復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー
【第四話】三谷恭司 ②
「……何がどうなっている。何故、あんな所で戦闘が……?日本国の人間か?」
恭一郎はフラフラと木の枝の上で放心する。
状況は明らかだった。
元々、この方向は最初に恭一郎が他の皆に提示した方向だ。
だから、
あの雷撃で辛くも生き延びた人間たちは、そのままその方向に向かっていたはず。
恭一郎たちと違い、子どもという足止めもビスという妨げもなかった人間たちは、ちょうどあの辺りに差し掛かっていたはずだ。
恭一郎はその方向を見て、思わず枝から跳ぶ。
「当主様ッ!?」
後ろで修吾が焦る声を無視して、
恭一郎は木々の上を瞬動で乗り継ぎ、走った。
もっと近くで見たい。
見なくてはならない。
日本国の総指揮として、三谷の長として、当主として、この目でしっかりと見なくてはならない。
ビスのせいでよっぽど差が開いていたのだろう。
現場にはまだかかりそうだが、ようやくしっかり見える所まで来た。
恭一郎は今一度足を止め、その光景を呆然と見つめる。
それは、日本国の人間たちの骸の山だった。
焼け焦げた広場には沢山の人間の死体が転がり、真っ黒な炭と化して酷い悪臭を放っている。
恭一郎の指揮で一目散に逃げていた人たちは、ここで待ち伏せされて殺されたのだ。
わざわざ一塊になるタイミングを狙って、逃がさないよう、退路から先に罠を張っていたのだ。
ビスが襲ってきたのは、正にこの状況に近づけないためだったのだろう。
恭一郎がビスと戦っている間、
生き延びた日本国の人間たちは、ここで虐殺されていたのだ。
「当主様ッ!!」
すると、
後ろから修吾が恭一郎を追って、横に並んできた。
同じようにこの景色を見た修吾の顔は、恭一郎と似たようなものだ。
唖然として、信じられなくて、固まってしまっている。
何も、言えることはなかった。
「なぁ、俺は一体、どうすればよかったんだろうな」
ふと、恭一郎が呟いた。
修吾は首を横に振り、返す言葉が無いことを示す。
黒い円の中にある死体の中には、女性や老人らしき姿も多くあった。
他の部族の長らしき姿も、恭一郎と仲の良い友人らしき姿もあった。
皆、恭一郎を信じていたはずだ。
日本国としての誇りを旨に、いつか復讐することを誓って、生き延びることに必死だったはずだ。
他に生きている日本国民たちはどれだけいるのだろう。
皆、この光景を見ているのだろうか。
この惨状に絶望しているのだろうか。
あれだけの仲間の死を目にして、今自分がこうして生き延びていることに、何を思っているのだろう。
恭一郎には分からない。
もう何も分からない。
どうしても救えなかった。
戦争も、敗走も、何も上手くいかなかった。
失敗ばかりを繰り返した。
仲間を山ほど失った。
「一体何が正解だったのか……。どうすれば皆を救えたのか。分からない分からない……。コレは運命だったとでも言うのか」
恭一郎の胸の中に溜まる辛さはむしろ、鈍化の一途を辿っていった。
思考はこの時から動かなくなり、まるで亡霊の如く立っているだけだ。
口にしているだけで、頭は何も働いてはいない。
そして、そんな中、
恭一郎を置き去りにして、状況はけたたましく動き出す。
あの黒い円の向こう側から、ミッドカオス軍が登場し始めたのだ。
恭一郎はフラフラと木の枝の上で放心する。
状況は明らかだった。
元々、この方向は最初に恭一郎が他の皆に提示した方向だ。
だから、
あの雷撃で辛くも生き延びた人間たちは、そのままその方向に向かっていたはず。
恭一郎たちと違い、子どもという足止めもビスという妨げもなかった人間たちは、ちょうどあの辺りに差し掛かっていたはずだ。
恭一郎はその方向を見て、思わず枝から跳ぶ。
「当主様ッ!?」
後ろで修吾が焦る声を無視して、
恭一郎は木々の上を瞬動で乗り継ぎ、走った。
もっと近くで見たい。
見なくてはならない。
日本国の総指揮として、三谷の長として、当主として、この目でしっかりと見なくてはならない。
ビスのせいでよっぽど差が開いていたのだろう。
現場にはまだかかりそうだが、ようやくしっかり見える所まで来た。
恭一郎は今一度足を止め、その光景を呆然と見つめる。
それは、日本国の人間たちの骸の山だった。
焼け焦げた広場には沢山の人間の死体が転がり、真っ黒な炭と化して酷い悪臭を放っている。
恭一郎の指揮で一目散に逃げていた人たちは、ここで待ち伏せされて殺されたのだ。
わざわざ一塊になるタイミングを狙って、逃がさないよう、退路から先に罠を張っていたのだ。
ビスが襲ってきたのは、正にこの状況に近づけないためだったのだろう。
恭一郎がビスと戦っている間、
生き延びた日本国の人間たちは、ここで虐殺されていたのだ。
「当主様ッ!!」
すると、
後ろから修吾が恭一郎を追って、横に並んできた。
同じようにこの景色を見た修吾の顔は、恭一郎と似たようなものだ。
唖然として、信じられなくて、固まってしまっている。
何も、言えることはなかった。
「なぁ、俺は一体、どうすればよかったんだろうな」
ふと、恭一郎が呟いた。
修吾は首を横に振り、返す言葉が無いことを示す。
黒い円の中にある死体の中には、女性や老人らしき姿も多くあった。
他の部族の長らしき姿も、恭一郎と仲の良い友人らしき姿もあった。
皆、恭一郎を信じていたはずだ。
日本国としての誇りを旨に、いつか復讐することを誓って、生き延びることに必死だったはずだ。
他に生きている日本国民たちはどれだけいるのだろう。
皆、この光景を見ているのだろうか。
この惨状に絶望しているのだろうか。
あれだけの仲間の死を目にして、今自分がこうして生き延びていることに、何を思っているのだろう。
恭一郎には分からない。
もう何も分からない。
どうしても救えなかった。
戦争も、敗走も、何も上手くいかなかった。
失敗ばかりを繰り返した。
仲間を山ほど失った。
「一体何が正解だったのか……。どうすれば皆を救えたのか。分からない分からない……。コレは運命だったとでも言うのか」
恭一郎の胸の中に溜まる辛さはむしろ、鈍化の一途を辿っていった。
思考はこの時から動かなくなり、まるで亡霊の如く立っているだけだ。
口にしているだけで、頭は何も働いてはいない。
そして、そんな中、
恭一郎を置き去りにして、状況はけたたましく動き出す。
あの黒い円の向こう側から、ミッドカオス軍が登場し始めたのだ。
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