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【連載版】断罪の不死者〜転生した俺は最愛との約束を果たす為旅をする〜

ノベルバユーザー519900

初任務

 八月の猛暑――この時期になるとアルカナ王国の東側の国境沿いにある辺境の街、エリセンでは《収穫祭》と呼ばれているイベント事が行われる。


 通常、《収穫祭》とは、作物の無事の収穫を祝う祭祀行事の事を指す。しかし、この街にとっての《収穫祭》とは、ある食糧の大量収穫を行う行事であり、それが今回俺が受けたEランクの依頼に関係している。


 因みにギルドに貼られていた依頼用紙にはこう記されていた。


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 《緊急!》


 依頼難易度E――《収穫祭》開催!


 依頼内容――ホーンラビットの討伐――街に向かってくるホーンラビットの群れを討伐せよ!


 場所――エリセンの街


 報酬――ホーンラビット一匹につき銀貨二枚。


 《追記》パーティーで参加するのが望ましい。


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 ホーンラビットとは、額に鋭利な角を生やした普通の兎より、一回りか二回り程の大きさを誇る兎型の下位魔物。
 単体としては、そこまで強くない。何故なら奴等の行動パターンは単純で、角を武器にし相手に突進して来るだけなどだから。それさえ理解していれば子供でさえ単体を相手に出来るのだから。しかし奴等は、単独で行動する事はほぼ皆無であり、常に集団で行動するうえにウサギ特有の素早しさも有る事からゴブリンを相手するよりも厄介である。
 それ故に最底辺のFランクではなく、一つ上のEランクとして依頼される事が多い。


 一匹見つけたら三十匹いると思え!


 ホーンラビットの生態として一つ、繁殖期になると大群で移動をする習性がある。
 しかしホーンラビット全体がそういうわけではない。
 説明するとホーンラビットには生殖本能の強い個体とそうで無い個体がおり、一般的に前者の事をa種、後者の事をb種と読んでいる。
 a種は自身達の生息域を広げようとする意思を強く持っており、繁殖期になると新天地を求めて移動を始める。
 別段、この二種に遺伝子や体の構造的違いは無く、要は人間と同じで向上意欲のある者とそうで無い者と別れているだけに過ぎない。
兎に角、その意欲の高いα種が引き起こす大移動の事を世間からはホーンラビットの大行進と呼ばれているのだ。


 東西南北散り散りに移動をする中でエリセンの街側に向かって来るホーンラビットの群れを討伐する。
 それが今回の依頼内容である。


 では何故ホーンラビットを討伐する事がエリセンの街にとって《収穫祭》と呼ばれているのか。それは《収穫祭》で収穫する食糧と言うのがそのホーンラビットなのである。そう、何を隠そう、ホーンラビットの肉はとても美味しいのだ。


 実は記憶を取り戻す前、リリムと共に休日を過ごす際は必ずと言って良いほど街巡りと称して王都の街並みを楽しんでは、視界に入った料理店に立ち寄り、そこで出る料理を楽しんでいた。中でも、ホーンラビットを使った料理は今でも忘れられない。
 ミートパイのあのパイ生地に閉じ込められた肉とソースが絶妙に絡み合い、口の中に入れた瞬間、閉じ込められた肉汁が弾ける様な、なんとも例え難い美味さ。
 ホワイトシチューなんかは、適度な温度でゆっくり調理するお陰で肉がすっかり柔らかくなり、口に入れた瞬間、ほろほろと溶けていき、まるで飲み物の様であった。


 あぁ、想像するだけで口の中に唾液が溜まっていくのが分かる。


 勿論《収穫祭》と呼ばれる所以はそれだけじゃない。更にホーンラビットの角の部分は冒険者にとっての命綱である武器や防具の素材になるのだ。
 街を守るため狩る。結果、食糧と素材を手に入れる。正に一石二鳥である。


 ♢


 城壁に囲まれたエリセンの街を出ればそこに映るのは、舗装されていない土路。そして、まるで誰彼構わずと言った感じに堂々と生い茂る緑の大地。正にファンタジーな世界と言った感じだ。


 そして城壁を背にした視線の先には向かい合う様に森が存在している。この王国と帝国を繋ぐ森にこそ、ホーンラビットが生息しているのだ。


 因みに、俺たち以外にも十組程のパーティーがこの依頼――いや、《収穫祭》に参加している。
 これから魔物の大群が街に向かってくると言うのに皆が皆、特に警戒する事なく、むしろ余裕そうな態度でおり、中には腰を落ち着かせながら、ゲラゲラと談笑している者までいる。そのせいか、すっかり緊張感の無い空気が出来上がっていた。
 それは俺たちも例外では無く、面には出していないが、何処か遠足気分の様な感覚でいた。
 まぁ、それも仕方がないと言えば仕方がない事。なにせ相手が相手なのだから。


 そうして待つ事、十分。


「来たぞ!」


 ドドドドドとまるで大きな猛獣が走って来る様な大きな地響きが鳴り始めた。しかしやって来るのは猛獣などでは無く、ホーンラビットの群れ。その数ざっとみたところ五十は超えていた。


 《収穫祭》がいよいよ始まったのだ。
 とは言っても何か特別な事をする事はない。
 勢い良く突進して来るのを躱しては、首筋めがけて斬る――


 斬って――
 斬って――
 斬って――


 血吹雪を撒き散らしながら尚も、踊る様に斬る――


 斬って――
 斬って――
 斬って――


 ふとロッソ達の方に視線を向ければ、ヴェルデが《第一階位魔術》【パラライズ】でホーンラビットの動きを止め、その隙にアルジェンドがホーンラビットの額に向けて矢を放ち、ヴェルドゥラが槍で心臓を一突き、そしてロッソは剣で斬る――


 斬って――
 斬って――
 斬って――


 繰り返す事、一時間。
 気付けば群れの進行は終わっており、残ったのは死体の山々。


 こうして俺の初めての依頼は、何処か物足りなさを感じる程に呆気なく終わった。

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