本当の恋・・・見つけたら(3Version)

ノベルバユーザー519117

回想** 嫉妬 **

~ Syouta side ~

2人を心から心配していたのは事実・・・

でもその2人の姿を見た途端、俺の中で違う感情が・・・

これって、嫉妬?

そんな俺の感情を瞬時に読み取ったのか、りえが弘樹の背中から慌てて降りると、足を少し引きずりながら俺の目の前まできて、

りえ『ごめんなさい。私の不注意で教会で足を捻っちゃって歩けなくなっちゃったの。それで弘樹に…』

一生懸命にいい訳し始めた。

でもだんだん声も小さくなって、小さな体を更に小さくしたりえ。

すると弘樹が後ろから、

弘樹『俺が付いていながら、こんな怪我させちゃって…ごめん。』

その言葉に確信した…

俺は弘樹に嫉妬してる。

そして俺がとった行動は・・・

りえの前にしゃがみ込み、足首に手を添える。

『すごい腫れてる。大丈夫な訳ないよなっ、そうだろっ?りえ。』

かなりの腫れ具合に、さぞ痛かったんだろうと素直にそう思った。

その時初めて邪念抜きでりえの事が心配になってきた。

『とりあえず、部屋に戻ろう。』そういうとりえを抱き上げる。

りえ『翔太、私なら大丈夫。部屋までだったら歩けるから…』

恥ずかしいんだろう・・・あっという間に赤くなるりえの耳。

『こんなに腫れてるんだ。もう無駄に歩かない方がいい。
恥ずかしいのはわかるけど俺のいう事を聞いてくれよ。』

そういうと初めて笑顔をくれたりえ。

自然と俺まで笑顔になった。

そして弘樹に向かって、

『弘樹、りえをここまで連れて帰ってくれて・・・ありがとなっ。』





~Toru side ~

翔太の横顔…やけに真剣に2人を見つめてる。

もしかして、翔太・・・

お前 弘樹に 嫉妬してる?

翔太のその嫉妬心に気づいたのか、りえもやけに顔色をうかがってるかに見えた。

そんなりえを助けたい弘樹は、俺達に向かって

弘樹『俺が付いていながら、こんな怪我させちゃって…ごめん。』

でもその言葉がなお一層、翔太の嫉妬心をあおってる。

一瞬の沈黙。

ここぞとばかり、俺が言葉を発すると緊張の糸が切れたみたいにホッとした表情のりえ。

でも翔太の気持ちは収まらないみたいで、りえの足首を触ると、部屋に連れて帰ると言いだし、みんなの前で抱き上げる。

りえの彼氏は俺だって・・・そうアピールしてるか?

そして弘樹に一言

翔太『弘樹、りえをここまで連れて帰ってくれて・・・ありがとなっ。』
って言ったんだ。





~ Hiroki side ~

最初からわかっていたことだった・・・

りえは翔太の彼女だってこと。

だけど、翔太から

翔太『弘樹、りえをここまで連れて帰ってくれて・・・ありがとなっ。』

って言われた時、思いのほかショックで、、、すぐに顔を上げられなかった。

横にいた徹が小さな声で

徹『弘樹、、、大丈夫かっ?』

俺はうなづくだけがやっとだった。





~ Maki side ~

やっぱり、弘樹の気持ちはまだりえなんだ・・・

わかりきっていた事だけど、こうもあからさまに見せつけられると、私も弘樹と同じくらい立ち上がれない気持ちになった。

紀佳『どうかした?』

そんな私の表情を見抜いた紀佳。

でもここで弱音を吐くわけにはいかない。

偽物でも私は弘樹の彼女なんだから・・・

『別に…それより、りえ大丈夫かなぁ~?』

紀佳『うん、今日の夜は痛むかもねっ(-_-;)』

徹『鎮痛剤とか飲んだ方がいいよな?』

徹はさりげなく会話に参加してきたのに、弘樹は砂浜にずっと座りこんだまま…

私はそんな弘樹に話しかける事すらできなかった。





~Norika side ~

真希の瞳があまりにも頼りなげで心の奥がキューって締め付けられる思いがした。

ほんとに弘樹の事が、、、好きになっちゃったんだねっ。

徹『ねっ、俺達もそろそろ戻らない?』

そんな私達に向かって徹が救いの提案。

『そうだねっ。真希、そろそろ行こうかっ。』

だけど振り返った真希は、

真希『紀佳、徹、悪いけど先に戻ってて…私、ちょっと弘樹と話があるから。』





~Toru side ~

折角、この場の空気を別物にしようと頑張ってみたけど…

俺の力じゃ限界だなっ

弘樹、真希がこれ以上辛くないように、ここらではっきりさせた方がいい。

『じゃっ、紀佳、俺達先に戻ってようかっ。』

紀佳『そうだねっ。じゃっ、真希、弘樹、先に戻ってるね。』

そういいながら2人だけの空間を作ってあげた。

帰り道、紀佳がポツリッ・・・

紀佳『徹は真希の気持ち、気づいてるんでしょ?』

『そういう紀佳こそ、知ってるから、さっき泣きそうな顔で真希の事みてたんだろっ?』

紀佳『私、そんな顔してた?』

『お前ってさ、いいやつだなっ!』って肩を抱く。

すると

紀佳『なによ!いきなり!変な奴。』って腕をめいっぱいつねられた。

でもほんとに思ったんだ。

俺達が男だったら、、、絶対、親友になれたよなっ(^_^;)





~Rie side ~

抱き上げられ部屋に戻るまで一言もしゃべらない翔太…

首に回した腕を少しきつくして翔太の耳元に頬を寄せた。

そして耳元で呟いてみる

『翔太、、、怒ってる?』

翔太『怒ってる? そんな事ないよ。どうしてそんな事聞くの?』

表情は見えないけど、声は至っていつもの翔太。

『さっき、少し、顔が怖かった・・・』

思い切ってそう告げると、フッって鼻で笑われた。

『あっ、笑った(ーー;) 勇気を出して聞いてるのに~・・・』

すると、翔太が

翔太『部屋に戻ったら、俺の不機嫌な理由、ちゃんと話してあげるよ。』





~ Maki side ~

ひとり砂浜に座り込んでいる弘樹の後ろに回り込む。

私が後ろにいる事も気づかない様子の弘樹はずっと波打ち際を見てる。

その後ろ姿を見ているのも辛い私は視線を空に・・・そこには満点の星。

『わぁ~!綺麗~!なんか星が降ってきそうじゃない?ねっ、弘樹』

その言葉にやっと私の存在に気づいてくれた弘樹。

弘樹『真希…』

『やっと気づいてくれたねっ(^_^;)』

弘樹『ごめん・・・ずっとそこにいた?』

『うん、さっきからずっと弘樹の背中…見つめてた。』

そういうと、ちょっと寂しげに笑った弘樹が、自分の隣をちらっと見て

弘樹『座る?』

『いいの?じゃっ、お邪魔しま~す!』あくまでもテンション高く…

そう辛い気持ちは心の奥にしまいこんで・・・


弘樹『徹と紀佳は?』

『2人なら先に帰ったよ。さっき、弘樹にも声かけてたけど、聞こえてなかった?』

弘樹『あっ、うん。かなり波に集中してたから聞こえなかったww』

弘樹、、、無理して笑う事ないのに…

弘樹『で、、、真希はどうして帰らなかったの?』

『あっ、私?それは弘樹と2人の時間を作りたかったからじゃん!私達、恋人同士だよ!』

すると今まで無理して笑ってた弘樹の顔が一瞬で強張ってしまう。

そして私の顔をしっかりと見据え

弘樹『真希、俺、、、真希に話したい事があるんだ。』

弘樹が何を言おうとしてるのかわかった私は、わざと話をそらしたくて、

『あっ!流れ星!! 弘樹、今のみた?』

流れ星なんて見つけてないのに、、、

でもこうでもしないとここで、この瞬間で私たちの関係終わっちゃうんだよねっ?

そして涙がこぼれないように空を見上げた。





~ Syouta side ~

別荘に戻りリビングのソファーにりえをおろす。

りえ『ありがとう。重かったでしょ?』りえの言葉に

翔太『いつもの重さだよ。大したことないww』そう答えると真っ赤になったりえ。

救急箱の中から湿布を取り出し、腫れたりえの足首に貼りその上から包帯を巻いていく。

そしてその体勢のままりえに話しかけた。

『さっきの答え、教えてあげようか?』

視線を上げると神妙な顔つきで頷いたりえ。

『俺が不機嫌だった理由は…』

りえ『理由は?』

『ヤキモチ。
遅いなぁ~って散々心配してたら、俺の目の前に想像もしてなかったりえと弘樹の姿を見て・・・ヤキモチ妬いたんだ。』

俺の言葉に申し訳なさそうな顔をしたりえが

りえ『ごめん…反省してる。』

『俺の方こそ、ごめん。りえの足がこんな状況になってるって知らなかったから…
でも、俺の気持ちもわかってくれるよねっ?』

そういうとコクンとうなづいたりえ。

りえ『逆の立場だったら、きっと私もおんなじくらい怖い顔してたと思う。』

『俺、そんなに怖い顔してた?』

すると俺の顔真似をし始めたりえ。

りえ『こ~んな顔してたよ。』

どんなことをしてもかわいいりえ。
これが俗にいう惚れた弱味って事なのかな?ww

『それは怖そうだww』

でも、ここでりえに俺の気持ちをちゃんと話しておこうとも思ったんだ。

りえの頭に手を置き、顔を覗きこみながら

『こんな嫉妬深い俺、嫌いになった?』

りえ『そ、そんな事、ない。絶対にないから!』

否定してくれてよかったよ。

『じゃっ、約束してくれる?』

りえ『約束?』

『俺って意外と嫉妬深いって、自分自身で今日確認した。これはりえの責任でもあると思うんだ。』

りえ『私の?責任?』

『そう!りえが俺の事を惑わす事ばかりするから…』

りえ『惑わす?えっ、いつ?』

『こんなに俺の事夢中にさせといて、他の男と仲良くしてる。』

りえ『他の男って、弘樹と徹の事?』

『そう、2人ともれっきとした成人男性!』

りえ『でも2人は友達だよ…翔太にとっても大事な友達でしょ?』

やっぱりりえは俺の本当の気持ちに気づいてない。

だからちょっとかっこ悪いかなって、そう思ったけど

『俺にとっては大事な親友だけど、りえにとっては異性だろっ?
だからりえには俺だけを見ててほしい。

約束して・・・』





~ Rie side ~

翔太『…だからりえには俺だけを見ててほしい。約束して・・・』

そう言った翔太の瞳がやけに寂しそうで、思わず抱きしめてしまった私。

弘樹の事、ちょっとでもカッコいいって、男性として意識した事、、、ごめんねっ

『わかった。これからは翔太だけを見てるから、見てるからねっ。』

そういうとおでこに静かにキスをおとした。





~ Hiroki side ~

寄せては返る波を見つめながら、何度も自問自答。。。

りえは翔太の彼女。

どんなに恋しくても、手の届かない人。

だけど、そばにいると恋しくて恋しくてたまらなくなる。

という事は・・・

その時、真希から声をかけられた。

そうだ。俺がここで決心さえすれば、真希も俺と同じ思いをしなくて済む…

やっぱりここが限界。

そしてその話を切り出した。

その時、

真希『あっ!流れ星!! 弘樹、今のみた?』

って・・・

話をそらされた。

そして真希は俺に話す隙も与えず話し続ける。

真希『もう少し、もう少し早く気付けば願い事が出来たのに~、、、残念。

でももっと空に集中してればまた見えるかも。そうだよねっ?弘樹。』

『あの、真希、俺達さっ・・・』

真希『ねっ、弘樹は流れ星が見えたら、何をお願いする?

私は、もう決めてるお願い事があるの。
早く流れないかなぁ~(*^_^*)』

さっきからずっと空を見上げてる真希。

俺と会話をしてるはずなのにこっちを一度も見ない。

『真希、ねぇ~、俺の話を・・・』

立ち上がりながら真希の前に立つと、そこには涙を必死でこらえてる真希の姿が…

『真希、どうした? なんで泣きそうな顔…』

真希『誰も泣きそうな顔なんかしてないよ。勘違いだよ、弘樹・・・』

そう言いながら初めて俺の顔を見て笑った真希。

そして、

真希『弘樹の話・・・次に流れ星を見つけるまで待ってくれない?

私が流れ星を見つけて、お願い事をしたら・・・今から弘樹が私に言おうとしてる事が180度変わるから!ねっ。』

そういうともう一度空を見上げる真希。

真希?それはどういう事?

『真希?』

真希『待ってって言ったじゃない。もう少し、もう少しだけ待ってよ…せめて、この旅行が終わるまで、私を弘樹の彼女でいさせて・・・』

そして大粒の涙を流した真希。

真希『東京に着いたら、全て終わりにするから・・・』

そういうと俺の横を通り抜けて行った。





~ Rie side ~

次の日の朝、やっぱり捻ったところがかなりの熱を持ち、少し歩くのも辛い状態に…

最後まで痛み止めを飲んで我慢する事を提案した私だけど、

翔太『病院に行こう!これだけ腫れてたら思うように動きも取れないだろっ?

それってりえだけじゃなくってみんなに迷惑がかかる。いいねっ?』

という翔太の言葉に観念した。

診察の結果、

捻挫だと思いきや足首の骨にひびが入ってるらしく、その場で固定。

そして今日一日は極力足を使わないようにって言われ、車いすという最悪の事態に…

翔太『そんなにひどかったのかっ。すぐにでも東京に戻った方がいいなっ…』

みんな楽しみにしていた旅行・・・
私の為に台無しにしたくなくて、

『翔太、、、お願い。みんなこの2日間をとっても楽しみにしてたの。

それなのに、私のせいで早めに切り上げるなんて絶対にイヤ!

東京に帰ったらしばらくバイトも休んでおとなしくしてるから、予定通り夜の便で帰りたい。いいよねっ?』

最初は渋ってた翔太だったけど、

翔太『絶対、無理しない?』

『約束する!』

翔太『わかった。じゃぁ~、あと半日…楽しもうかっ?(*^^)』





~Toru side ~

翔太とりえの帰りをトランプをしながら待っていた俺達。

真希は昨日とうって変ってテンション高めなのに、弘樹はまだ昨日のショックが響いてるようでかなりのテンションの低さ(ーー;)

紀佳も弘樹のテンションの低さを気にしてるらしく、さっきからチラチラと様子をうかがってる。

その時、

りえ『ただいま~!』と玄関の方から聞こえたりえの声。

真っ先に立ち上がったのは弘樹。

おい、あからさま過ぎるだろっ(ーー;)

俺達3人も弘樹につづく。

玄関には車いすに乗ったりえと靴を脱がしている翔太の姿。

弘樹『車いす・・・そんなにひどかったの?』

りえ『ちょっとひびが入ってるんだって(^_^;) 

でも大丈夫!このギブスがガチガチに固まったら、普通通りに歩けるし・・・』

『でも、、、車いすじゃん。』

翔太『念のため今日一日は車いすにした方がいいだろうって…

まっ、ギブスが固まればシャワー以外は日常生活にそれほどの支障はないとは思うんだけど…』って苦笑い。

りえ『そういう事だから、みんな!あと半日、この旅行を楽しもうよ。ねっ、いいでしょ?(*^_^*)』

りえの言葉に、俺達6人で来るのはきっと最後であろうこの旅を楽しむことにした。





~ Syouta side ~

家まで送っていくという俺を必死で止めるりえ。

『今日だけは譲れない。ちゃんとお兄さんに会って謝らないと・・・』

りえ『だから!いいってば…もうギブスもカチカチに固まってる事だし、一人で帰れるし、、、ねっ、大丈夫だから(^_^;)』

すると真希が思いもしない一言を…

真希『もしかして、りえ・・・あんたまだ話してないの?』

『えっ?何の事?』

りえ『そ、それは・・・』

紀佳『やっぱり、そうだぁ~(ーー;)』

紀佳が理由を説明してくれた。

りえのお兄さんはかなり過保護で、りえの事となるとかなりの干渉をするらしく…

紀佳『私も真希もお家に遊びに行った時に、変な男に引っ掛からないように見張っててって言われたこともあるの。』

『変な男って…俺?』

真希『翔太は変な男じゃないわよ。
ただ、お兄さんからしてみたら、どんな人を彼だって紹介しても納得しないんじゃない?かなりのシスコンだし(笑)』

『だから、俺の事・・・まだお兄さんに言ってないの?』

りえを見ると小さくうなづく。

『でも付き合いだして、もうすでに半年以上だよ。今までに何度かうちにも泊りに来てるけど、その時はなんて言ってたの?』

するとちらりっと真希を見るりえ。

真希『翔太との思い出の日・・・お兄さんには全て私と紀佳との思い出の日になってるって訳・・・』

『そうなの?』

りえ『ごめんなさい…』

紀佳『という事だから・・・今日は私と真希でちゃんと送り届けるよ。
最初から外泊したところに男がいた!じゃ、刺激が強すぎるでしょ?(笑)』

という事で、近くの駅でりえたちをおろした。

そして最後に

『近々、あいさつに行くから…その時までには俺の事、ちゃんと話といてなっ(-_-;)』



~Norika side ~

駅からの道…落ち込み半端ないりえ。

りえ『はぁ~、私、もう完全に嫌われちゃった。翔太、呆れてたよねっ?どうしよう~?真希~、紀佳~』

まっ、蒼さんに言いにくい事情は分かるけど…

『いくらなんでも彼の存在くらいは伝えてた方がよかったんじゃない?』

りえ『そうだよねっ(-_-;)』

すると真希が落ち込むりえに思いがけない一言を・・・

真希『りえが考えてる事がわからないよ。

翔太みたいな申し分ない彼氏をどうして紹介できないの?

私だったら付き合い始めたその日にでも報告しちゃうよ。

半年以上も隠してるなんて…翔太から呆れられても当然なんじゃない!』





~ Rie side ~

真希『…翔太から呆れられても当然なんじゃない!』

真希の言葉が胸にささる。

紀佳『真希、言い過ぎ。りえが凹んでる時に追い打ちをかけるようないい方、マジで感じ悪いよ。』

紀佳が真希を制する。

でも真希が言ってる事は確かに正しい。

悪いのは私だもん。

『いいの、真希が言ってる事は間違ってないから…ごめんなさい。』

すると

真希『謝るのは私じゃなくて翔太でしょ? ちゃんと考えなさいよ。

なんかりえのそういうところ、、、私、もうついていけないかも…

天然すぎるのもいい加減にしなきゃ、振り回されてるのは翔太だけじゃないんだから…』

そういうと私に背を向ける。そして小さな声で

真希『ごめん。イライラしちゃって言い過ぎた。

紀佳、悪いけどりえを送ってってくれる?私、、、今日は先に帰る。』

そういうと来た道をかえる真希。その背中はとても小さく悲しげにみえた。





~Norika side ~

やっぱり、あの日…弘樹となんかあったんだ。

真希の背中にそう感じた私。

悪い予感程よく当たる。自分の勘の良さ、こういう時は恨めしいよ。

りえ『紀佳、振り回されてるのは翔太だけじゃないって…真希、言ってたよねっ?』

『言葉のあやだよ…気にすることないって(^_^;) 行こうっ、ねっ、りえ。』

今は目の前にいるりえを無事に送り届けないと…





~Toru side ~

りえが戻ってから、今まで通りに振る舞おうとしている弘樹がなんか痛々しい気がした。

いつまでそのお芝居、、、続けるつもりなんだ?

でも翔太達と別れた途端、無口になった弘樹。

『頑張ってたじゃんww』

弘樹『うん、自分でもよくやったと思う…俺ってすごいなっww』

『自分で言う?(笑)』

ホッとした表情の弘樹。今日初めて見た気がするよ。

暫く無言で歩く俺達。

すると弘樹がピタッ。立ち止まった。

『どうしたよ?急に止まったりして…』

弘樹『徹、俺・・・』そう言いかけて

弘樹『やっぱ、いいや…』そういうとまた歩き出す。

聞いてもらいたいんだろっ?

誰かに、いや、俺に…

弘樹の腕をとり肩を組む。

『水くさいなっ。何年お前と付き合ってると思ってんの?

ある程度察しはつくけど…言えよ。
誰かに話すだけでも、気持ち軽くなるからさっ…』

すると大きな溜息をついた弘樹が苦笑いしながら一言。

弘樹『俺さっ、、、やっぱ、りえの事が好きだわ。』





~ Hiroki side ~

『俺さっ、、、やっぱ、りえの事が好きだわ。』

心の声…誰かに聞いてほしかった。

徹『なんだよ、それっ!知ってるよ、初めからなっww』

『そうだよなっ。でもあの時よりもっと、もっとだっ。

もう自分の気持ちにブレーキが利かないくらいにだ…』

徹『弘樹…』さっきまでの呑気な顔が急に深刻になる。

『そんな深刻な顔するなって!
 俺、りえの事好きだけど、りえの泣き顔はみたくない。
ついでに翔太のあんな怖い顔ももういいよww』

徹『確かに、あん時の顔は、怖かったなww』

『だろっ?(笑)』そういうと少し前にあるバス停のベンチに腰掛けた。

徹『だなっ(笑)』少し離れて座る徹。

そして、俺は徹にだけ正直な気持ちを伝えようと思ったんだ。





~Toru side ~

弘樹『徹…今から、俺が言う事、黙って聞いてくれる?』

『黙って聞かなきゃいけないの?』

弘樹『そう、黙って!徹の言いたい事は受け付けない!!(笑)』

『わかったよ。努力してみる(笑)』

俺がそういうと、にっこり笑って

弘樹『ありがとなっ…』

そして大きな溜息をつくと話し始めた。

弘樹『俺、バイトやめようと思ってるんだ。』

あまりに突然の事に

『へっ?』

すると俺の顔を見て人差し指を立てる弘樹。

『わりぃ(^_^;)』

弘樹『俺、このままあのバイト続けてたら、りえの事諦め切れないから、少し距離を置こうと思ってるんだ。

もちろん、今までみたいに6人で飲むって事もしばらくは避けようって思ってる。』

そう言い切った弘樹はちょっとホッとした表情。

俺は内心かなり動揺してるけど、ここは聞くだけ、聞くだけ・・・(^_^;)

弘樹『あと…真希との恋人ごっこもおしまい。
これ以上、長引かせるのはよくないって思うんだ。

どう考えても翔太が真希になびくとは考えられない。
だったら、ここらが限界だって・・・』

それが弘樹が出した答え。

でも、弘樹・・・真希の気持ちはわかってる?

真希の気持ちはもう翔太じゃない。お前なんだってこと・・・

そう言いたかった・・・
けど、黙って聞けって!言われたから俺は心の声を仕舞い込んだ。

弘樹『約束・・・守ってくれてるじゃん!』言い終えた弘樹がクスッと笑う。

『あ~、男同士の約束だからなっ(ー_ー)!』

そして最後に弘樹が俺に言った言葉…

弘樹『徹、お前はバイト、続けろよなっ。じゃないと、りえが寂しがるから…』





~ Rie side ~

『ありがとねっ…』家の前までついてきてくれた紀佳にお礼を言って中へ・・・

玄関の扉を開けた時、紀佳が

紀佳『りえ、あのさっ、さっき真希が言ってた事、気にする事ないからねっ!』

私が気にしてる事、気づいてたんだ。

『ありがとうっ…紀佳。』


家の中に入ると、なんだかいい匂い。

もしかしてお兄ちゃんが何か作ってる?

お兄ちゃんが料理をする時は、、、すごくご機嫌な時。

なにかいい事あったのかな? 
もしかして、翔太の事を打ち明けるのも今日がいいって事?

『ただいま・・・』

蒼『おっ、おかえり。今、飯作ってるからちょっと待ってろよ。』

そういうと鼻歌交じりに何かをかき混ぜ味見している模様。

蒼『よしっ!なかなかイケてる(*^^)v』

どうやら今日はお兄ちゃん特製シーフードカレーのようだ。

お料理もうまくいって、一息ついたお兄ちゃんが、、、やっと私のギブスに気づく。

蒼『どうした?そのぶっとい足…』

心配してる?

『旅先にて、蹴つまずきました(ー ー;)』

蒼『折った?』

『折った?じゃなくて、折れた?でしょ(ーー;)』

蒼『そう、そう、それっww』

心配してる気配なし、、、

『幸いにも折れはしてない。でもひびが入ってるって(~_~;)』





~ Sou side ~

昔から鈍臭い奴だった。

いつも一緒に遊ぶと俺の後をついてきては、よく転んで泣いてたなって、昔の事を思い出してた。

でも21にもなって、あの頃と変わらないとは…

だから俺はいつまでたってもお前の事が心配でならないんだ。

そんなりえのお守りも大学に入って解放されると思ったら、一年後にまた、こいつが俺の後を追って来て…

全く世話がやける。

あと、俺の両親も全く考えなしで、、、

兄妹とはいえ、俺たちは血縁関係のない兄妹。

そんなりえを意識し始めたからこそ、わざわざ距離を置く為に東京の大学を選んだっていうのに、一年後にりえをこっちに送り込むなんて…(ー ー;)

俺が理性のある男だからよかったものの、本能のまま生きてるケダモノのような兄貴だったらどうするつもりなんだか…

でも、ここまでこの足で一人帰ってきたのか?

『お前、そんな足でよく一人で帰ってきたなっ。』

りえ『紀佳が送ってくれたの。』

紀佳ちゃん?へっ、そこは彼氏じゃないのかっ?

蒼『お前、、、そこは彼氏が送ってくるもんじゃないの? こんな怪我してるのに…』





~ Rie side ~

蒼『お前、、、そこは彼氏が送ってくるもんじゃないの? こんな怪我してるのに…』

お兄ちゃんの言葉に耳を疑った。

『彼氏?はっ、なに、それっ?』

蒼『いるんだろっ?彼氏…そう~、名前は、確か、近田 翔太。違った?』

『え~っ?なんで知ってんの?』

蒼『お前、隠し通せるとでも思ったの?(笑)』

やっとの思いで出てきた言葉は…

『いつから?』

蒼『お前のその時計見た時から…』って言いながら私の時計を指さしたお兄ちゃん。

蒼『それ、アルマーニだろっ?しかもペアウォッチ・・・』

ヤバい!完全に見破られてる(ーー゛)

蒼『それさっ、俺のほしかったデザインなんだよなっ。

だからお前がそれしてる時、いつになったら俺の元にもう片方がくるんだろうって、心待ちしてたんだっ。

でもお正月過ぎても、なんにもこないから、その時に、

「あっ!男が出来たなっ!」ってな…』

『えっ、じゃぁ~、もう半年も前に知ってて黙ってたの?』

蒼『お前だって、そうじゃん!(笑)』

それは、そうだけど・・・恐るべしお兄ちゃん。


それからお兄ちゃんはどうやって翔太の事まで知ってるかって事を細かく教えてくれた。

蒼『俺の人脈を甘く見るなよ。

俺の高校の先輩、山木さんがお前と近田ってやつが付き合ってるって教えてくれたんだ。

その近田 翔太ってやつって大学じゃちょっとした有名人らしいじゃん。

財閥の一人息子で、容姿端麗、スポーツ万能、学部きっての秀才、申し分ない男で、性格もいい。

『人情味もあって、紳士的で、俺が女だったら絶対惚れてる!』

って、先輩が絶賛してた。

それにしてもお前、凄い男、捕まえたもんだなっ(笑)』って…

そんなお兄ちゃん言葉に誇らしげな気持ちに…

『捕まえたんじゃなくて、捕まえられたんだもん!(*^^)v』





~ Sou side ~

やっと、彼氏の存在を認めたりえ。

最初はなんだかもやもやとしたものがあって、認めたくないという一心からりえに尋ねるのを躊躇していたけど…

でもりえの楽しそうな姿を見てたら、そいつの事を認めるしかないってそんな気持ちになった。

東京に来た時は家と大学との往復で、慣れない環境に少しナーバスになっていたりえだったけど、そいつと付き合うようになってからは、北海道にいた時のあの明るいりえが戻ってきたから…

俺が出来なかったりえの笑顔を取り戻す事・・・そいつはやってのけたんだからなっ(笑)





~ Hiroki side ~

八丈島から帰った次の日。

俺はバイト先に出向き辞めたいという意思を伝えた。

りえと距離置きたいからという本音は言えるはずもなく・・・

表向きの理由は元のバイト先の先輩から、インストの手が足りないってどうしてもって頼まれたって事で徹と打ち合わせ。

徹『りえ、今は休んでるけど、出てきたらきっとびっくりするだろうなっ(ーー;)

お前の事だから、りえには何も言ってないんだろう?』

『あ~、でも2人揃ってやめるわけじゃないから、お前がいれば大丈夫だよ。

寂しいのは一時だ。すぐになれる…

だから、もし、りえから尋ねられたらそう言って話、合わせといて。』

徹は渋々承諾してくれた。


そしてもう一つ。

俺にはやらないといけない事が残ってた。

いつも待ち合わせしているカフェに真希を呼び出した。

遅刻なんてしてこない真希が今日に限って10分の遅刻。

真希『ごめんねっ…出がけに色々あって、、、』

そういうと真希は荷物を置いて注文に…

きっとブラックを注文してるんだろうなっ。

甘い物しか飲めない俺をいつも小馬鹿にしてた真希。

真希『男のくせにココアだなんて…なんか笑っちゃうっ(笑)』って言われたっけ(^_^;)

こうやって考えると、偽物の俺達にも思い出ってあるもんだなっ…

真希『おまたせ…で、話ってなに?』

座った途端にそう聞かれちょっとびっくりした。

八丈のあの夜・・・

真希『…せめて、この旅行が終わるまで、私を弘樹の彼女でいさせて・・・』の言葉に…

真希はもしかして・・・俺の事・・・なんて思ってたから。

『あ~、話は…』少し躊躇してると

真希『この関係を終わりにしたいって事だよねっ?』

真希の方から、

『う、うん…』

真希『わかった。私もそろそろ限界だったし、もう潮時かもねっ。』

あっさりめの真希の態度にちょっと拍子抜け。

で、、、なおも淡々と話を続ける真希。

真希『翔太達にはなんていうつもり?
私が振られたテイなの?それとも弘樹が振ったテイ?』

『そ、それは、、、真希がいい方で…』

真希『じゃぁ~、私が振ったってテイでお願い…

でも気まずい感じの別れ方じゃなかったことにしましょうねっ。
みんなで会う時に気を遣うのはごめんだから…』

『あっ、そこは気にしないで!
俺、みんなでの集まりもしばらく行かないことにするから…』

そういうと初めて真希の表情が強張った。

真希『弘樹、それって…私達、もう、友達という関係でもいられなくなるの?』





~ Maki side ~

弘樹から呼び出しの電話。

東京に戻ったら終わらせるってそう言ったのは私だけど、ほんとにこんな早急に片づけようってするなんて…ショックの隠せない私。

でも、弘樹の前だけは泣いてはいけない。

そう思ってた私は出がけに何度も玄関の鏡の前で表情のチェック。

でも何度、練習してもニッコリ笑うなんてやっぱりできなくて・・・

だったら事務的に片づけようってそう心に決めて家をでた。

そう、心に決めていたのに…

弘樹『あっ、そこは気にしないで!
俺、みんなでの集まりもしばらく行かないことにするから…』

そう言われた瞬間、私の決心はもろくも崩れた。

『弘樹、それって…私達、もう、友達という関係でもいられなくなるの?』

弘樹『友達だよ。友達だけど…やっぱりしばらくはあえない。』

『それって私と?それともりえと?』

すると弘樹が小さな声でポツリッ

弘樹『どちらともだよ…』

そう言ったけど、、、多分会えないといったのはりえの事だよねっ?

これ以上、りえに会ってると、自分の気持ちにブレーキが利かなくなる。
そう思ってるんでしょ?

弘樹『バイトも今日辞めてきたんだ…』

その言葉弘樹がどれだけりえの事を好きなのかってわかった気がした。





~ Rie side ~

次の日の朝、早速、翔太に連絡。

『お兄ちゃんにちゃんと言ったから…翔太と付き合ってる事。』

正確に言えば言ったんじゃなくて、ばれてたんだけど…(笑)

すると電話口の翔太のテンションが一気に上がった。

翔太『ほんとに?許してもらえた?』

『許すも許さないも私はもう子供じゃないんだから…でも申し分のない彼氏みたいだなって…(*^^)v』

すると耳が痛くなるような大きな声で

翔太『やったぁ~!』という歓喜の雄たけび。

もう大袈裟なんだからぁ~

そして早速、

翔太『じゃっ、次の日曜日にあいさつに行くよ。いいよねっ?』って言ってくれた。



翔太との電話を終え、朝ごはんを作ろうとキッチンへ行くと、そこにはお兄ちゃんの姿が…

『どうしたの?』って尋ねると

蒼『朝飯作ってっから、そっちで待ってろ!』って、たまには怪我もいいかもねっ(*^^)v

そんなお兄ちゃんにリビングから声をかける。

『今度の日曜、翔太があいさつにくるって~!』

するとキッチンからひょいと顔を覗かせたお兄ちゃんが

蒼『よし!そのスーパーマンのあら捜しでもしてやるかっ。』


お兄ちゃんとシウォニの初顔合わせ。

最初はどうなることかと思ったけど、お酒が入ると意外と意気投合してた2人。

ちょっとだけホッとした8月の初め。

私のギブスも明日には外せるとの事で、お休みしているバイト先へ挨拶に・・・

弘樹や徹と会うのもあの旅行以来。

徹はたまにメールをくれたり電話をくれたけど、弘樹からは一切なし…

翔太から何か言われたのかなぁ~

自分からは何の連絡もしないのに、相手からのメールや電話を要求するのもおかしい話だけど、やっぱりどこか寂しがってる私がいた。

『こんにちは~!』

顔を覗かせると、店長が私に気づいてくれて

店長『りえちゃん、久しぶりだね。足の具合はどう?』

『ご迷惑おかけしてすみません。
明日にはギブスも取れるので来週から復帰できそうです。』

そういいながら徹と弘樹の姿を探す私。

すると倉庫から本をたくさん抱えた徹が・・・

『徹!』

徹『お~!りえじゃん。元気だった?足の方は順調に回復してるの?』

『うん、明日にはこのギブスともお別れ!やっと思い切りシャワーを浴びれる(*^_^*)』

徹『夏場だったから大変だったなっ(^_^;)』

『うん・・・それより弘樹は?見かけないけど、今日はシフトに入ってない日?』





~Toru side ~

自分から言うつもりはないって言ってたけど・・・
真希や紀佳から何か聞いてるもんとばかり思ってけど、そこからの情報もなかったみたいだなっ(ーー;)

『あいつ、、、旅行から帰った次の日にやめたんだ。知らなかった?』

俺の言葉に一瞬で固まったりえ。そんなにショックだったの?

りえ『どうして?』

『前のバイト先のスポーツジムがあるだろっ、あそこの先輩に泣きつかれちゃったんだよ。

ダンスのインストが急にやめちゃったから、戻って来てくれないかってさっ…

俺じゃなくて、弘樹指名だなんてちょっとむかつくけど、確かにダンスのテクは弘樹の方が上だしなっ(笑)』

りえ『そうなんだ・・・』

もっと突っ込んで聞かれると思ったからいろんなエピソードを考えてたんだけどなっ(ーー゛)

『あと、あの事も聞いてる?』

ここは少し探りを入れる。

りえ『あの事って?』

あの日から弘樹とは会ってなかったとしても、真希や紀佳とは会ってるだろうに・・・
どうして知らないんだ?

『お前、この3週間、真希達とも会ってないの?』





~ Rie side ~

徹から

徹『お前、この3週間、真希達とも会ってないの?』って言われ咄嗟に俯いた私…

すると徹が私の頭に手を置いて、ポンポン。

徹『なんかあったみたいだなっ。話なら聞くぜ。あと1時間で終わるからいつもカフェで待ってて。』

徹は面倒見がいいからきっと厚意でそう言ってくれたんだと思うんだけど、今の私はそれを素直に受け入れられない事情があった。

仕事に戻ろうとする徹のエプロンを掴み

『カフェには…いけない。』

徹『へっ?用があるの?』

『・・・別にないんだけど・・・徹と2人きりじゃ・・・いけないの。
時間つぶしてるから、倉庫か事務所じゃダメ?』

徹『もしかして、それって翔太からそう言われたの?』

『そうじゃないけど…翔太に余計な心配かけたくないだけ。。。』





~Toru side ~

もしかしてそっちも重症?(-_-;)

りえからしてみたら変な誤解をうけたくないって言うのは素直な気持ちだろうなっ。

『場所が違うだけで2人きりになるのは一緒なんだけどなっ(笑) 

でもそれで翔太に義理立てできるなら、俺は平気だけど…』

そういうと少しホッとしたような表情を見せたりえ。

ほんとにこういうところにやられてるのかもなっ、俺も(ーー;)


1時間後、着替えて倉庫に行くとりえが携帯を弄りながら待っていた。

『ごめん、待った?』

りえ『大丈夫。それより、ごめんね。私に付きあわせちゃって(^_^;)』

『いいよ。いつもの事だから(笑)』





~ Rie side ~

徹を待ってる間、翔太とLINEでチャット中。

でも今から徹に悩みを打ち明けるって事は結局言えなかった。

だって言えば、また怖い顔に…なっちゃうもんね(ーー;)

1時間後、徹が倉庫に・・・

手には缶ジュースが2本。

徹『これじゃ、カフェと一緒だなっ(笑)』

そして私の瞳をじっと見つめ

徹『溜めてないで話してみろっ。』って言ってくれた。

とりあえず、八丈からの帰りがけの出来事から一つ一つ整理して話すと、

徹『う~ん(-_-;)』とうなりながら私の方をちらりっ。

『やっぱり私の言動って人をイライラさせちゃう?』

徹『多分、その時って真希の方が情緒不安定だったんだと思う。』

『えっ?どうして?』

すると徹が衝撃的な一言を

徹『俺からいう事じゃないかもしれないけど…真希と弘樹、八丈から帰った次の日別れたんだ。』





~ Hiroki side ~

りえと会えなくなって3週間。

忘れる為にバイトもやめ、連絡もしないでいるというのに…
逆にりえの事ばかり考えてしまってる。

なんだか俺がやった事って逆効果?

茂雄『おい…どうした?ボ~ッとして』

『あっ、すいません。』

茂雄『お前このところ元気ないよなっ。なんかあったのか?

俺でよければ相談に乗るけど…』


その先輩が、

茂雄『俺さっ、今日これで上がりなんだけど、さっき新規入会者の受付やっちゃってそのまま館内案内をチーフから言われたんだ。でも野暮用があってさっ。

お前、レッスンが入ってなければ代わってくれないか?』

『いいですよ。
レッスンなら今日は終わったんで、俺でよければ引き継ぎますよ。もしかして、デートですか?』

茂雄『そうなんだ。ここんところ忙しくて全く会えてなくてさっ(-_-;)

今日ぐらいは遅刻しないで行かないと、捨てられそうだからなっ。わりぃなっ(^_^;)』


新規入会者を迎えに受付まで行くと、そこにいたのは・・・

紀佳『はぁ~い!!』

紀佳だった。





~Toru side ~

『俺からいう事じゃないかもしれないけど…真希と弘樹、八丈から帰った次の日別れたんだ。』

俺のこの言葉にりえが持っていた缶ジュースを落としてしまった。

りえ『嘘でしょ?』

『俺、嘘はつきません(ー_ー)! こんな嘘ついて何の得があるんだよ。』

りえ『どうして?なんで?何が原因なの?』

『落ち着けよ。なにお前がそんなに動揺してんだよ…

原因なんて、当事者じゃないとわからないだろっ。俺だって知らないよ。』

ここはそういうしかないよなっ。

まさか、弘樹がお前の事を好きで忘れられなくて・・・
なんてことは口が裂けても言えない事実だもんなっ(-_-;)

りえ『あの八丈の時から、そういう話になってたのかな?
それなのに、私が弘樹に背負われて帰ってきたりしたからかな?
ねぇ~、そうなのかなぁ~、徹、私のせい?』

急にオロオロし始めたりえ。

『お前のせいじゃないよ。2人してちゃんと話し合って決めた事だろっ?
俺達が首を突っ込むことじゃない。わかるなっ?』

そういいながらりえの頭に手をやると、やっと落ち着いた様子を見せたりえ。

でもりえの動揺に少し違和感を感じた俺。

もしかしてお前の中で少しずつ弘樹の存在が大きくなってたりする…そういう事なのか?





~Norika side ~

弘樹『紀佳が、新規入会者?』

弘樹の驚いた顔。今、君が考えてる事を解析・・・

どうして紀佳がここにいる?

運動、苦手なんだよねぇ~って言ってなかったっけ?

って…きっと思ってる。

言葉にはならないその疑問に答えてやろうじゃないの!

『そう、弘樹が考えてる通り、私と運動は結びつかないかもしれないけど・・・
意外と女子マネって言うのも体力使うのよ。
それで基礎体力をつける為に入会したっていう訳。社会人になったらこんなにのんびり体力つける時間なんてきっとないだろうし…』

するとなんとなく納得してくれたみたい。

弘樹『それにしても俺が考えていたことよくわかったなっ。 
もしかしてお前、エスパー?(笑)』

『そう!私はエスパーなの(ー_ー)! 
ちなみに弘樹が考えてる事なら何でもお見通しよ。』

弘樹『俺が考えてる事って?』

『りえの事を忘れる為に少し距離を置いてみたのに・・・やっぱりりえが恋しくてたまらないよぉ~!! 違う?(笑)』

そういうと真っ赤な顔をした弘樹

弘樹『違うよ!絶対、絶対に違う!』

弘樹、それって、、、全て当たってます!!って言ってるようなもんだよ(^_^;)

『はい、はい!じゃっ、そういう事にしておこう!!』





~ Hiroki side ~

全力で否定したものの…こいつが言う事は全て当たってる。

ほんとにこいつはエスパーなのか?それとも・・・

そんな事を考えながら2人して館内を歩いてると、

紀佳『もしもし、井坂 弘樹さん…さっきから歩いてるだけで案内の一つもないんですが、、、』

紀佳から突っ込まれハッと我に返る。

『あっ、ごめん。ここが更衣室であっちがスタジオ。そしてこの階段を上がったらプールがあるから・・・以上。』

紀佳『わぁ~、すっごく雑な説明なんですけど(;一_一)』

『なんとなく、雰囲気でわかるだろっ!じゃっ、俺、別の仕事があるから行くなっ。』

そういって背を向けた途端、紀佳が一言・・・

紀佳『真希がねっ、すっごく落ち込んでて見てられないの。』

その言葉に足が止まる俺。

でも俺にはどうすることもできなくて・・・俯くだけ

紀佳『真希の事・・・もう一度考えてみてくれないかな?』

『でも俺達は…』

紀佳『わかってるよ。本当の恋人同士じゃなかったこと。』

その言葉にビックリして顔を上げると、

紀佳『あなたと徹が何でも分かり合える関係のように、、、私と真希もそういう関係って事よ。』





~Toru side ~

全てを伝えた後のりえの落ち込みが激しくて、なぜか俺までつられて暗くなる。

『お前のせいじゃないから、あんまり考えすぎるなよ。』

倉庫から一人出て行くりえの背中にそう声をかけると、振り返ってコクリとうなづいた。

1人で帰れっかなぁ~、あいつ(ーー;)

それから10分くらいして弘樹から電話が、

弘樹『徹、今日、何か予定ある?』

『いや、別に…どうかした?』

弘樹『今さっ、紀佳といるんだけど、一緒に飯でもって思って…』

『紀佳?なんだか珍しい組み合わせだなっ。わかった、、、で、、、どこにする?』





~ Hiroki side ~

俺が帰る時間を誰に聞いたのか、紀佳が従業員通用口で俺を待ち伏せしてた。

紀佳『もう、終わりでしょ?ちょっと付き合ってよ。』って、半ば強引に手をひかれた。

『まっ、待てよ。俺だって、用が…』

紀佳『あっても関係ない!今日は私の用が優先だから!! 』
そういうとキッと俺をにらむ紀佳。

そして一言…

紀佳『美味しい店・・・連れてってよねっ!』って…

そこで思いついたのはバイト先近くのいつもの食堂。

入って一番奥のテーブルに徹が俺らを待ってスタンバイ。

徹『弘樹、紀佳! ここ!』

紀佳『えっ?いつの間に援軍を呼んだのよ・・・ずるいぞ!井坂 弘樹。』って俺を見上げながら脇をつねった。

でもお前の攻撃に俺一人で立ち向かう勇気・・・今の俺には湧いてこないよ(-_-;)





~Toru side ~

紀佳の奴、、、さては真希推しの為に弘樹に近づいた?

『なんかあっちで内緒話してたけど…俺がいちゃまずかったのかよ(ーー;)』

すると紀佳がふてくされた顔で

紀佳『だってさぁ~、男同士、かばいあうでしょ?私は、井坂 弘樹と、さしで話がしたかったの!(-"-)』

まっ、言ってる意味は分かるけど…こいつ優しそうに見えても自分がこうと決めたら意外と頑固だからなぁ~。

お前のその作戦はきっと不発に終わると思うけど・・・


紀佳の話はやっぱり真希の話だった。

何度か説得しようと試みた紀佳だったが、弘樹の頑固さに根負け。

負けた悔しさからか、さっきから酒の量も多いし、ピッチも早い?

ヤバいことにならなきゃいいけどと思った時はすでに遅し(ーー;)

紀佳『もう~、あんた達はぁ~!! どいつもこいつもりえ、りえってさぁ~!
失礼極まりないっつ~の!!』って荒れ始めた。

こいつってもしかして、、、怒り上戸?


『かなり荒れてんなぁ~(^_^;) 大丈夫かっ?』

弘樹『紀佳って、、、こんなに酒癖悪いの?(ーー;)』

『俺に聞くなよ(;一_一) 俺もこんな紀佳を見るのは初めてなんだから』

そうすると紀佳が俺を指さしながら

紀佳『あんたも隠したって無駄なんだからねっ、池田 徹~!!』

『へっ? 急に矛先が俺?』

すると弘樹と俺を交互に見ながら

紀佳『3対3って言ったら他の2人の女の子にも気を遣うべきでしょ!違う?!』

そういうと箸で茶碗を鳴らす紀佳。

さらに続く紀佳の言葉。

紀佳『だけど、、、近田 翔太も~、井坂 弘樹も~、そして池田 徹も~、3人ともりえばっかり!!』

そういい終えるとテーブルにガバッと伏せてしまった。

でもその言葉にちょっとびっくりした顔で俺をみた弘樹。

弘樹『徹…お前もりえの事…』

かなり焦ったけど、、、紀佳は酔ってる!

ここは誤魔化さなきゃ!

『酔っ払いが言ってる事じゃん…弘樹、なに真に受けてんの?(^_^;)』

そう言った途端に、、、なぜか起き上がる紀佳。

紀佳『はぁ~、池田 徹、今何言ったぁ~!!』

『お、おまえ、潰れたんじゃなかったの?』

紀佳『井坂 弘樹~、私の言ってる事は事実だからねっ(ー_ー)! 
あんたも近田 翔太もりえばっかり見てるから気が付かないかもしれないけど、、、

この池田 徹もりえばっかり見てました!

私はちゃ~んとこの2つの目でしっかりみてました…
言い逃れなんてできないんだからねっ!!』

そういうと人差し指で俺の鼻をつつく紀佳。

そしてまたもやバタンッ。

これでほんとの撃沈だなっ(ーー;)





~ Hiroki side ~

紀佳の言葉に動揺が隠せない俺。

『紀佳が言ってた事…ほんとなのかっ?』

すると徹が大きな溜息を一つ。

徹『あいつ、余計なことを(-_-;)』

どうやら紀佳が言った事はほんとらしい。

でもどうして今まで俺に黙ってた?

『徹、俺、お前の気持ちに全然気づかなくて…』

徹『意外と隠せてたって思ったんだけどなっ(^_^;) 
まさか紀佳が気づいてたなんてなっ、俺もまだまだ甘いなっ…』

って苦笑いの徹。

『でも、どうして?どうして、今まで俺に黙ってたんだ。』

徹『確かに、紀佳が言った通り、俺もりえの事好きだよ。

でもお前ほどじゃない。

お前みたいに強い気持ちじゃなくて、ただりえの笑顔を見れるだけで満足。その程度だからさっ…』





~ Rie side ~

徹と別れてひとり帰り道・・・

頭の中は、弘樹と真希が別れたという事実でいっぱいで…

なぜ??

あんなに仲良しだったのに。

私のせい? いや徹は違うって言ってた・・・

でももやもやが取れない。

と、、、いう事はもう弘樹とは会えない?

だって、バイトでも会えない。 

真希の彼氏じゃないなら、真希を関してもあえない。

そして翔太には、俺だけを見てって・・・

さっきから考えてるのは、傷ついてるだろう真希の事じゃなくて、あえなくなってしまうかもって思う弘樹の事ばかり・・・

私ったら、どうしちゃったんだろう?

そんな時、翔太から着信。

翔太『りえ、今、どこ?』

『今、家に帰る途中…』私のトーンの低さに気づいた翔太が

翔太『元気ないねっ。具合でも悪いの?
久しぶりに時間が空いたから夕飯でも食べようって思ったんだけど…』

その言葉に胸の奥がチクッ。

こんなに優しい彼がいるのに、私ったら他の男性の事を考えてるなんて…

でも、こんな気持ちをかかえたまま、翔太にはあえない。

『ごめんねっ。なんだか少し頭が痛くて、帰って休もうと思ってるんだ。』

って・・・嘘をついてしまった。





~ Syouta side ~

挨拶にいってはや2週間。なんだかんだ忙しくて擦れ違いの日々。

もちろん毎日のメールや電話は欠かさずだけど・・・
やっぱりこの手でりえに触れたくて…

予定より早めに練習が終わったので、りえと食事でもと思い電話をかけてみたものの、具合が悪いと断られてしまった。

残念だけど家に帰るかなっ(-_-;)

その時、後ろから真希の声。

真希『翔太~、駅まで一緒に帰らない?』

『あっ、真希!女子も練習早めに終わったんだねっ。』

駅までの道…

真希が思いがけない事を口にした。

真希『翔太に報告があるんだ。
いずれは誰かの口から耳に入ると思うから言うけど、、、

私、、、弘樹と別れたの。

もしかして、弘樹から聞いてた?』

あまりの衝撃に

『へっ?』変な声が出でしまった。

真希『なんて声出してんの?へんなの(^_^;)』

『いや、意外だったから…でもどうして?あんなにうまくいってそうだったのに。』

真希『そうみえてた?』真希の言葉にうなづくと

真希『私って演技派かも(笑)』そう言って笑い、最後に一言。

真希『当事者じゃないとわからないこともあるのよ。』って寂しそうに笑った。

もしかして、別れようって弘樹から言い出したこと?





~Toru side ~

『やっぱっ、意識がない奴って重いなっ。』

あのまま酔いつぶれてしまった紀佳は何度揺り起こしても起きなかった。

仕方なく、俺と弘樹で家まで送り届ける羽目に…

弘樹『お前、紀佳の家、知ってるの?』

『あ~、最初の合コンだったあの日、こいつを送る担当、俺だったろっ。』

弘樹『そうだったなっ。あの日から始まったんだよなっ、俺と真希も…』

そういいながら俺の前を歩く弘樹。

その背中はなんだかやけに小さく見えて胸が締め付けられる思いが…

『弘樹、お前、後悔してんの?真希との事…』

弘樹『誰の事も傷つけたくないって思ってたんだけど、、、結局さぁ~俺、真希の事、傷つけたんだよなっ。』

そういいながら振り返る弘樹。

弘樹『俺って優柔不断で諦めの悪い…最低な奴だ。』

その顔を見た俺こそ後悔したんだ。

なんであの時、ちゃんと反対しなかったんだろうってなっ。





~ Hiroki side ~

紀佳を背負って歩く事、30分。

『そろそろ代わるかっ?』

徹『いや、いいよ。折角気持ちよく眠ってるのを起こすのもかわいそうだし…』って

『それって、罪滅ぼし?』

俺の言葉に?の徹が一瞬立ち止まり、

徹『俺がなんで紀佳に罪滅ぼししないといけないんだ?』

『紀佳の気持ちに気づいていながら、気づかないふりしてる、その罪滅ぼし(笑)』

すると納得の表情の徹

徹『気持ちに応える事が出来ないんだから、仕方ないだろっ。』って笑った。

さっき俺には、気持ちの強さか違うなんて言ってたけど、お前もりえに対する気持ちは強いんだよなっ。

弘樹『だなっ。それが一番正解なのかもなっ…』





~ Rie side ~

家に帰っても未だにもやもや続行中。

すると、部屋をノックする音が、

蒼『りえ、帰ってんのか?』

『うん。ちょっとだけ頭痛くて…』お兄ちゃんにまで嘘、ついちゃった。

蒼『大丈夫かっ?』お兄ちゃんが私のおでこに手を当てる。

蒼『熱はないみたいだけど、用心に越したことはないなっ。

いいか、今日はおとなしく寝てろよ。

俺、今日、バイト深夜勤だから夕飯はいらないし、明日もそのまま学校行くけど、どうしても辛くなったら電話するんだぞっ…』って…

お兄ちゃん、嘘ついてごめんなさい。


お兄ちゃんが出て行って5分程たった時、玄関のチャイムが…

『お兄ちゃん、何か忘れ物?』

てっきりお兄ちゃんだと思ってドアを開けると、そこに翔太の姿が

翔太『心配だったから、覗きに来た…』





~ Syouta side ~

真希と別れ、1人家路へ…

さっきから俺の頭を支配してるのは、弘樹と真希が別れたという事実。

真希は

真希『当事者じゃないとわからないこともあるのよ。』って言ってたけど、、、

本当の理由は何なんだろう?

あの表情からして、別れを切り出したのは真希じゃないって確信してる俺。

という事は、弘樹。

弘樹の心変わり?他に好きな人が出来たとか?

それって、もしかしてりえ?

いや、違う!

そんな思いの繰り返し。

気が付いたら、乗り過ごしていて、、、そこはなんとりえんちの最寄駅。

そこでふと思い立った。

1人でいるから余計なことを考えるんだと…

ここはりえに会って、心も体もリフレッシュだ。

そうだ!具合が悪いって言ってたりえにご飯でも作ってあげよう…





~ Rie side ~

ドアをあけたら翔太がいて、

翔太『心配だったから、覗きに来た…』って、スーパーの袋をひょいと上げる。

翔太『夕飯、まだだろっ? 俺、なにか作るから…』

今日は誰にも会いたくない気分だったんだけど、折角訪ねてくれた翔太をこのまま帰すわけにはいかない。

『ありがとう…上がって!』

翔太『お邪魔します。あれっ、お兄さんは?』

『お兄ちゃんはバイト。今日は深夜勤だって。』

翔太『そっかぁ~、食材3人分調達してきたんだけど…残念だなっ。』

そういうとキッチンにビニール袋を置いた。

私もキッチンに行って

『お茶入れるねっ…』っていいながら、翔太の後ろからマグカップに手を伸ばすと

突然、手を掴まれ、一瞬で翔太の腕の中に…

翔太『捕まえた。はぁ~、2瞬間ぶりの愛情補給~(*^^) 
会った瞬間からこうしたかったけど、お兄さんがいるかなって遠慮してた。』って…

そして優しい口づけ。

ほんとに私はしあわせだなぁ~… 

こんなも愛されてるんだもん。

そして心の中に芽生え始めたいけない気持ちにそっと蓋をした。





~ Syouta side ~

結局手際の悪い俺を見かねたりえがキッチンに…

『座ってなよ。あと少しで出来るからさっ…』

りえ『さっきからあと少しって言ってるけど、ちっとも出来上がらないだもん(笑)』

『ごめん、手際が悪くて…』

すると凹んだ俺の腕に猫みたいに絡みついてきて

りえ『そんなに凹まないでよ。翔太が来てくれたから私は元気になったの。

それにこうして2人してキッチンでお料理作るのって楽しくない?』

って、頬にキスをくれたんだ。





~ Rie side ~

やっと出来上がった料理…

翔太『まっ、初めてにしては上出来かなっ?』そういいながら笑う翔太。

幸せそうなその笑顔にほっとする私。

さっきはあんなに動揺して良からぬ事ばかり考えたのは、私もきっと翔太の愛情不足だったからだ。ってそう思う事にした。


夕飯を済ませたところで、2人してぴったり寄り添いながらDVD鑑賞。

普段は私から誘ったりしないのに、さっきまで考えていたいけない事を頭の中から全て消したくて、翔太の肩にもたれかかり、

『翔太…今日は帰らないでねっ』

その言葉にちょっとびっくりした表情の翔太。

翔太『どうしたの?』

『今日はず~っと翔太と一緒にいたいから。ダメだった?』

ダメだって言わないってわかってて、、、ずるい私。

翔太『そんな事ない。でもりえと一緒にいたら、その~、あの~、俺我慢出来ないかもだけど…それでもいいの?体調はもういいの?』

『体調が悪いのはもう治った。さっきそう言ったでしょ(*^^*)
私が体調悪かったのは、きっと翔太が足りなかったからだよ。
だから今日はずっとそばにいて、愛してほしいなっ』

そう言って誘うような大人のキスをした。





~Norika side ~

目覚めたら、そこは自分の部屋…

あれっ?私、、、どうやって帰ってきた?

食堂で弘樹と徹と3人で飲んだのまでは覚えてるんだけど…

そこから先の記憶が、、、ない(ーー;)

ヤバい?私、、、なんかやらかしてる?

とりあえず身の回りを確認。

するとベッドサイドに置いてある携帯にメール着信のランプが点滅してた。

送信者は徹。

『この酔っ払い!飲み過ぎもほどほどにしろよ。
次回は酔い潰れたら確実に置いて帰るからなっ(ーー;)

追伸、お前を背負って帰ったから、今日は微妙に筋肉痛。
次に会った時にはメシおごれよ(^^;;』

あ~っ、やっぱり失敗してたんだ(ーー;)

もう~、最悪(-_-;) 次に会う時、、、私、どんな顔してればいいんだろう?

バカなことは言ってないよねっ?

昔からずっと徹が好きだったのよ!とかわめいてないよね?

あ~、思い出せない自分が恨めしい(T_T)

でも一番後悔した事は・・・

徹に背負ってもらっていたその瞬間を何にも覚えてない事。

もう二度とそんな事はないんだから、、、
やっぱりちゃんと記憶にとどめておきたかったなっ。





~ Syouta side ~

目覚めると横には俺の腕枕でぐっすり眠ってるりえの顔…

空いている手でりえの髪を撫で、そっと口づける。


りえ、愛してる。俺達、これからも一緒にいようなっ。


その時、机の上に無造作に置かれたりえの携帯が勢いよく震えた。

りえ『う、う~んっ』その音に寝返りを打つりえ。

昨日遅かったから、もう少し寝かせてあげたくて、バイブが響かないクッションの上にりえの携帯を移動させようと手に取った瞬間…

ディスプレイに徹の名前。

もしかして、さっきのメールは徹から?

見るつもりはなかったのに、変にボタンが作動してメールが開封される。

『昨日はちゃんと家に帰り着いた?弘樹の事であんなに動揺するなんて思ってなかったからびっくりしたよ。でも何回も言ったように2人が別れた事と、この間の八丈の事は一切関係ないから、気にするなよっ。

追伸。俺でよければまた話聞くから、考えすぎて落ち込まないようになっ(*^^)v』

りえが弘樹と真希の事で動揺?

落ち込んで徹に相談?

一度に色んな情報が入ってきた頭は少し混乱してる。

その時、後ろからりえの声が

りえ『翔太~、もう起きちゃったの?』咄嗟に徹からのメールを削除。

りえに気づかれないようにクッションの上に…

『あ~、ちょっとトイレ。それよりまだ寝てなよ、7時だし。』

そういいながら眠そうな目でこっちを見ているりえの傍により肩を抱いた。

りえ『うん、じゃぁ~、あとちょっとだけ寝かせてねっ。』そういいながらベットに横になったりえ。

そんなりえを見ながら、咄嗟の自分の行動に戸惑っている俺がいた。





~Toru side ~

今まで誰に言う事も出来なかった気持ちを紀佳に見抜かれ、弘樹に打ち明ける事で俺の心はほんの少し軽くなっていた。

そして、こんな朝早くからメールしていいのかって思いながらも、やっぱりりえの昨日の動揺が気にかかり、メール。

そして最後に、りえに今一番聞きたい事を入力してみる。


『りえは弘樹の事が気になってるの?』


でも、送る寸前に思いとどまり、その言葉を全部消去。

俺、何をしようとしてるんだ?

りえに気づかせようとしてるのか?

自分の気持ちに気づかずに、いや気が付いていてわざと気づかないふりをしてるかもしれないりえの心に踏み込もうとしてる?

その時、俺の中に翔太に対する嫉妬の思いがあるんだと確信したんだ。


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