復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー

ノベルバユーザー520245

【第三話】ミッドカオス戦<2> 11

(体力を消費するが、仕方がないな)


恭一郎は内心でそう呟くと、不意に足を止めた。

ビスの放つナイフの嵐が吹き荒れる中、その真っ只中で静止する。


「ハッハァ!!とうとう観念したかぁ!!」


ビスはそれを好機と捉えた。

ストックしていたナイフ群を解き放ち、一斉に恭一郎へと向かわせる。

その数は万を超え、ナイフに埋め尽くされたソレはもはや刃の壁のようだった。

しかし、

恭一郎は落ち着いてナイフを見据え、自らの周囲に強烈な旋風を巻き起こす。

局所的に吹き荒れる強風は恭一郎の周りを囲み、螺旋を描いて身に纏わりついて、先頭のナイフ群を一気に払い除けてしまった。

ビスはソレを驚くでもなく怪訝そうに見つめ、舌打ちを零す。


(アレはヤバそうな気がするな)


理屈ではなく勘だが、ビスはそっちを信用することにした。

まだ弾かれていないナイフ群を急遽自分のもとに戻し、盾としての役割を持たせる。

すると、

恭一郎はいきなり前屈みになり、刀の切っ先をビスに向けた。

さっきの風撃砲かと思ったが、様子が違う。

恭一郎が前屈みになった瞬間、その太腿が急にパンパンに膨らみ始めたのだ。

太腿はまるで風船を膨らますかのように目に見えて大きくなっていき、恭一郎はそれがある程度までいくと、グッと力を込める。

ヤバいと思った気配はその瞬間に緊急アラームへと変貌した。

恭一郎は一瞬で太腿の筋肉を弾けさせると、爆発的な突進力を持ってビスに突撃する。

これは、三谷の秘奥が一つ、『風撃閃』。


「やべぇッ!!」


三谷の秘奥として放たれたこの技は、正にビスが予想した通りの技だった。

風撃砲と同じ横向きの竜巻を、自分ごと相手にぶつけるのだ。

元々超人的な肉体能力を持ち、超速の世界で風をも操る三谷一族だが、竜巻をも操れる人間はほとんどいない。

ましてや、その速度と威力に付いていくほどの身体能力と制御を行える者など、恭一郎をおいて他にはいなかった。

恭一郎自身が放った突撃は当然のように音速を超え、そこに立ち塞がる物は全て竜巻が斬り飛ばしてしまう。

故に『秘奥』。

速度と威力で否応無しに敵を抹消する死の奥義。

だが、

ビスには奥の手があった。


「術方!!転移ぃぃぃいい!!」


突如、

ビスの足下に眩い陣のようなモノが形成され、途端にビスの姿がそこから消えてしまった。

恭一郎の技はビスのいた所にあったナイフ群だけを斬り飛ばし、本体には当てられぬまま、空を切る。

ビスのいた所を通り過ぎた恭一郎は、我が目を信じられない様子だった。

何が起きたのか未だに分からない。

分かるのは、ターゲットを殺し損ねたということだけだ。

恭一郎は怒りのあまり木を蹴り倒し、一旦落ち着くことにする。

結局、

恭一郎はビスを殺せないまま、ビスは自らの目的を"達成した"のだ。

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