復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー

ノベルバユーザー520245

【第三話】ミッドカオス戦<2> ⑥

「なっ!?」


再び飛び出る驚愕の声。

雨雲の位置は自分たちの真上だ。

このままだと本部隊に直撃する。

恭一郎は力の限り叫んだ。


「全員退避ー!!ここに落ちるぞ!!」


その瞬間、

目の前が真っ白に染まった。

あまりに一瞬な雷撃が空から降り落ち、日本国の仲間をあっという間に消し炭に変えたのだ。

残っているのは恭司やユウカに恭一郎、そして数少ない部族の人間たちだ。

ほとんどはこの雷で死に絶え、家の庭は半壊した。

恭一郎は自戒のあまり口から血を流しながら、再度叫ぶ。


「全員森へ逃げろー!!隊列などない!!ただただ逃げるのだ!!」


もう分からなかった。

何が正解で何が不正解なのかーー。

とりあえず分かったことは、敵は自然現象をも操れるということだ。

雷を意図的に発生させられるということだ。

こんな事が出来るのならもっと早くに壊滅させられていたはずだが、それをしなかったのは計略か隠蔽のためかーー。

どちらかと言えば後者の方が有力だろう。

雷を操るなど、おそらくミッドカオスにとって最大級の切り札のはずだ。

それをここで使ってきたのは、間違いなく日本国を根絶やしにするために違いない。

日本国の復讐を恐れたのだろう。

恭一郎は歯をギシリを噛み締め、尚も叫ぶ。

だが、

そうこうしている内に再び次の雷雲が装填された。


「クソがッ!!何だコレは!!」


ついに驚愕が怒りへと変わる。

圧倒的な理不尽。

圧倒的な力の差。

展開が早すぎて頭の回転が追いつかない。

どうすれば皆を助けられるのかーー。

それを思考する時間が足りない。

どんな状況でも相手の居所を正確に掴み、自然現象をも操って雷を発生させるなど、まるで神のような所業だ。

肉体能力のみで立ち向かう自分たちでは、到底太刀打ちできない。

勝てるイメージが浮かばない。

そして、

雷は再び降り落ちて、残った仲間をも消し炭に変えた。

もう目に見えて残っているのは恭司たちだけだ。

他の人間たちは皆散り散りになり、どこで何をしているのか分からない。

この短時間で、たった3回の攻撃で、日本国民はその半数以上が死に絶えたのだ。

他に残っている者もまだ何人かいるだろうが、雷が3回も連続して落ちた影響で煙が立ち込め、とても確認することなどできない。

声を出して居所を知らせれば良かったのかもしれないが、この急展開で皆混乱し、正常な判断など誰も出来ていなかった。

状況が、やり方が、戦力が、何もかもあまりに違い過ぎる。

向こうは一方的にこちらの居所を把握していて、こちらからはその姿すら拝めていないのだ。

そこに、

雷という高火力の遠方攻撃を意のままに放ってこられては、もう成す術が無い。

とりあえず逃走しか選択肢がなく、避けることも防ぐことも反撃することもままならないこの状況は、正に地獄と言っても差し支えなかった。

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