本当の恋・・・見つけたら(3Version)

ノベルバユーザー519117

回想** 嘘 **

~ Toru side ~

あの日から2週間。表面的には何も変わらない俺達…

でもふと見せるりえの思い詰めた表情に俺の勘が当たってなければいいなと思う日々を過ごしていた。

そして9月の初め、、、

りえ『今週の金曜日なんですけど、お休みしたいんですが、いいですか?』

って店長に頼んでいたところに通りかかった。

店長『金曜日? その日ねっ・・・週末だから結構こむんだよねぇ~(ーー゛)』

難しい顔をしている店長。

でもりえが一度決まったシフトの日に休ませてほしいなんて、よっぽどのことだろうと思い、

『店長、俺、連勤してもいいですよ。』って替わりをかってでた。

店長『池田君がそう言ってくれるなら、こっちは構わないけど…』

りえ『ほんとにいいの?』

『うん。これで貸し1なっ…』

りえ『ありがとう。徹・・・』



そしてその日の帰り道、どうして金曜日に休みたいのか聞いてみると…

りえ『その日、私達が付き合い始めて一周年の日なの。』

そういえば去年のクリスマスの少し前に3ヶ月って言ってたから、、、9月の初めで合ってるかも。

『でもそれならなぜ先月のシフトを入れる時にその日にバイトを入れたんだ?
まさか忘れてたとかじゃないよなっ?』

りえ『もちろん忘れてなんかいないけど、そんなに盛大にお祝いするなんて思ってなかったんだもん。』

『で、、、翔太から何か言われたの?』

りえ『バイトがあるから夕方しか会えないって言ったら、ご機嫌斜めになっちゃって(ーー;)』

『ご機嫌斜め?』

りえ『一日空けててほしかったって…』

多分あいつの事だから、りえも自分と同じ気持ちで一周年をお祝いしたいって思ってるだろうって、そう思ってたんだろうなっ…

それがバイトを入れられちゃってたもんだから、拗ねてんのかっ(^_^;) なんかちょっとかわいそうかも(笑)

『それでバイトを休もうとしてるわけだ。』

りえ『うん。なんか今どきのカップル事情って大変ねっ(-_-;)』

『でもそれだけ愛されてるってことだろっ?』

そう言うとちょっとだけ表情が曇ったように見えたりえ。

俺、なんか、変なこと言った?

りえ『そうだよねっ。大変なのは色々考えてる男子の方だもんねっ。
私達女子は有難くその気持ちを受け取らなきゃ…罰が当たっちゃうよねっ(^_^;)』

そう言って自分を納得させるように呟いたりえの笑顔が少し気になった俺だった。





~ Rie side ~

私と翔太が付き合い始めて1年の記念日の今日・・・

折角徹とバイトを代わってもらったのに、私の体調は万全ではなかった。

『お兄ちゃん、風邪薬ってどこにしまってる?』

のどにちょっと違和感が…

蒼『風邪薬って、熱でもあんのか?』

そういいながらおでこを触るお兄ちゃん。

『違うの。なんだかのどがいがらっぽくって…』

蒼『うん、熱はないみたいだなっ。でも用心に越したことはないから病院にいっとけよ。』

『大丈夫だよ。ただののど風邪だから、市販薬買って飲んどく。』

すると急に私の前に立ちはだかるお兄ちゃん。

蒼『だめだ!お前がのどが痛いっていう時は必ず2,3日後に熱を出すパターンなんだから、絶対病院にいけ!』

『でも、病院なんかに行ってたら翔太との約束の時間に間に合わないの。
今日は大事な日なんだから!!』

でも今日に限って絶対引いてくれないお兄ちゃん。

それって軽くヤキモチ入ってんじゃないの!(-"-)  

もう~、シスコン!

そして事もあろうか、かかりつけの病院ではない病院に行けと言いだした。

蒼『あの駅の近くの病院はヤブなんだよ。

熱が出てない時に行っても、熱がすごいある時に行ってもいつも同じ薬。

だけどとなりの駅の病院はすごく丁寧に診察してくれて、薬もちゃんと処方してくれるんだ。

この間の風邪も一発で治ったし、、、だからそこに行け!今から地図書いてやるから。』

そういいながら地図を描き始めたお兄ちゃん。

地元の病院でも約束の時間に間に合わないっていうのに、となりの駅近くまでいったら確実に遅刻決定だ。

それだけは避けないと・・・

ここは行った事にして市販薬を買うしかないなっ。って思ってたら、

蒼『誤魔化して市販薬とか買うんじゃないぞ。ちゃんとそこの調剤薬局の袋・・・見せてもらうからなっ。』って…

お兄ちゃんの方が一枚上手みたい(ーー;)


そしてお兄ちゃんの目の前で翔太に電話をする羽目に。

でも理由を話すと

翔太『体の方が大事だよ。ちゃんと病院に行くんだぞっ…』って言ってくれた。

さすがにトーンはかなり低くなったけど…

でも折角翔太が私の為に何かを計画してくれてると思うと、それだけは無駄にしたくなくて、

『病院に行ったら、すぐにそっちに行くから・・・だから待っててくれる?』

翔太『うん。でもほんとに無理するなよ。』と優しい言葉をくれたんだ。





~ Hiroki side ~

やっぱり起きれない。昨日はただ体がだるいだけだったけど、今日は体の節々もいたいし、なんだか熱っぽい。

ここ2週間あまりバイト先のインストが急に2人も同時にやめてしまったので、かなりハードなバイトスケジュールだった。

それに合わせてダンスレッスンも入ってたので体を休める暇もなかったからかっ。


そのツケが回ってきたのかなっ(-_-;)

とりあえずこんな調子じゃレッスンなんてできそうもない。

先輩に電話を入れ、

『先輩、申し訳ないんですけど…
昨日から体の節々が痛くて、なんだか少し熱もあるみたいなんです。今日一日レッスンの休講をお願いしたいんですけど…』

そう申し出ると

茂雄『ここんところ無理させちゃったからなっ。俺からチーフに伝えておくからちゃんと医者に診てもらえよ。』

ということで近くの病院へ…

歩いて行くのもしんどかったので、自転車で来たんだけど、ここに来るまで何度もこけそうになる。

熱のせいで焦点が定まらないみたいだ。

病院へ着くと受付に若い女性の後ろ姿。

なんだかあの髪型、りえに似てるなっなんて…

少しは忘れてきてると思ったんだけど、、、まだまだみたいだ。

そう思いながら一番端のソファーに腰かけたその時、

『弘樹…?』りえの声?

会いたい気持ちが幻聴まで?

そう思った瞬間、目の前にりえの姿。

りえ『弘樹、大丈夫?すっごく顔色悪いけど…』

それは間違いなく本物のりえだった。





~ Rie side ~

お兄ちゃんから言われた通りに電車に乗ってとなりの駅近くの病院へ…

受付を済ませソファーに座ろうとした時、一番端の方に深めに腰をかけた男性が、、、

具合悪そうだなってそう思ったその時、振り返ったその人は、、、

『弘樹…?』

私の呼びかけにゆっくりと顔を上げた弘樹。

でもぼんやりとしてて反応が薄く、顔色がとても悪い。

今度は弘樹の前にしゃがみ込み

『弘樹、大丈夫?すっごく顔色悪いけど…』

するとやっと私の言葉に反応してくれた弘樹。

弘樹『りえ、、、どうしてここに?』

『ちょっと風邪気味なの。ひどくなる前に診てもらおうと思って…それより受付済ませた?』

弘樹『いや、まだ…』

『まだって、受付しないと診てもらえないよ。』

弘樹『そうだよなっ…』

そう答えたけど立ち上がるのも辛そうな弘樹。

『保険証と診察券貸して。受付してくるよ。』





~ Hiroki side ~

俺の保険証と診察券を受け取ると受付に行き事情を説明してくれているりえ。

そして体温計を持って俺のところへ…

りえ『とりあえず熱測ってって…』

体温計を受け取りおもむろに脇に挟む。

ピピッ。

表示された数字は39.5度。

どうりで意識が朦朧としてる訳だ。

りえ『ウソ。すごい熱だよ…先に診てもらった方がいいみたいね。』

そういうと体温計を持って受付の人に説明してるみたいだ。

りえが説明した後すぐに看護師さんが来て俺は処置室のベッドに横になるように言われ案内された。

その間ずっと俺のそばに付いててくれたりえ。

でもこんなにそばにいると俺の風邪がうつってしまうと思い、

『お前、待合室で待ってろよ。名前呼ばれるかもしんないし…』

りえ『それなら大丈夫。さっきの看護師さんに名前を伝えてここに呼びに来てもらうようにしたから…』

そういいながら心配そうに俺の顔を覗き込む。

か、かお…近いよ。

熱があるから身体が火照るのか、りえがそばにいるからなのかわからなくなる。

でも俺のそんな気持ちもお構いなしのりえ。

りえ『ここまでどうやって来たの?』

『チャリ…』

りえ『なんでこんな熱が出てるのに、自転車なんか乗って来てんのよ。もう信じらんない。』

『歩くのも辛くて…』

りえ『帰りはタクシーで帰ろう。自転車は置いてもらえるように頼むから。いいよね?』

すでに会話する気力もなくりえの言葉に力なくうなづくのが精一杯だった。





~ Rie side ~

私が診察まで終え、薬をもらいさっきの処置室に戻ると、そこにはもう弘樹の姿がなくて…

『私の前に診察を受けてた井坂さんはどこに?』

看護師『あっ、井坂さんなら先程会計を済ませて外に…』

そう聞いた瞬間に私は外に飛び出していた。





~Hiroki side ~

りえにこれ以上迷惑をかける訳にはいかないと、りえが診察して薬をもらう間に先に病院を出た。

でもやっぱり熱には勝てないらしい。

自分では極力急いでるつもりなのに、、、そんなに進んでないかも。

すると後ろから俺の名前を叫びながら近づいてくるりえの声。

普段だったら追いつかれる事なんて絶対ないのに、意図も簡単に追いつかれる俺。

りえ『なに歩いて帰ってんの。タクシーで帰ろうって言ったのに…』

そして半泣き状態のりえにこっぴどく叱られた。





~ Rie side ~

慌てて病院を飛び出したけど、右なの?それとも左?

でもそう考える事もなく、弘樹の姿を発見。

右方向に足取りのおぼつかない後ろ姿。

あれは間違いなく弘樹の背中…

『弘樹~!』そう叫びながら駆け寄る。

振り返った弘樹…

その瞬間に1人で帰ろうとした弘樹に無性に腹が立ってきた。

『なに歩いて帰ってんの。タクシーで帰ろうって言ったのに…』

泣くつもりなんてない。なのに何故か涙が溢れて来て我慢するのに必死だった。





~ Hiroki side ~

『大丈夫だよ。自分で帰れるから…』

りえ『ダメだよ。こんな弱ってる弘樹を放って帰るなんてできない…』

そういうと俺の手を握ったりえ。

そしてもう片方の手を挙げてタクシーを止めた。

俺を最初に乗せて自分まで乗り込んできたりえ。

りえ『運転手さんに早く住所を説明して…』

俺は言われた通りに行き先を伝える。

そしてりえに向かって

『もうタクシーに乗ったから大丈夫…ありがとなっ。』

でも繋いだ手を離そうとはしないりえ。

りえ『家まで一緒に行く。
ちゃんと寝たところまで見届けないと心配で帰れない。』

手を繋いでるだけでドキドキしてるのに…そんな事言うなよ。

必死でお前の事、忘れようと、諦めようと努力してる俺の気持ちを揺らさないでくれよ。





~ Rie side ~

弘樹の家に着いた時にはすでに翔太との約束の時間を1時間もオーバーしていた。

早く連絡しなきゃ…
きっと待ってくれてる。

でもこの状況で電話なんかしたら弘樹が気兼ねしちゃう。

1人で食べるものも作れないだろうに、早く翔太の所へ行けって言いそう。

とりあえず、弘樹を寝かせて翔太と連絡を取ろうと一旦携帯をバックにしまい込んだ。





~ Hiroki side ~

『りえ、俺、ちゃんとベッドに横になってる。
そして今日はこのままちゃんと寝てるから、だからもう大丈夫。

早く帰らないと、まずいだろ?』

りえ『わかった。お粥だけ作ったら帰るから。』

『食欲なんてないよ。』

りえ『ダメだよ。何か入れないと薬だってのめないんだから…病人はちゃんと言う事聞いてよ。』

2人だけの空間を避ける為に言ってる事なのに、一向に響かない俺の言葉。

そして俺が最終的に思い付いた事。

『徹に看病に来てもらうよ。あいつ、今日は休みの筈だから…』

でもそう言った瞬間、りえの表情が曇った。

何かあったの?





~ Rie side ~

『徹に看病に来てもらうよ。あいつ、今日は休みの筈だから…』

弘樹の言葉に今日が大事な日だという事を改めて思い出した。

どうしよう?ここで正直に言うべき?

でも、このまま弘樹を一人にして翔太の所に行くなんて私にはできない。

そこで小さな小さな嘘をつく。

『徹は今日、バイトしてる。』

弘樹『えっ?あいつ金曜日は俺とのダンスレッスンがあるから、シフト入れないはずなんだけどなっ…』

『私と替わってもらったの。』

弘樹『なんで?体調悪いから?』

『えっ?ちょっと家の用があって…でも風邪気味だからってお兄ちゃんに頼んだんだ。』

弘樹に心に負担をかけたくなくて、、、

いや、あとから考えてみれば・・・
この時の私は、弘樹を思う気持ちの方が強かったのかもしれない。





~ Toru side ~

バイトの休憩時間。珍しく弘樹からメールが、、、

【風邪をこじらせて寝てるんで、今日のレッスンはキャンセルしてもいいかな?】

あいつがこんな弱気なメールを送ってくるなんて、ほんとに具合が悪いんだなっ。

そう思いメールの返信を・・・

【風邪だなんて珍しいなっ。でも無理しない方がいいかも。バイトが終わったらなんか買って持ってくよ。何がいい?】

すると即効で返事が、、、

【ちょっと熱があるみたいなんで、ポカリとか買ってきてもらえると有難いんだけど・・・】

【お安い御用(*^^)v じゃっ、あとからのぞくなっ!】





~ Hiroki side ~

狭い台所でお粥を作ってるりえの後ろ姿。

ただその背中を見ながら、ほんの少しだけ神様に感謝した。

こうやって、りえと2人の時間を作ってくれてありがとうございますって・・・

でも、りえは翔太の彼女。これ以上2人きりはよくない・・・

そう思った俺は徹にメール。

りえがここにいる事を悟られないように、必ず顔を覗かせてくれるっていうだろう徹の優しさを利用する。

そしてりえにこう伝えた。

『そのお粥作ったら、やっぱり帰った方がいいよ。
俺んちに2人きりなんて、いくら看病だっていっても翔太に知れたらいい思いはしないから・・・なっ。』

りえ『でも…一人で大丈夫?水枕とか替えてくれる人いないでしょ?』

心配そうに俺の傍までやってきたりえ。

そんなりえに徹から返信を見せ、

『バイト終わったら徹が来てくれるって…俺はもう大丈夫だから・・・』





~ Toru side ~

3時の途中休憩終わり、バイト先に…

翔太『よっ、お疲れ!』

翔太が現れた。

『へっ?お疲れじゃないよ・・・お前なんでここにいるの?』

翔太『あっ、そういえばシフト替わってもらったんだってなっ。ありがとう(^_^;)』

『いや、だからこそ、なんでここにいるの?』

するとちょっと落ち込んでいる翔太がりえが風邪ひいた事を教えてくれた。

翔太『バイト入れてるとかだったら愚痴の一つもこぼせるけど、病気には勝てないもんなっ(ーー;)』

りえが風邪・・・その情報を聞いただけで大丈夫かと心配になる。

でも弘樹とりえ、、、そんなところまで同じ?なんてちょっと笑いも出てきた。

『で、りえの風邪って、こんな大事な日をキャンセルにする程ひどいの?』

翔太『本人いわく熱はないらしいんだけど、お兄さんが絶対に病院に行けってきかないんだって。
扁桃腺が弱くて、昔からのどが痛いっていうと2.3日後に結構高い熱を出してたからって、、、』

『じゃぁ~、病院行った後に会うって感じだよなっ?』

翔太『あ~、病院行ったらすぐに行くからって待っててっていってくれたんだけど・・・まだ連絡がなくて。』

『りえから連絡があったのは何時ごろ?』

翔太『約束の時間の1時間ほど前だから…11時くらいだったかな?』

『だったらすぐに病院に行ったとしても、もう連絡があってもよさそうだけど…』

翔太『もしかしたら、自分が思ってた以上に悪かったのかなっ?』

心配そうな翔太の顔。

でもなんで連絡しないんだろう?

電話一本で済むことなのに。

『電話してみれば・・・』

翔太『いや連絡を待つよ。
俺から連絡するとりえの負担になるだろっ?無理をさせたくないんだ。』

その言葉にりえへの思いがあふれてる気がした。





~ Syouta side ~

1人でいるとついりえに電話してしまいそうで・・・そんな気持ちを抑える為にも家を出て気を紛らすことにした。

徹のバイト先に顔を出すと、徹から今日の事を聞かれた。

徹『確かに、電話するとあいつの事だから多少悪くても無理しそうだなっ。ここは待つしかないのかぁ~(-_-;)』

事情を話すと自分の事のようにガッカリしてくれた徹。

『でも俺とりえの関係がこれで終わる訳じゃないし、りえの体調がよくなったら次はクリスマスを盛大にやるよ。』

徹に話を聞いてもらった事で少し気持ちが落ち着いた気がした。


徹としばらく立ち話し。

するとその中に弘樹が風邪を引いたっていう話題が、、、

『ひどいのか?』

徹『多少疲れてても俺とのダンスレッスンは必ずやる方向で頑張るんだけど、今日は珍しくあいつからキャンセルしてほしいって連絡があったんだ。だからバイトが終わったらのぞいてみるつもり…

今風邪が流行ってんのかな~(^_^;)』

そう言われ心配になる。

そういや知り合ってこのかたあいつが体調悪くてふせてるなんてこと聞いたことないかも…

『俺もりえから連絡があるまで時間があるから、ちょっと覗いてみるよ。』


徹と別れ弘樹の家へと・・・

弘樹の家の近くまで来たので、お見舞いに何か買おうとコンビニへ

するとそのコンビニのレジにりえの姿が、、、

大量のペットボトルを買っている。

どうして?

なぜ、こんなところにりえがいるの?

すると重そうにそのペットボトルを両手に下げたりえがコンビニを出ると、迷わず弘樹が住んでるアパートへ…

思わずりえから見えない角度に体を隠した俺。

なぜ?なぜ、りえが弘樹のアパートに…

あまりの混乱に、その場に立ちすくんだままの俺だった。





〜 Rie Side 〜

『ここにポカリ置いとくから、こまめに水分とってね。
あと、徹が来てくれたら水枕、ちゃんと取り替えてもらうんだよ。わかった?』

『わかったよ。おふくろみたいだなっ(笑)』

少し薬が効いたのか、笑顔が戻った弘樹。

ほんとは徹が来るまでいたかったんだけど、この状況が徹にばれるのもちょっと後ろめたい気持ちがして・・・

ひとり残して帰るのは気になるけど、弘樹が言ったようにこれ以上ここにいるのはまずいのかもと思い始めていた。

『じゃっ、私・・・帰るねっ。』

弘樹『ありがとなっ。助かったよ。』


弘樹のアパートを出て、真っ先に翔太に連絡。

でも、翔太が出る事はなく留守電に切り替わる。

携帯に出れない状況なのかなっ?

2回ほどかけなおしてみたけど、やっぱり留守電・・・

3回目に

『今、病院が終わりました。今からお家に向かいます。待っててねっ。』

と伝言だけを残し、タクシーに飛び乗った。





~ Syouta side ~

りえからの着信なのにすぐに電話を取ることができない俺…

2回ほどかけてくれて、3回目には留守電が…

『今、病院が終わりました。今からお家に向かいます。待っててねっ。』

りえ、、、どうしてそんな嘘をつく?

弘樹と何かあったの?

そんな事ばかりを考えてしまう。

そしてりえの留守電に何も返事が出来ない俺がいた。





~ Toru side ~

6時過ぎに弘樹の部屋の前。

確か鍵はここらへんに置いてあったはず…

隠してある鍵を見つけて中に入ると、ベッドに静かに寝ている弘樹の姿が…

マジで具合悪いんだ…(ーー;)

言われた通りに買ってきたポカリを冷蔵庫にしまう。

でもベッドサイドには3本程あるペットボトル。

電話でも辛いことがわかるくらいだったのに、自分で買いに行ったのか?

そんな事を考えていたら、物音に気付いた弘樹が目をあけた。

弘樹『あっ、来てくれたんだ。ありがとなっ。』

『どうだ、調子は?』

弘樹『さっき薬飲んだら、随分楽になったよ。熱はまだあるみたいだけど…』

そういいながら俺に熱で冷たさが完全になくなってしまった水枕を差し出して

弘樹『冷凍庫に氷があるから、これに入れてくれるか?』

『お~、わかった…』


台所に行って氷枕の中の水を捨て入れ替えようとした時、そばにある鍋に目が行く。

蓋をあけてみると、お粥が・・・

『お粥があるけど、お前自分で作ったの?』

弘樹『へっ?あ、あ、うん…』

何かをごまかそうとしている弘樹の返事。

まっ、真希ともきっちりかたをつけた訳だし、お粥を作りにきてくれる女の子がいたって不思議じゃない。

なにより、他の女の子に目をむけたって事は、少しはりえのこと忘れられたっことだろっ?





~ Hiroki side ~

お粥の件…なんとか誤魔化せたかなっ?

徹にもここにりえがいたなんて言える訳もなく、それとなく話題を変えてみた。

『そういえば…今日、バイトだったんだなっ。』

りえから聞いて知ってはいるけど…

徹『あ~、りえからシフト交代してほしいって頼まれてさっ。』

『そっか~。金曜日はいつも休みだからちょっと不思議だったんだ。』

すると徹から衝撃的な言葉が、

徹『りえの奴、翔太と付き合い始めて一周年記念日の今日、ついうっかりで仕事入れちゃってて…』

『へっ?今日がその日?』

徹『そう(^_^;) 翔太が不機嫌になったってオロオロしてたから、替わってやったんだ。』

徹の言葉に何も言えなくなる。

そんな大事な日なのに、どうして?

その思いが頭の中を駆け巡った。

徹『どうした?ボ~っとして。』

徹から言われハッと我に返る。

『い、いや、なんでもない。でもあの2人、もう1年になるんだなっ…』

徹『そうだなっ。でも、ここからがりえの天然炸裂なんだけど・・・
あいつこの大事な日に風邪ひいたみたいでさっ、結局翔太は報われなかったみたいなんだ。』

『そ、そうなんだ・・・でもなんでお前がそんな事知ってんの?』

徹『一日、りえの為にあけて色んなサプライズを計画してたんだろうけど、それがなくなって暇してたらしくて、バイト先に翔太が顔出してくれたんだ。』

『一日、りえの為にあけてたんだ。』

徹『あ~、最初、りえが今どきのカップルってそんな大掛かりでお祝いするんだとか言い出したもんだから、かなり本気で拗ねたらしいww。 考えられる?あの翔太がだぜっ(笑)』

『そ、そうだなっ(^_^;)』

そんな前ふりもあったという事は、りえにとっちゃ絶対はずせない日だったんじゃないのかっ?

それなのに、俺の為に・・・

そして最後に徹が気がかりな一言を

徹『そういえば、りえから連絡も来ないし、このままお流れになるかもしれないからお前んとこに見舞いに行こうかなって、言ってたんだけど・・・来なかった?』

『そ、それって、何時ごろ?』思わず声がでかくなる。

ここの近くでりえと翔太が、バッタリなんて・・・ないよなっ?

いえ、もしそんなことがあったら、俺は、俺はどうすればいい?





~ Toru side ~

さっきから感じていたんだけど・・・弘樹の様子がおかしい。

俺に隠してる何かがある?

『なんでそんなに焦ってんの? さっきからお前ちょっとおかしいぞっ。』

弘樹『焦ってなんかないよ。単に熱で頭がもうろうとしてるだけだよ。』

『ならいいけど… 俺に隠し事なんかすんなよなっ。いいなっ。』

弘樹『あ~、もちろん。』

弘樹の口元をじっと見つめる。

昔からの癖・・・嘘をつくときは微妙に口角が震える。

まさしく、今の『もちろん。』は癖が出てる時。

『今日はここまでにしといてやるよ。』

弘樹『・・・』ほら、返す言葉がない。

『体調戻ったら、ちゃんと話してくれるよなっ。なっ、弘樹』





~ Syouta side ~

ここはどうするのが正解なのか?

その答えが見つかるまで、家には帰れない。

とりあえず気持ちを落ち着けるために、駅近くのカフェに…

そこで思い出した真希のあの言葉。

真希『私はどんなに頑張っても、愛してもらえないの。翔太にも弘樹にも・・・ だけどりえは、りえは…』

あの時は何とか自分の中で消化させたけど、やっぱりはっきりさせるべきかもしれない。

そう思った俺は真希にメールを送った。

【聞きたい事があるんだけど…今からあえない?】





~ Rie side ~

翔太の家で待ちぼうけ。

タクシー飛ばしてきたから、4時にはここについてたのに…

今はもう8時半(ーー;)

さっきから携帯を鳴らしてるけど電源を切ってるみたいでつながらない。

そんな時、弘樹からメール。

【りえ、大丈夫?】

その文面が何を意味するかが分からなくて…

【なにが?風邪のこと? 風邪なら大丈夫だよ。さっきちゃんと薬も飲んだし。
それより弘樹は熱、、、下がった?】

そう送り返すと即効で返事が、

弘樹【熱は少し落ち着いた。さっきまで徹がいてくれたんだ。】

それから私達はまるでチャットのようなやり取りで

【そっか、よかったねっ(*^^)v でもまだ無理しちゃだめだよ。バイトも少し控えないと・・・頑張りすぎちゃうと、また倒れちゃうからねっ。】

弘樹【うん。わかってる。それより俺の風邪がりえにうつってなきゃいいけど…】

【大丈夫だよ。今は私の心配より自分の心配!わかってる?】

弘樹【そうだね・・・でも今日はほんとに助かった。ありがとなっ…】

その言葉に胸の奥があったかくなる。そして少しだけ本音が、

【どういたしまして…
私も久々にあえて嬉しかったよ。弘樹、早く、良くなってねっ。】





~ Maki side ~

【聞きたい事があるんだけど…今からあえない?】

このメールを受け取った瞬間、すごく嫌な予感がした。

多分、翔太が聞きたい事っていうのはこの間私が口走った事・・・

でも自分が蒔いた種は、自分でどうにかしなきゃ。

そう思い、呼びだされた場所へ…

そこは弘樹んちがある駅前のカフェ。一番奥の席で頬杖をついている翔太。

『お待たせ。』

翔太『あっ、真希。わざわざ呼び出したりしてごめんなっ…』

『ううん、別にいいんだけど何かあったの?』

そういいながらテーブルを挟んで腰を掛けると

翔太『この間の意味・・・教えてくれないかなっ?』って・・・

やっぱり思った通りだった。


あまりに真剣な翔太の瞳に誤魔化すのはやめようと覚悟を決めた。

『いまから話す内容で、翔太は私を軽蔑するかもしれない。もう友達でさえいられないかも…でもこれだけは信じてほしい。

この事は私が無理強いした事。
弘樹は何も悪くない。そしてりえは何も知らないから。』

そして私は記憶をさかのぼる。

徹と弘樹がりえと出会ったのはあの日が初めてじゃなかったこと…

そして自分が翔太に近づきたい為だけに弘樹を利用し恋人同士の振りをしたこと…

全て包み隠さず打ち明けた。

『ごめんなんて簡単な言葉で許してもらおうとは思わない。
けど、悪いのは私。
他の誰も悪くない!それだけはわかって!お願いだから、ねっ…翔太。』

すると翔太がゆっくりと口を開く。

翔太『わかった・・・信じるよ。
真希、正直に話してくれてありがとう。

でもこの事は誰にも言わないでくれるかな? 俺も何も聞かなかった事にするから・・・』





~ Rie side ~

ソファーに寄りかかり翔太の帰りを待ってたら、ウトウトしていたみたいで、時計の針は10時を指していた。

さっきの風邪薬、きっと眠くなる成分が入ってるんだなっ…

それにしても遅い翔太…

気になってもう一度電話を入れてみる。

やっぱりつながらない。

何かあった?

考える事は嫌なことばかり。

このままじっとしてられない私は上に何を羽織るわけでもなく、マンションの周りをうろうろ…

9月の初めだというのに、この日は少し肌寒く、身体の芯から冷えてきた。

その時、目の前に翔太の姿。

『翔太~!』

声をかけ駆け寄ると、ゆっくりと顔を上げた翔太。

その顔は少し寂しげに見える。気のせいかな?

『どうしたの?何度も連絡したのに…携帯の電源切れてない?』

翔太『あっ、ごめん。充電器持って出るの忘れてたんでちょっと電源落としてた。』

『心配したんだからねっ(ーー゛)もう~!』

そう言いながら人差し指で翔太の胸のあたりをつつくと、急に私の腕を取り私を抱きしめた翔太。

翔太『りえ、冷たい…どうしてこんなに冷たいの?』

『心配だったから、ここらあたり探索してたの(笑)』

そう言いながら翔太の顔を見上げると、いきなりふさがれた唇。

いつもとは違うキスに戸惑う私。

そして唇が離れると同時に

翔太『りえ、、、ずっとずっと一緒にいよう!』って、強く強く抱きしめられた。





~ Syouta side ~

真希の話はあまりにも衝撃的ですぐに言葉が出てこなかった。

とりあえず自分の気持ちを整理しないと…

『わかった・・・信じるよ。
真希、正直に話してくれてありがとう。
でもこの事は誰にも言わないでくれるかな? 俺も何も聞かなかった事にするから・・・』

と言って別れた。


家まで帰る道。必死で去年のクリスマスの記憶を辿る。

そういえば・・・

りえの言葉に弘樹と徹の2人と以前から知り合いなのかってそう思ったことを思いだした。

でも、、、あの時、、、

確か徹が否定したから俺はその言葉を信じたんだ。

なぜ?徹は以前からりえを知ってる事を隠したりしたんだろう?

その時、あることを鮮明に思い出した。

付き合いはじめて3ヶ月がたとうとしていた一日前

いつものように3人で飲んだ時、弘樹はいつになく落ち込んでた。

そう…気になる女の子がいたんだけど名前も聞けずに会えなくなったって、、、

弘樹『すっごく笑顔が可愛くて、なんにでも一生懸命なところが好きなんだ。』って…

もしかしてそれがりえ?

だからりえと再会した時、俺にその事実を知られたくなくて秘密に?

そう考えれば全て辻褄があう。

そして俺はあの時、落ち込んでる弘樹を慰めるために

『弘樹が運命だって、そう思ってるなら、、、絶対会える!俺はそう信じるよ。』

だとしたら、、、弘樹はりえに運命を感じたのかな?


その時、俺の名前を呼ぶりえの声が聞こえた。

りえ『翔太〜!』そう言いながら駆け寄ってきた。

そして俺の顔見るなり

りえ『どうしたの?何度も連絡したのに…携帯の電源切れてない?』

『あっ、ごめん。充電器持って出るの忘れてたんでちょっと電源落としてた。』

りえ『心配したんだからねっ(ーー゛)もう~!』

そう言うと人差し指で俺の胸のあたりをつつく。ちょっと拗ねた時にりえがやるいつもの仕草。

そのりえの腕を取り思い切り引き寄せる。すっぽりと収まったりえの体はなぜか冷たくて

『りえ、冷たい…どうしてこんなに冷たいの?』

りえ『心配だったから、ここらあたり探索してたの(笑)』そう言いながら俺の顔を見上げたりえ。

俺の事が心配で? 

その言葉にすがりたくなる。

そしてその瞳に吸い込まれるように口づける。

りえを誰にも渡したくない。

その思いが俺の腕にこもったように強く強く抱きしめながら呟いた。

『りえ、、、ずっとずっと一緒にいよう!』





~ Rie side ~

明らかにいつもと様子の違う翔太に戸惑いを隠せない。

『翔太・・・どうしたの?』

その声にやっと抱きしめる力を弱めてくれた翔太。

翔太『ごめん…』

『えっ? 何が?何がごめんなの?』

翔太『い、いや、こんなに遅くなって、連絡も取れずに・・・ほんとにごめんなっ』

そういいながら体を離し、私の頭をポンポンって。

でもその笑顔はいつもの笑顔じゃないような・・・

『翔太、、、何があったの?』

翔太『何がって?何もないよ。それより体の具合は?大丈夫なの?』って、話をそれされた。

でもこれ以上、追及してはいけないようなそんな気がしていた。





~ Syouta side ~

2人して家に戻るとテーブルには美味しそうなりえの手作り料理。

『これ、りえが作ったの?』

りえ『うん、一周年記念日だからちょっと頑張ってみたんだ。』

そう言うと俺の手を引いて椅子の所まで、

りえ『旦那様、ちょっと料理を温めてきますので、少々お待ちください(*^_^*)』

りえの笑顔につられて笑顔になる。

そして日付が変わるちょっと前に2人して一周年記念日をお祝いしたんだ。

テーブルにはろうそくの灯り。

ゆらゆら揺れてる炎の向こうにりえの笑顔。

その笑顔に嘘はない・・・

それなのにどうしてあんな嘘をついたの?

考えれば考えるほど胸の奥が痛くなる。

りえ・・・今、りえの心を占領しているのは一体誰なの?





~ Toru side ~

弘樹が倒れたあの日から3日後の月曜日…

朝早くにりえから電話。

りえ『徹、、、ゴホッ、ゴホッ。今日、なにか用がある?ゴホッΣ(>o< )』

電話の向こうのりえはとっても辛そうで…

『もしかして、風邪?』

りえ『うん、ゴホッ。ちょっと熱もあるみたいで…悪いんだけど、、、ゴホッΣ(>o< ) バイト替わってもらっていい?』

『別に構わないけど、お前、先週、病院行ったんじゃないの?』

りえ『えっ?ゴホッ、なんで、ゴホッ、そんな事、徹が知ってるの? もしかして弘樹から聞いたの?』

『弘樹から?なんで?』

あいつ、何か隠してるってそう思ってはいたけど…もしかして、あのお粥、りえが作ったものだった?

りえ『い、いや、ゴホッ…な、何でもない?なんども悪いけどお願いねっ。』

突然話を切り上げようとしたりえ。

そんなりえに

『りえ、病気が治ったら、ちょっと話そうっか。なっ、、、』





~ Rie side ~

熱も下がって3日目。久しぶりのバイト・・・

ちょうど終わる時間に徹からのメール。

【バイト、もう終わった?】

【うん、今、終わった。この間はありがとう。】

そう返すとすぐに電話がかかってきた。

徹『もしもし、俺…』

『徹、この間はありがとう。』もう一度お礼を言うと、

ちょっと低いトーンで、、、

徹『あ~、病気なんだから仕方ないよ。それよりこれから時間空いてる?』

『うん。別に誰との約束もしてないけど…』

徹『じゃっ、そっちに行くから、ちょっと待ってて。』

『もしかして・・・この間言ってた、ちょっと話すって事?』

徹『うん、倉庫で話そう。いいねっ?』

『わかった。待ってるよ。』

徹が何を話そうとしているのか大方の想像がついてるだけに、少しだけドキドキしてる私がいた。





~ Toru side ~

自転車を飛ばしてバイト先へ・・・

一目散に倉庫に向かうと、隅の方に壁にもたれかかるりえを見つけた。

『ごめんなっ…待たせちゃって。』

りえ『ううん、大丈夫。それより話って、、、なに?』

ちょっと緊張しているように見える。

俺が今から何を言おうとしているのか、わかってるからなのか?

『とりあえず、あそこに座らない?』

休憩用に置いてあるパイプ椅子を指さすと、大きくうなづいた。

腰かけた途端、りえの椅子を自分の方に引き寄せ、じっと瞳を見つめると、

ちょっとびっくりした様子のりえが

りえ『ど、どうしたの?徹・・・そんなにじっと見つめられたら身動きできなくなっちゃうよ。』

俺の視線をよけるように俯いた。

そんなりえの膝に右手を置きながら尋ねる。

『りえ、俺達、友達だよなっ?』

りえ『何言ってるの?今更・・・友達だよ。大事な友達。』

『じゃっ、弘樹は?弘樹はりえにとってなに?』

核心に触れる一言…

りえ、お前が蓋をして隠そうとしている気持ち…俺だけにはちゃんと話して。

そうじゃないと、お前がいつか壊れてしまいそうで怖いんだ。





~ Rie side ~

徹『じゃっ、弘樹は?弘樹はりえにとってなに?』

徹の言葉にドキッ…  

自分でもよくわからない程動揺した。

すぐに返事が出来ない私に

徹『りえ、聞いてる?』

『聞いてるわよ。急にそんな事聞くからちょっとびっくりしただけよ。』

徹『それで? 弘樹は友達?
りえにとって弘樹は俺の立ち位置と一緒なのかな?』





~ Toru side ~

『それで? 弘樹は友達?
りえにとって弘樹は俺の立ち位置と一緒なのかな?』

この質問、俺にとってもかなり辛い質問。

弘樹と自分が同じ立ち位置かなんて、本当は聞きたくない。

でもこの先、りえが自分の気持ちに気づき、一人悩み身動きがとれなくなる前に、はけ口を作ってやらないと…

そう、何とかしてあげないという思いでいっぱいだった。

りえ『弘樹と徹…』

その言葉をかみしめるりえ。

『そう。俺と弘樹…
俺達がここでバイトをし始めた時に今と同じ質問をしたら、きっとりえの答えは、

『一緒だよ』

って返ってきたんだろうけど、今は違うよなっ?』

りえ『違う?そんなことない。徹は何が言いたいの?』

『じゃあ〜はっきり言うぞ。
弘樹の立ち位置は俺と一緒じゃなくて、翔太と一緒。

お前自身は認めたくないんだろうけど…
2人の人を同時に好きになってるんじゃない?』





~ Rie side ~

徹『お前自身は認めたくないんだろうけど…2人の人を同時に好きになってるんじゃない?』

2人の事を同時に?

『何を言ってるの?意味が、意味が全く分からないんだけど・・・』

徹『じゃぁ~聞くけど、この間の一周年記念日にどうして弘樹んちに行ったの?』

『なんでそれを?』

徹『言っとくけど、弘樹から聞いたわけじゃないからねっ。』

『だって、先週病院に行ったなんて情報、弘樹しか知らないのに…』

徹『ほんとに?』

そう念を押され思い出した。

翔太は知ってる。

それって翔太に聞いたって事?

りえ『翔太に聞いたの?』

頷く徹。

徹『あの日、すごくがっかりした顔で翔太がここに来たんだ。』

『がっかりした顔?』

徹『そりゃそうだよなっ。
大事な記念日を2人してお祝いしようと思ってたのに、彼女は体調崩して、病院に行くって言ってからいくら待っても連絡がこない…
そんなの俺だって凹むよ。』

『でもあの日…翔太からはなんの連絡もなかったんだよ。』

そう、あの日翔太と電話で話したのは病院に行くって電話したあの時だけ。

あとは全部通じなかった。

徹『俺が翔太でも自分からは連絡しづらいよ。自分が連絡することで風邪だというりえに無理をさせるんじゃないかってさっ…

そこまで翔太の気持ち、、、考えてた?』

そう言われ何も言えなくなった。

弘樹の家にいたあの時、翔太との約束よりも弘樹を心配する気持ちの方が大きかったから…





~Toru side ~

りえを追い詰める形になってしまった・・・

けど、今、自分の気持ちに気づく方がいい。

そう、俺がそばにいるこの時に・・・

りえ『翔太の気持ち・・・
そうだねっ、徹が言う通りかも…

でもあの時は弘樹がすごく辛そうで、、、私、そんな彼を一人にして翔太の元へ行けなかった・・・そう、友達として、友達としてだよ。』

『じゃあ~、なぜ翔太にすぐに連絡しなかったの?』

りえ『それは、翔太が気分悪くしちゃうかなって・・・』

『翔太の事、そんな心の狭い男だって思ってるの?』

りえ『違う・・・だけど・・・』

『確かに翔太はお前の事好きすぎて俺達にまでヤキモチを妬くようになってたかもしれない。
でもあの日、翔太に弘樹の事を話したらすごく心配してた。

りえが正直に話したらきっと許してくれると思うし、あいつ自身も弘樹を見舞いに行ってたと思うよ。

言えなかったのは、りえの気持ちに弘樹への気持ちが大きくなってるからじゃないの?』

周りを固め、何も言い訳できない状態にしてしまう俺。

その時、ゆっくりと立ち上がったりえの瞳から一筋の涙。

りえ『どうして?どうして、徹は私の事、そんなに責めるの?』

静かにそう呟くと、両手で顔を覆い泣き始めた。

『責めてるんじゃない。ただりえにちゃんと自分の気持ちと向き合ってほしかったんだ。
このままじゃ、りえの気持ちがいつか壊れてしまうって、、、』

りえ『違う。私が好きなのは翔太だけ。
翔太だけ、翔太だけなんだから…』

そう思い込もうとしているりえ。

でも俺の言葉に蓋をしていた弘樹への思いにも気づいたんだよねっ?

泣いているりえをゆっくりと抱きしめると

『りえは悪くないよ。確かに好きという気持ちはどうにもできない。
でもいつまでも逃げてばかりじゃダメだってそう思う。辛いことだけどちゃんと気持ちに折り合いをつけないと…

それで俺達の関係が崩れるとしても・・・

ただ、1人で悩んで苦しむのはやめて。俺がりえの傍にいるから、なんでも話してほしい。』

今の俺の気持ち・・・

この言葉をりえがどう理解するかはわからないけど・・・

精一杯の愛の告白。

受け取ってほしい・・・と思っていた。





~ Rie side ~

徹から指摘されてやっと自分の気持ちに正直になれた気がした。

少し落ち着きを取り戻した私。

『徹・・・私、どうしたらいいのかな?』

徹『俺の口からどうしろって言えないけど、りえには自分の気持ちに嘘はつかないでほしい。それだけだよ。
こんな俺だけど、話だったらいつでも聞くから。』

そういうと私の頭をポンポンと叩く徹。

『ありがとう。ちゃんと考えてみる。』





~ Maki side ~

翔太に誰にも言うなってそう言われたけど…

やっぱり一人で抱えるには重すぎて

紀佳を呼び出し、全てを打ち明けた。

紀佳『という事は・・・弘樹がりえの事をずっと好きだったって事が翔太にばれちゃったって事だよねっ(-_-;)』

『うん・・・ごめん・・・』

紀佳『私に謝ることじゃないよ。
でも翔太は気づいてたと思うなっ、弘樹がりえを好きなこと・・・ただ、確証がほしかったんじゃないかなっ。』

『確証?』

紀佳『うん。あの八丈での翔太の表情、ただ事じゃなかったもん。

あのころから少しずつ弘樹を牽制してたと思う。りえとの関係もちょっとギクシャクしてるみたいだし…』

『それって・・・りえも弘樹の事、好きって事?』

紀佳『多分。でもりえは自分の気持ちに気づかないふりしてる。
自分は翔太の彼女だからって・・・
見てて痛々しいときがあるの。』

『そんなの嘘じゃない!』

紀佳『真希、落ち着きなよ。』

紀佳から制されハッとする。

『ごめん。私がりえを責められる立場じゃないよねっ。
でも、そんなの翔太も弘樹もかわいそ過ぎるよ。』

紀佳『そうだねっ。でもりえ自身もいずれ自分の気持ちに正直にならないとおえない日が来る。
それってかなり辛いと思うよ。
だけど今はただ見守るしかない。

今聞いたこと、私の胸にしまっておくから、真希も翔太から言われた通り秘密にしてて・・・』

と念を押された。

だけど私の心の中には納得できない思いが芽生えてた。





〜Hiroki side ~

風邪も完治しバイトも再開した金曜日。

終わり時間が近づいたころに徹がジムにやってきた。

徹『おっ、今日から復帰?』

『あ~、あの時はありがとなっ。それよりどうした?』

そう尋ねると、

徹『いや、快気祝いに一杯やらないかなって思って…聞きたい事もかなりあるし。』

そう言われた瞬間、徹が何を言おうとしているのかわかった気がした。


徹と一緒にいつもの食堂。

最初は他愛ない話…

できるならこのまま終わってくれないかと…少し早いピッチでビールを飲み干す。

徹『ペース早すぎだろっ(笑)』

『いいじゃん、久々なんだからさっ(笑)』

徹『もしかして、お酒を飲んで俺の聞きたい事、はぐらかそうとか思ってたりして~(;一_一)』

やっぱり長いこと付き合ってきただけはある。全て読まれてる(-_-;)

『なんだよ。聞きたい事って・・・』

重い口を開くと、

徹『おっ、観念したみたいだなっ(笑)』

そして先週の金曜日。そう、例の金曜日の事について話し始めた。

徹『あの時、お粥を作ったのは、りえだよなっ?』

『なんで、それを?』

徹『本人から直接聞いた。お前が自分でお粥作るわけないって思ってたけど、りえっていうのは意外だった。』

その言葉に何も言えなくなる。

徹『まっ、あの時、お前は高熱が出てたわけだし、なにかあった?なんて野暮な質問はしないから安心しろよww』

俺の困った様子を楽しんでるかのような徹。

でも返す言葉もない。

徹『あの日、りえにとって大事な日だったことは知ってるよなっ?』

『お前から聞くまでは知らなかった。家の大事な用っていってたからなっ…

もし、翔太との約束があったなら、いちもにもなく帰れって言ってたよ。

俺だって、それくらいの気遣いはしたさ。』

徹『あ~、俺もそう思う。弘樹はそんな奴じゃない。でもそこが問題なんだよ、弘樹。』

『問題?どういう意味?』

徹『りえだって翔太との記念日だって、お前に伝えたら帰れって言われる事をわかってたから言わなかったんじゃないのか?

嘘をついてまでお前の看病をしたかった・・・問題はりえの気持ちだよ。』

りえの気持ち、それって・・・

徹『あいつ、お前の事が好きなんじゃないかって、俺はそう思ってる。』

『何言ってるんだよ!』

俺が考えていたことを言い当てられたようで、少し声が大きくなる。

徹『声、デカい。』

『お前が変なことをいうからだろっ…
りえは翔太の彼女なんだ。そんな事あるわけがない。』

徹『そう言い切れる?』

そして徹は言葉を続ける。

徹『お前はない?こんな経験。
俺はある!2人の人を同時に好きになる。
どっちも好きって、一言でいってしまうとすごくいけない事のように思えるけど、好きっていう気持ちは止められない。

りえは今、そういう気持ちなんだと思うんだ。』





~ Toru side ~

俺の言葉に何も言えなくなる弘樹。

お前も少しは考えていたんだろう?
りえの気持ちが少しずつ自分に向いてきてるって…

『俺、色々と考えたんだ。
最初、りえが翔太の彼女だって知った時はすごくショックだった。
お前にはなかなか本音を明かす事は出来なかったけど、俺もりえに惹かれ始めてたからなっ…

でも、俺の気持ちとお前の気持ちは明らかに違った。

そう、俺はお前が傷つくのをどうしても阻止したかった。

だから、お前のりえへの気持ちがトーンダウンしてから会う方が翔太の為にも、お前の為にも一番だと思ったんだ。

でも俺達は出会ってしまったんだ。

弘樹、俺がお前に言った言葉覚えてるか?』

弘樹『徹が俺に言った言葉?』

考えてる弘樹が思い出しように顔を上げる。

『…もしどこかでお前と繋がってるなら、また会える・・・そうだろっ?』


『会えた時はすでに翔太の彼女だったけど…俺達は繋がってた。違う?』

弘樹『でも、、、』

『そうだなっ・・・人の彼女、ましてや親友の彼女に手を出すなんて考えられないよなっ。

でも弘樹、手を出したわけではない。
りえがお前に惹かれていったんだ。

だったらもう止める事は出来ない。

俺にも、、、そして翔太にも、、、』





~Hiroki side ~

徹は何を言おうとしてるんだろう?

その意図がわからず、俺はただ困惑していた。

徹『俺は、お前に後悔してほしくない。
もしお前にとってりえが運命の人だとそう思うのならぶつかってほしいと思ってる。

あとはりえ自身が決める事だ。』

『でも、翔太を傷つける事に・・・なる。』

徹『確かにお前を選んだ時はそうなるかもなっ。でも散々迷った挙句、翔太の手をとるという事も考えられる。

どちらにしても友達という関係性が崩れるかもしれないけど、このままお前だけが自分の気持ちを押し殺してるのを傍で見ているのはイヤなんだ。』

『徹・・・』

徹『弘樹、あとはお前次第だ。どんなことがあっても俺はお前の友達だ。
そこが揺らぐことはない・・・以上!

俺が言いたかったのはそれだけだ。さっ、飲むぞ!』

そういうとコップに並々とビールを入れる。

『少し考えてみるよ。』

そう答えるのがやっと・・・

でもこの時ほど徹の言葉が心強かったことはなかった。


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