復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー

ノベルバユーザー520245

【第三話】ミッドカオス戦<2> ②

「皆ありがとう。だが、こうなってしまった以上、敵は我々がこの隠れ里に戻っていることも把握しているだろう。時間がないから、早急に決を取らなければならない」

「…………」


部族の長たちは沈んだ顔で項垂れた。

恭一郎の言っていることは勿論分かっている。

これだけ居場所を探り当てることに長けた相手だ。

このまま隠れ続けることは出来ないだろう。

となれば、

日本国は二択を選ばなければならない。

『逃げる』か『戦う』かだ。


「逃げるなんて選択肢があるのか?今回の戦いで我らの仲間が一体どれほど殺されたと思っている。仇討ちせねば奴らが浮かばれんわ!!」


長の1人が声を荒げる。


「だが、それで全滅しては元も子もないぞ。仇討ちは生き残ってからでも遅くないはずだ」

「逃げるといってどこに逃げる?里を移した所で、敵は追ってくるのではないか?」

「大体、女子供はどうする。どのみち、非戦闘員たちには逃げてもらわないと困る」


仇討ち派と逃げる派で意見は分かれたが、どちらかと言えば後者の意見の方が多かった。

三谷を筆頭に、日本国の人間は仲間の死を非常に尊いものとして考える。

だからこそ、

既に死んだ人間たちの仇討ちと、今の人間たちを生かすことに意見が分かれているのだが、

『単純に仇討ちは生き延びた後からでも出来る』という意見が勝った。

日本国の人間たちは敵への怨みを決して忘れることが出来ない。

何年経ってでも、国民一丸となって復讐を成し遂げる。

その民族性がある以上、今は逃げることが先決だという結論にまとまった。

恭一郎は意見をまとめると、勢いよく立ち上がる。


「方針は固まった。こうなればもう時間がない。皆は各部族をまとめ、速やかに準備を整えろ!!10分後に出発する!!」


総指揮としての号令。

途端、

各部族の長たちは瞬動ですぐにその場から消えた。

国民全てに逃亡する準備を10分で整えさせるなど普通は不可能だが、彼らなら可能だ。

他に類を見ない圧倒的チームワークで、彼らはそれを成し遂げるだろう。

恭一郎も急ぐ。


「修吾!!一族全員をここに集めろ!!準備は後回しだ!!とにかく急がせろ!!」

「はっ!!」


唯一部屋に残っていた修吾に、恭一郎はそう命じた。

途端に修吾も瞬動で素早く消え、部屋には恭一郎だけが最後に残る形となった。

恭一郎は拳を握りしめ、己が無様さを呪う。

敵の指揮官は本当の化け物だ。

一族全員で移動すれば、軍の時よりも速度が落ちる上、人数が多い分、気取られやすい。

被害無く全員逃がすことは出来ないだろう。

恭一郎は涙を流しながら、決意する。


「せめて……せめて里の子供たちだけは逃がす。次代の芽だけは決して潰させないぞ」


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