢先に森の中から気配を感じた。

場所は正面だ。

コの字型の開いている所を狙ったのだろう。

シェルの正面に位置する森の中に、その気配はあった。

シェルは嬉しそうに口元を緩める。

だが、

動くにはまだ早い。


(感じている気配は1つだけだ。おそらくは斥候か何かだろう。ここで動いてしまえば、肝心の本体が出て来なくなる可能性がある)


シェルは気付かないフリをしたまま、一旦放置することにした。

この作戦はあくまで王族狩りを殲滅することが目的だ。

生き残りを出してしまっては意味がない。

完全完璧に潰し切る必要がある。

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