復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー
【第三話】ミッドカオス戦<2> ⑧
「畜生……ッ!!畜生……!!何故だ……何故、救えない。俺のやり方が間違っていたのか?俺では力不足だったというのか?」
休憩で足を止めて早々、恭一郎は木に近付き、その幹を静かに殴り始めた。
もう抑え切れないのだ。
どれだけ後悔しても懺悔しても足りない。
悔しくて苦しくて辛くて悲しくて、何度も何度も、ゴツゴツと木を殴り続けて、それすら何度やっても足りない。
子どもたちはそれを、ただ見ていることしかできなかった。
まだ現実感が心に追いついていないのだ。
ちゃんと見たはずなのに、聞いたはずなのに、何があったのか未だに分からないでいる。
知ってるくせに、何も知らない。
何も分からないフリをしている。
それくらいあっという間で、一瞬のような出来事だった。
心の整理なんて誰も出来ちゃいない。
出来るわけがない。
そして、
やはり修吾が、恭一郎の背後に近付き、その手を止める。
この中で唯一、修吾だけが変わらずに冷静だった。
「当主様、もうおやめください」
木を殴り続ける恭一郎の腕を背後から止めた修吾は、静かにそう言った。
気持ちなら痛いほど分かる。
自分だってそうだ。
さっきまで隣にいた人間が死んだなど、すぐに割り切れるもんじゃない。
しかし、
恭一郎は三谷のーー日本国の総大将なのだ。
ここでこうしている間はないのだ。
恭一郎は息を切らしながら呆然と拳を引っ込め、自らの異常なほど大量の血で染まった手を見つめる。
ポタポタと地面に赤色を作るソレは、明らかに常軌を逸していた。
恭一郎は修吾の言葉で冷静になり、ペコリと頭を下げる。
「すまない。見苦しい所を見せた。今はとりあえず、行動を起こさないとな」
そう言う恭一郎の声には力がなかった。
空虚に言わなければならないことを言っているかのようで、それが逆に痛々しかった。
だが、
皆、子どもでさえも、そこには突っ込まない。
気持ちは皆分かっていた。
「これから森を抜け、人心地付けそうな所まで逃げる。まだ万全じゃないだろうが、堪えてくれ」
恭一郎は何とか力を振り絞り、それだけを言った。
みんな頷く。
しかし、
そうこうしている内に、人の気配がした。
「ッ!!誰だ!!」
修吾と恭一郎がすぐに刀を抜く。
気配は自分たちの向かおうとしている方向から感じた。
多くなかった。
1つだった。
多勢を旨とするミッドカオスらしくないが、この状況でのソレは、ほぼ間違いなく追手だろう。
先回りされていたということだ。
修吾と恭一郎は警戒を強め、恭司と優香も刀を構える。
いざとなったら、2人も戦うつもりだ。
生きた肉体との戦闘は初めてだったが、鬼斬りのおかげでそれほど精神的な葛藤は無い。
あとは経験だけだ。
2人は固唾をグッと喉の奥に呑み込む。
すると、
茂みの奥から1人の男が現れた。
休憩で足を止めて早々、恭一郎は木に近付き、その幹を静かに殴り始めた。
もう抑え切れないのだ。
どれだけ後悔しても懺悔しても足りない。
悔しくて苦しくて辛くて悲しくて、何度も何度も、ゴツゴツと木を殴り続けて、それすら何度やっても足りない。
子どもたちはそれを、ただ見ていることしかできなかった。
まだ現実感が心に追いついていないのだ。
ちゃんと見たはずなのに、聞いたはずなのに、何があったのか未だに分からないでいる。
知ってるくせに、何も知らない。
何も分からないフリをしている。
それくらいあっという間で、一瞬のような出来事だった。
心の整理なんて誰も出来ちゃいない。
出来るわけがない。
そして、
やはり修吾が、恭一郎の背後に近付き、その手を止める。
この中で唯一、修吾だけが変わらずに冷静だった。
「当主様、もうおやめください」
木を殴り続ける恭一郎の腕を背後から止めた修吾は、静かにそう言った。
気持ちなら痛いほど分かる。
自分だってそうだ。
さっきまで隣にいた人間が死んだなど、すぐに割り切れるもんじゃない。
しかし、
恭一郎は三谷のーー日本国の総大将なのだ。
ここでこうしている間はないのだ。
恭一郎は息を切らしながら呆然と拳を引っ込め、自らの異常なほど大量の血で染まった手を見つめる。
ポタポタと地面に赤色を作るソレは、明らかに常軌を逸していた。
恭一郎は修吾の言葉で冷静になり、ペコリと頭を下げる。
「すまない。見苦しい所を見せた。今はとりあえず、行動を起こさないとな」
そう言う恭一郎の声には力がなかった。
空虚に言わなければならないことを言っているかのようで、それが逆に痛々しかった。
だが、
皆、子どもでさえも、そこには突っ込まない。
気持ちは皆分かっていた。
「これから森を抜け、人心地付けそうな所まで逃げる。まだ万全じゃないだろうが、堪えてくれ」
恭一郎は何とか力を振り絞り、それだけを言った。
みんな頷く。
しかし、
そうこうしている内に、人の気配がした。
「ッ!!誰だ!!」
修吾と恭一郎がすぐに刀を抜く。
気配は自分たちの向かおうとしている方向から感じた。
多くなかった。
1つだった。
多勢を旨とするミッドカオスらしくないが、この状況でのソレは、ほぼ間違いなく追手だろう。
先回りされていたということだ。
修吾と恭一郎は警戒を強め、恭司と優香も刀を構える。
いざとなったら、2人も戦うつもりだ。
生きた肉体との戦闘は初めてだったが、鬼斬りのおかげでそれほど精神的な葛藤は無い。
あとは経験だけだ。
2人は固唾をグッと喉の奥に呑み込む。
すると、
茂みの奥から1人の男が現れた。
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