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復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー

ノベルバユーザー520245

【第ニ話】ミッドカオス戦<1> 11

「なっ!?」


侍の部族の長が驚愕の声を上げる。

前にばかりいると思っていた敵が横から現れたのだ。

陣形も当然ながら対応出来ていない上、驚愕と混乱が波及するのは避けられない。

恭一郎は自らの予想が当たったことを実感し、歯をギリリと噛みしだいた。

どうやらしてやられたらしい。

本陣は慌てふためくばかりか、攻撃や防御の一つすらままならない状態だ。

このままでは時を置かずして全滅させられかねない。

早急な対処が必要だ。


「一時後退する!!各自、森を抜け、安全な所まで避難せよ!!」


悲鳴のような号令。

それを受けて、日本国の人間たちは即座に行動に移した。

彼らならではの身体能力にものを言わし、急激な方向転換で素早くその場を後にする。

しかし、


「ッ!?おい!!何してる!!」


先陣の白兵戦で猛威を奮っていた侍たち。

彼らだけは、そうはしなかった。

その場から動かず、刀を構えたまま、闘志をより滾らせている。

チームワークを強みとする日本国にとっては珍しいと言える光景だった。


「止めないでくれ。コレは俺たちにとって、とても大事なことなんだ」


侍の部族を率いる長は、そう言ってミッドカオス兵の1人を斬り飛ばした。

その背中は寂しげで、恭一郎にはその気持ちが痛いほど分かる。

先日の戦いで、最も被害を出したのは彼らだったのだ。

だからこそ、

今回の戦争でも先陣を買って出たし、凄まじい練度と士気で敵を蹴散らしてきた。

しかし、


「ここで死ぬ気か!?生きていれば仇を討つ機会はいくらでもある!!逆に死ねば、一生その機会は訪れないんだぞ!!今は退いて、仇討ちは後にするべきだ!!」


恭一郎は悲痛な思いで叫ぶ。

前回の戦争では自分たちは参加していなかった。

仮に参加していて、彼と自分が逆の立場だったなら、自分も確かに同じことをしたかもしれない。

だが、だがそれは、

日本国にとって、あまりにも愚策。

そう、あまりにも、愚策なのだ。


「言っていることはよく分かるさ。今は退いた方が良いことも。仇討ちは後でいくらでも出来ることも。その仇討ちにお前らも快く賛同し、手伝ってくれることも……。
そして何より……お前が、俺の気持ちを分かってくれていることもな」

「……ッ!!」

「お前は昔から良い奴だったな、恭一郎……。部族は違えど、お前の下で戦えて本当に良かった。ここで俺が死ねば、お前たちは必ず俺の仇討ちに動くだろう。だが……それこそ愚策だ。本当は、そんなことをせずに平和を模索した方がよっぽど良い」

「分かってるなら死に急ぐような真似をするな!!俺はお前が死ねば仇討ちを止められないぞ!!ミッドカオスを滅ぼすまで一生戦い続けることになる!!そんなことにはさせないでくれ!!」

「ははは。ミッドカオス殲滅は俺に関係なくするつもりだったじゃないか。本当に優しい奴だ、お前は」

「いいから考え直せ!!」

「残念ながらもう止められないんだ。死者の中には俺の息子もいてな……。俺はもうここを死に場所と決めてしまっている。最後まで迷惑をかけるが……日本国を宜しく頼む!!」


侍の長はそう言って、敵陣の中に突っ込んでいった。

一振りで幾人もの人間を斬り倒し、どんどんどんどん前進していく。

恭一郎はそれを、歯軋りしながら見ていることしか出来なかった。


「馬鹿やろうが……ッ!!」


そうして、日本国の兵たちは踵を返し、三谷を筆頭に速やかに撤退を開始していった。

侍たちが殿を務めてくれたおかげでその作業はスムーズに進行し、その間にもう侍たちは敵陣の海の中に消えてしまった。

恭一郎はそれを、涙を浮かべながら見ることしか出来ない。

だが、

そんな最中、

どこからかヒュルルルルルーと音が聞こえた。

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