復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー

ノベルバユーザー520245

【第一話】日本国③

「……一体どうなっている?作戦は順調なはずではなかったのか?」


日本国内にある、三谷一族の本拠地。

山間部に隠れた集落の中でも一際大きな屋敷の応接間で、現三谷一族当主である『三谷恭一郎』は、困惑した表情で口を開いた。

話し相手は恭一郎の側近を務める男だ。

男は静かに首を横に振った。


「失敗の要因はまだ判明しきってはいないようです。相手の死角をついたはずの奇襲が全て見破られ、トラップも何もかもを看破されたと」

「……あの作戦の内容には俺も関わっている。諜報も送っていた。失敗は正直考えてもいなかったんだが……」

「全員がそうです。裏付けも含め、抜かりは無かったかと思います。本当に……何故バレたのか不思議なくらいで……」


この応接間で話す2人の間柄は相当に古いものだった。

三谷一族現当主である恭一郎と彼、『柊修吾』は幼い頃からの付き合いで、互いに人柄も能力も分かりきっている。

何でも気兼ねなく話し合える関係性だった。


「修吾……。お前にも分からないのか?」


恭一郎は問いかける。

修吾は困った表情を浮かべた。


「私にも正直分かりません。奴らは一体どこで見破ったのか……。裏切りの線は別に考えてはいないんですが……」


修吾は正直に答える。

恭一郎も、その点には同意だった。


「そうだな。日本国には裏切り者はいない。それはそう『決まっている』。となると、どの時点でどうやって見抜かれたかだな……」

「そうですね……」

「何かミスはなかったのか?誰か指示と違うことをやったというのは?」

「その点はすぐに調べましたが、残念ながら見つかりませんでした。まぁ、隠密性重視の作戦でしたので、本人が気づいてないだけかもしれませんが……」

「そうか……。まぁでも、不謹慎であるが、我が一族に被害がなかったのは幸いだったな。先方に立っていた部族には同情を禁じえないが……」

「そうですね……。当主はカンカンでしょう。復讐戦は間違いなく行われるものと考えられますが、その時はどう致しますか?」

「そうだな。他の部族とはいえ、日本国の人間がやられたんだ。様子見なんて選択肢は無い。相手の先方部隊は皆殺しだ」

「そうですね」


2人の会話はその後も続き、作戦失敗の要因と対抗策を、それこそ日が暮れるまで話し合い続けた。

それくらい、今回の日本国として行った作戦には自信を持っていて、失敗したことに納得いっていないということでもある。

しかし、

失敗はどう考え直しても失敗で、事実だ。

受け入れなければならないものの、その事実に至った原因が一切分かっていないがために、結局最後まで、納得のいく結論を出すことはできなかった。

やがて雰囲気も暗くなっていき、外の景色にもオレンジが差し込み始めた頃、恭一郎はフゥと息を吐く。

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