復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー

ノベルバユーザー520245

【第四話】三谷恭司 ⑧

「もう遊びは終わりだ!!行くぞ、1万本ナイフだぁぁ!!」


修吾が恭司に巻物を渡している間、ビスは背後にナイフをストックしていた。

その数は万を超え、一斉に解き放たれる。

その中には術符の入ったモノも沢山混じっているだろう。

修吾は刀の切っ先をビスに向け、前屈になるよう腰を落とす。

三谷の秘奥、『風撃閃』の構えだった。


「ま、マジかっ!!お前もその技を使えるってのか!!」


ビスも既に動揺は隠せていなかった。

先ほどソレに苦渋を舐めさせられたばかりなのだ。

まさか、恭一郎の他にソレを使える人間がいるとは思わなかった。

ナイフは既に放ったばかりで、防御はもう間に合わない。


「秘技、『風撃閃』」


途端、

周囲に旋風が巻き起こったかと思うと、襲いくるナイフ群を全て払い除けてしまった。

その瞬間に螺旋状の竜巻が修吾を覆い、修吾の太腿が風船を膨らますかのように膨れ上がる。

ビスはそれを見てゾッとした。

"また"あの惨劇が繰り広げられようとしている。

自らが退く理由になったソレが、次は別の人間から繰り出されようとしている。

防がなければならない。

避けなければならない。

逃げなければならない。

ビスの中にあった恐怖心はその瞬間に一気に解放され、自らの周りにあった術符が一斉に光った。

退かなければ、今度こそ死ぬ。

そう思って、ビスはすぐに行動に移した。

修吾はその間も準備を整え、技を発動する。

三谷の秘奥が一つ、『風撃閃』。

その瞬間、

前屈になっていた修吾の姿が消え、凄まじい強風を巻き起こしてビスに突撃した。

太腿に溜めていたエネルギーを爆発させたかの如き突撃は森の景色を変え、風が木々とナイフを軒並み破壊しながら、修吾の体はビスへと向かう。

ビスは前もって準備していたこともあって、その瞬間にすぐさま転移術を発動させた。

修吾の放った風撃閃はそれで見事に空を切り、ナイフは全て破壊して、ビスのいた所を通り過ぎる。

恭司は、子どもたちは、その一瞬をただ見ていることしか出来なかった。

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