復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー

ノベルバユーザー520245

【第六話】王族狩り ②

「そこ!!隊列が乱れているぞ!!半歩下がれ!!」


隊長から兵士に向けた怒号が飛ぶ。

昨日の会議で決定した通り、今日は『王族狩り』を討ち取る決行日だった。

昨日話し合って今日本番に移行したのだ。

現場はかなり慌ただしい様相を醸し出している。

シェルはそれを、泰然とした態度で見回すのみだった。


「シェル様、兵どもの配置、完了致しました」


隊長の一人が報告に現れる。

シェルは鷹揚に頷いた。


「ご苦労。兵士たちに警戒だけは怠らぬよう伝えておけ」

「ハッ!!」


隊長は返答し、踵を返して元の場所へ戻っていった。

シェルは彼の後ろ姿を見送った後、改めて現場を見回す。

そこには、シェルを中心としてコの字型に陣形を整えた兵士たちの姿があった。

数は一体どれほどになるのか、見た目では検討もつかない。

見渡す限りの人、人、人だ。

結局、バルキーの判断で全軍とまではいかず、シェルが自由に出来る兵士のみとなったが、それでも膨大な数だ。

とてもじゃないが、犯人グループ1つにかける人員じゃない。

しかし、

ここにいる兵士たちは皆緊張した面持ちだった。

固くなってぎこちない動きをしている者もいれば、しきりに辺りを見回してビクビクしている者もいる。

それはシェルからの号令だから、というだけでもなかった。

王族狩りの犯行によって、直接的に被害を受けていたのはむしろ彼ら兵士たちの方だったのだ。

王族狩りは、王族の周囲にいる民間人も容赦なく皆殺しにする異常性を持っている。

彼らはいつ自分たちが被害者になるか分からない状況で、この1年間を過ごしてきたのだ。

怯えるのはむしろ当然のことだった。


「目標は『王族狩り』グループの首だ!!民たちの安全を守るために!!ここで戦うぞ!!」

「おお!!」


シェルの号令に、付き従う兵たちは唸りを上げる。

それは全員ではないだろう。

中には王族狩りを恐れている者たちもいるだろう。

だが、

関係ない。

殺らなければ殺られる。

そういう世界だ。

いつまでもビクビクして過ごすわけにもいかないし、恐ければ来なくていいなどと言えるほどの余裕もない。

覚悟が決まらないなら、そのまま死んでもらうしかないのだ。

シェルは相変わらず泰然とそこに立ち、迎え撃つ心積りを整える。

敵がこの軍勢を見て本当に来るかは賭けだが、今回はシェル自身が囮としてここにいるのだ。

敵もこれだけ王族にこだわっている以上、シェルの顔は当然知っているだろう。

これまでの傾向を見る限りでは、

来るはずだ。

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