復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー

ノベルバユーザー520245

【第四話】三谷恭司 16

「何で…………何……で……」


あまりに多くの涙を流した目から、今度は血が流れ出る。

「何で」を繰り返すばかりだった口が、ようやく次の言葉を思い出した。

あの時、皆が叫んでいた呪いの名。

この事態を引き起こした悪魔の国。

恭司は呟く。


「ミッドカオス……」


声が怨嗟に満ち満ちる。

静かだが激しい感情がこもっていた。

この戦争で、恭司は独りになったのだ。

もう三谷はおろか、日本国民自体、誰も生き残ってはいないだろう。

皆死に、恭司以外は誰も残っていない。

今になって、修吾の言葉を思い出す。


【恭司君……。長らく君を見てきて……私は……俺は、確信している。君こそが……お前……こそが……三谷の王たる器だ。三谷の祖先に、最も祝福された者だ。

だから……お前が証明してくれ。三谷は間違っていなかったことを……。三谷は、最強であることを。

お前が……お前が、やらなければならない。三谷の、日本国の祖先たちに最も愛された、お前、こそが、三谷の最強を証明しなければならないのだ……。

辛く険しい道のりも……お前ならきっと成し遂げられる。長きに渡る三谷の"怨念"を引き継ぐお前なら……きっと、きっと叶えられる。

待っているぞ、その時を。皆と一緒に、あの……世で……ずっと見ている。

頼んだ……ぞ……三谷、恭……司】


「そうだ……。約束した。約束……したんだ……」


この戦争で、日本国の三谷の誇りは既にズタズタに引き裂かれた。

何もかもを持っていかれた。

『最強』を奪われ、

『仲間』を奪われ、

日本国が誇っていた地位や名誉も失った。


「許さない……許せない……」


黒い感情が湧き出てくる。

血が沸騰しそうに熱い。

怒りが憎しみが抑えられない。

もう恭一郎も修吾も優香もいないのだ。

独りなのだ。

誰もいない。

皆死んだ。

復讐しないといけない。

皆の仇を討たなければいけない。

そして、

三谷の『最強』を、もう一度教え込まないといけない。

恭司は血で紅く染まった目を見開き、叫ぶ。


「ウオオオオオオオオオ!!許さんッ!!決して許さんぞォォ!!ミッドカオス!!!!貴様らを滅するまでッ!!俺は死なない!!いつまでも追いかけてやる!!いつまでも殺し続けてやる!!貴様らの国に属していた者全てッ!!一族郎党の全てを皆殺しにするまでッ!!俺は死なない!!地を這ってでも貴様らを追い詰メ!!コロシテヤルゾォォォオオオ!!!!」


ーーこうして、ミッドカオスと日本国の戦いは終結し、日本国は消滅の時を迎えた。

日本国消滅の報せに世界中が歓喜し、近隣の諸国は心から胸を撫でおろした。

ミッドカオスは三谷を『全滅』させたことも強調し、それは世界を安堵させると同時に、ミッドカオスの強さも際立たせた。

次の標的になりたくない国々はこぞってミッドカオスの傘下に降っていき、ミッドカオスはさらに強大な国へと躍進していくことになる。


ーーーーだが、

世間はまだ知らなかった。

生き残りがいたことを。

三谷はまだ、終わっていなかったことを。

世間はまだ、誰も知る由もなかった。

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