復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー
【第三話】ミッドカオス戦<2> ⑨
「こんにちは~」
現れたのは、この戦場には似つかわしくない私服を纏った、若い男だった。
男は丸腰で、ニヤニヤしながら木々の間を抜け、一行の前に立ち塞がる。
最初に反応したのは勿論、修吾だった。
「お前は……あの時の……」
修吾たちの奇襲作戦の折に戦ったあの男だった。
名は聞いていないが、修吾もこの男のことはよく覚えている。
人間離れした実力だった。
「修吾……こいつが……」
「ええ。あの時の男です」
先のことは当然、恭一郎にも報告してある。
武器や戦い方など、あったことは全て伝えたが、修吾自身、まだこの男のことを把握し切れているわけでもないのだ。
それに、
今は隣に恭一郎もいるが、後ろに子どもたちも控えている。
2対1とはいえ、警戒する必要があった。
「そう怖い顔して睨み付けないでくれよ。お互いもう知らない仲でもないんだしさぁ」
男は修吾に話しかける。
まだナイフは見えないが、この男は空中に何も無い所から展開出来たはずだ。
油断出来ない。
「とはいえ、あの時は急だったから、まだ名乗りも出来ていなかったな。俺の名は『ビス・ヨルゲン』。"今は"ミッドカオスの諜報部隊に所属する者だ。仲良くしようぜ、お二人さん」
「「…………」」
諜報の人間が敵に諜報だと名乗っている時点で怪しさは満点だった。
嘘かブラフか。
もちろん間には受けない。
修吾は刀の切っ先を男に向け、尋ねる。
「一体、何の用だ『ビス・ヨルゲン』。こちらは急いでいるのだがね」
修吾は刀に"風"を纏わせながら、隠すことなく殺気を剥き出しにした。
あの時は仕留め切れなかったが、今回こそ仕留める。
今は恭一郎もいるし、子どもたちの安全も確保できるはずだ。
しかし、
そんな修吾の殺気を前にした中でも、男……ビスは笑みを崩さなかった。
「クックックックッ。俺がここに来る意味なんてたった一択だろう?どうやら"坊ちゃん"の雷撃が終わったみたいだから、白兵戦でトドメをさしに来たのさ。いわゆる残党狩り。稼ぎ時って奴さ」
その言葉に、恭一郎がピクリと反応した。
"坊ちゃん"。
それが、日本国を襲った雷の術者ということだ。
やはり人為的だったのだ。
「……仲良くするんじゃなかったのか?もう化けの皮が剥がれてるぞ」
恭一郎が暴走する前に、修吾はビスに返答する。
ビスはわざとらしく掌を頭に当てた。
「おーっとっとっと。これだから話術ってのは難しい。ついつい喋り過ぎちまう」
「…………」
「まぁ、バルキーの旦那も坊ちゃんも、アンタら三谷には関心高い様子だったからなぁ。ここでお前らを殺して得られる報酬のことを考えたら、ついついテンションも高くなっちまうってもんだ」
「そんなことでお喋りになってしまうんなら諜報は向いてないんじゃないか?今すぐ転職をオススメするよ」
「ハハハ、手厳しいねぇ。だが、俺の名は覚えておいた方がいいぜ。なんせ、旦那と坊ちゃんを除けば、俺がミッドカオスで1番の実力者で、これから昇格するんだからなぁ!!!!」
現れたのは、この戦場には似つかわしくない私服を纏った、若い男だった。
男は丸腰で、ニヤニヤしながら木々の間を抜け、一行の前に立ち塞がる。
最初に反応したのは勿論、修吾だった。
「お前は……あの時の……」
修吾たちの奇襲作戦の折に戦ったあの男だった。
名は聞いていないが、修吾もこの男のことはよく覚えている。
人間離れした実力だった。
「修吾……こいつが……」
「ええ。あの時の男です」
先のことは当然、恭一郎にも報告してある。
武器や戦い方など、あったことは全て伝えたが、修吾自身、まだこの男のことを把握し切れているわけでもないのだ。
それに、
今は隣に恭一郎もいるが、後ろに子どもたちも控えている。
2対1とはいえ、警戒する必要があった。
「そう怖い顔して睨み付けないでくれよ。お互いもう知らない仲でもないんだしさぁ」
男は修吾に話しかける。
まだナイフは見えないが、この男は空中に何も無い所から展開出来たはずだ。
油断出来ない。
「とはいえ、あの時は急だったから、まだ名乗りも出来ていなかったな。俺の名は『ビス・ヨルゲン』。"今は"ミッドカオスの諜報部隊に所属する者だ。仲良くしようぜ、お二人さん」
「「…………」」
諜報の人間が敵に諜報だと名乗っている時点で怪しさは満点だった。
嘘かブラフか。
もちろん間には受けない。
修吾は刀の切っ先を男に向け、尋ねる。
「一体、何の用だ『ビス・ヨルゲン』。こちらは急いでいるのだがね」
修吾は刀に"風"を纏わせながら、隠すことなく殺気を剥き出しにした。
あの時は仕留め切れなかったが、今回こそ仕留める。
今は恭一郎もいるし、子どもたちの安全も確保できるはずだ。
しかし、
そんな修吾の殺気を前にした中でも、男……ビスは笑みを崩さなかった。
「クックックックッ。俺がここに来る意味なんてたった一択だろう?どうやら"坊ちゃん"の雷撃が終わったみたいだから、白兵戦でトドメをさしに来たのさ。いわゆる残党狩り。稼ぎ時って奴さ」
その言葉に、恭一郎がピクリと反応した。
"坊ちゃん"。
それが、日本国を襲った雷の術者ということだ。
やはり人為的だったのだ。
「……仲良くするんじゃなかったのか?もう化けの皮が剥がれてるぞ」
恭一郎が暴走する前に、修吾はビスに返答する。
ビスはわざとらしく掌を頭に当てた。
「おーっとっとっと。これだから話術ってのは難しい。ついつい喋り過ぎちまう」
「…………」
「まぁ、バルキーの旦那も坊ちゃんも、アンタら三谷には関心高い様子だったからなぁ。ここでお前らを殺して得られる報酬のことを考えたら、ついついテンションも高くなっちまうってもんだ」
「そんなことでお喋りになってしまうんなら諜報は向いてないんじゃないか?今すぐ転職をオススメするよ」
「ハハハ、手厳しいねぇ。だが、俺の名は覚えておいた方がいいぜ。なんせ、旦那と坊ちゃんを除けば、俺がミッドカオスで1番の実力者で、これから昇格するんだからなぁ!!!!」
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