復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー

ノベルバユーザー520245

【第四話】三谷恭司 14

「はぁ……はぁ……。そうだ……皆のお墓作らないと」


恭司はひとしきり泣き終えると、近くに墓を作り始めた。

今は簡単な物しか作れないが、父や他の生き残りと合流した後、立派な物を作ろうと、心に誓った。

皆の遺体を分かる範囲でなるべく多く集め、地面に埋めなければならない。

しかし、

そこで気付いた。

ようやく気が付いた。

あれだけ酷かった自分の体が、回復していることに。


「は?ど、どういうことだ?俺はあの時、ほとんど死にかけだったんだぞ?」


意識を朦朧とさせるくらい夥しかった出血が消えている。

体中を蝕んでいた酷い火傷も。

潰れていた内臓も、焼け爛れた頭皮も、全てが回復している。

皆のことばかりに意識が集中して、気付かなかった。


「おかしいだろう!!何で俺だけなんだ!!何でこんなことになっているんだ!!」


気付いてからはパニックだった。

あれから一体どれだけ経っていたのか分からないが、こんな化け物じみた回復力など恭司は持っていなかった。

本当だったら、あの時自分も皆と同じように死ねていたはずだったのに。


「何が起きているんだ……何が……」


状況を把握しようとすればするほど混乱した。

通常ではあり得ないことが起きている。

何かがあったのだ。

恭司の意識が無いうちに、ここで何かが行われた。

恭司はそんな中でもひとまず皆の墓を作り、動き出すことにした。

至急、確認しなければならないことが出来たからだ。


「俺は一体どれほど眠っていたんだ!!戦況は今、どうなっている!!」


改めて見てみると、あれだけの人数を殺した爆炎は、既に消えた状態となっていた。

死体はほとんどが灰になり、誰が誰なのか確認が難しいほど、"完全に終わった後"の状態になっているのだ。

自分が生きていることが一番の疑問だが、あれだけの火が森の中であれほど燃え盛ったにもかかわらず、ここまで綺麗に鎮火されているなどおかしすぎる。

人為的なものとしか思えないが、恭司が気を失っている間に一体どれほど経ったというのか。


(俺の意識がまだ残っていた時、父上の指揮のもと、日本国とミッドカオスの最後の激戦が行われていたはず。アレはどうなった?父や皆は無事なのか?)


悪い予感が次々と胸を打ち、止まることを知らなかった。

焦りが一気に吹き出し、足が勝手に急ぎ出す。

瞬動はほぼ自動的に発動され、恭司は森の中を一心不乱に駆け抜けた。

距離が離れていたのが憎らしい。

恭司は風のような速度で木々の間を突っ切り、急ぎに急いだ。


「くそッ!!くそくそくそッ!!何故俺はこんなにも遅い!!何故俺はもっと速く走れないんだ!!」


ふと、恭一郎と修吾の背中が目に浮かぶ。

2人はもっと速かった。

こんなにゆっくりではなく、目に留めるのが難しいほど速くて早くて疾かった。

恭司は雄叫びを上げながら、足が千切れんばかりに全力で疾走し、しばらくして戦場に辿り着いた。

森の中で黒い広場になったそこに足を踏み入れ、息を切らしながら顔を上げる。

誰でもいいから、

ただそこにいることを、願っていた。

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