復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー

ノベルバユーザー520245

【第三話】ミッドカオス戦<2> ④

「う、嘘だ……。今まで負けたって、最後には全部勝っていたじゃないか。戦死者の仇討ちは?私の息子は?それにここを捨てるだなんて……」


集まった内の1人の老人が信じられなさそうに声を発する。

おそらく、彼の息子は今回の戦死者の1人だったのだろう。

だから、

今初めて知ったのだ。

日本国の伝統が、伝説が、打ち破られたことを。


「……復讐は後に必ず果たすと約束しよう。だが、今は……」

「嘘だッ!!こんなの今までになかったじゃないか!!今回はアンタら三谷も出て、完璧なはずじゃなかったのか!!それに……この里を、家を捨てるだなんて……」


途端、

他の者からも一斉に声が上がった。

堰き止めていた水を解放したかのように、固まっていた人間たちからこぞって声が上がる。

団結力こそを武器とする彼らだが、それが故に、愛国心と誇りでそれを認められなかった。

それだけ"当たり前"だったのだ。

信じる信じないではなく、それを日常としていた彼らにとって、それは現実感の崩壊をも意味していた。

恭一郎は落ち着いて宥めにかかる。


「皆落ち着いてくれ。状況は刻一刻を争う。謝罪なら後でいくらでもしよう。事が済んだら罪も償おう。だが、今は火急の事態なのだ。だからすぐに出立を……」


しかし……


「た、大変だー!!」


恭一郎が宥めに入った矢先、突然この場に慌てた声が響いた。

恭一郎はすぐに切り替える。


「どうした!!」

「敵がやって来たぞ!!数はおよそ20万!!あと数時間の距離だ!!」

「…………ッッ!!聞いた通りだ!!準備など許さん!!今すぐ出立するぞ!!」


恭一郎は悲鳴のような声で叫んだ。

納得している人間よりしていない人間の方が多かったが、もう仕方がない。

恭一郎は指示を出し、長を中心に一斉に移動を開始させた。

だが……

事態はそれだけには、終わらなかった。

突如、

里の上空に、雨雲が出現し始めたのだ。



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