話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー

ノベルバユーザー520245

【第四話】三谷恭司 ②

「……何がどうなっている。何故、あんな所で戦闘が……?日本国の人間か?」


恭一郎はフラフラと木の枝の上で放心する。

状況は明らかだった。

元々、この方向は最初に恭一郎が他の皆に提示した方向だ。

だから、

あの雷撃で辛くも生き延びた人間たちは、そのままその方向に向かっていたはず。

恭一郎たちと違い、子どもという足止めもビスという妨げもなかった人間たちは、ちょうどあの辺りに差し掛かっていたはずだ。

恭一郎はその方向を見て、思わず枝から跳ぶ。


「当主様ッ!?」


後ろで修吾が焦る声を無視して、

恭一郎は木々の上を瞬動で乗り継ぎ、走った。

もっと近くで見たい。

見なくてはならない。

日本国の総指揮として、三谷の長として、当主として、この目でしっかりと見なくてはならない。

ビスのせいでよっぽど差が開いていたのだろう。

現場にはまだかかりそうだが、ようやくしっかり見える所まで来た。

恭一郎は今一度足を止め、その光景を呆然と見つめる。

それは、日本国の人間たちの骸の山だった。

焼け焦げた広場には沢山の人間の死体が転がり、真っ黒な炭と化して酷い悪臭を放っている。

恭一郎の指揮で一目散に逃げていた人たちは、ここで待ち伏せされて殺されたのだ。

わざわざ一塊になるタイミングを狙って、逃がさないよう、退路から先に罠を張っていたのだ。

ビスが襲ってきたのは、正にこの状況に近づけないためだったのだろう。

恭一郎がビスと戦っている間、

生き延びた日本国の人間たちは、ここで虐殺されていたのだ。


「当主様ッ!!」


すると、

後ろから修吾が恭一郎を追って、横に並んできた。

同じようにこの景色を見た修吾の顔は、恭一郎と似たようなものだ。

唖然として、信じられなくて、固まってしまっている。

何も、言えることはなかった。


「なぁ、俺は一体、どうすればよかったんだろうな」


ふと、恭一郎が呟いた。

修吾は首を横に振り、返す言葉が無いことを示す。

黒い円の中にある死体の中には、女性や老人らしき姿も多くあった。

他の部族の長らしき姿も、恭一郎と仲の良い友人らしき姿もあった。

皆、恭一郎を信じていたはずだ。

日本国としての誇りを旨に、いつか復讐することを誓って、生き延びることに必死だったはずだ。

他に生きている日本国民たちはどれだけいるのだろう。

皆、この光景を見ているのだろうか。

この惨状に絶望しているのだろうか。

あれだけの仲間の死を目にして、今自分がこうして生き延びていることに、何を思っているのだろう。

恭一郎には分からない。

もう何も分からない。

どうしても救えなかった。

戦争も、敗走も、何も上手くいかなかった。

失敗ばかりを繰り返した。

仲間を山ほど失った。


「一体何が正解だったのか……。どうすれば皆を救えたのか。分からない分からない……。コレは運命だったとでも言うのか」


恭一郎の胸の中に溜まる辛さはむしろ、鈍化の一途を辿っていった。

思考はこの時から動かなくなり、まるで亡霊の如く立っているだけだ。

口にしているだけで、頭は何も働いてはいない。

そして、そんな中、

恭一郎を置き去りにして、状況はけたたましく動き出す。

あの黒い円の向こう側から、ミッドカオス軍が登場し始めたのだ。

「復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く