復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー

ノベルバユーザー520245

【第四話】三谷恭司 12

「優香……。優……香……」


恭司は出血多量で冷たくなってきている自らの体を無理矢理動かし、地面を這いずった。

爆炎で熱く燃え盛る地面に手を付き、炎を避けながら体を引っ張る。

優香は昔からの幼馴染だ。

いつも四六時中ずっと一緒で、恭司にとってはこの世で一番特別な存在だった。

楽しい時も苦しい時も常に一緒にいた優香は、恭司の横にいるのが当たり前で、近くにいないと不安になることもあった。

それくらい、2人は特別仲が良く、まるで一心同体のような存在でもあったのだ。

しかし、


「優……香……?」


這いずる先で見えた優香の顔。

大きくてクリクリした目に、いつも愛らしい表情を浮かべる頬。

間違いなく優香のはずなのに、

その優香の顔は、

今まさに火に炙られていて、

人の肉が焼かれる酷い悪臭を放っていた。


「ああああああああああああああああああああああああああ!!!!ゆううううううかあああああああああ!!!!」


思わず大きな声が出た。

他は吹き飛んだのか、首から上だけが火に焼かれ、優香の目だけがこちらを見つめている。

恭司は自分の体が動かないことを憎んだ。

進もうとしてもうまく進まない。

掌が地面の温度で焼ける中でも恭司は手を前に出し、体を無理矢理引きずって、優香のもとに向かうも、体に力が入らないおかげで全然辿り着けないのだ。

悔しくて涙が出る。

辛くて胸が苦しくなる。

こうして見ても信じられない。

何故こんなことになっているのか。

何でこんな目に遭わなくてはならないというのか。


「何故だ……。何故…………」


涙が止まらなかった。

出ては流れてを繰り返し、一向に止まる気配を見せない。

もはや己の不甲斐なさに狂い出しそうだった。

感情ばかりが先に立って、体はまるで動かないのだ。

ここで這いつくばっていることしか出来ない。

ミジメで、哀れで、あまりに無様。

怒りと悲しみは今にも爆発しそうなのに、恭司の体は既に限界だった。

間もなく手は動きを止め、体も静止する。

思考や感情も強制的にシャットダウンされていき、恭司は無念の中に、意識をそこで閉ざした。


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