【連載版】断罪の不死者〜転生した俺は最愛との約束を果たす為旅をする〜

ノベルバユーザー519900

出発

「おお!アルスじゃねぇか!」


 ターニャさんが何か言おうとしたところを遮って背後から聞き覚えのある声が掛かった。


 振り返るとそこにはロッソ達がいた。


「ロッソ達か、昨日ぶりだな」
「おはようアルス君!」
「おはよう」
「よう……」
「おはよう、皆」
「ん?そっちの嬢ちゃんはお前の連れか?」


 ヴェルデ、アルジェンド、ヴェルドゥラと順に挨拶を交わし終えると、続けてロッソが隣にいるリリムの存在に気付いてそう聞いてきた。


「あぁ、紹介するよ。彼女はリリム。まぁ、相棒みたいなものかな」
「リリムなのだ。宜しくなのだ!」
「おう!宜しくなリリムちゃん!俺はロッソだ!」
「はいはーい!次わたしね!ヴェルデだよ、宜しくねリリムちゃん!」
「アルジェンドよ、宜しく」
「ヴェルドゥラだ」
「ねぇねぇ、さっきアルス君が相棒って言ってたけどもしかしてリリムちゃんはアルス君の彼女さんなの?」


 リリム達が互いに自己紹介し終えるとヴェルデが興味本位からなのか、小指を突き立て恋人のサインを作ると、瞳を輝かせながら詰め寄る様にリリムにそう聞いてきた。


 それに対してリリムは「へぇ?」と少し間の抜けたような声をだだすと、顔をまるで夕焼けのように紅くし若干の動揺を見せながら隣にいる俺ですら聞き取れない程の小さな声で何やら呟きはじめた。
 その様子はまるで心ここにあらずと言った感じか。現にヴェルデが「お〜い、リリムちゃん?」と言いながらリリムの顔の前で手を振っているのに対して何も反応を示さない――という事でここは俺が代わりに答えよう。


「ははは、そんなじゃない――って痛っ!?」


 板の間に我に返ったリリムに脚を踏まれた。
 踏まれた程度と思うかもしれないがこれが意外と痛い。しかも彼女はいま着ているドレスに合わせるようにヒールを履いているから尚更痛い。
 どの程度のかと言うと脚の小指を角にぶつけた時の様なあの骨に直接響いてくる感じの痛みだ。
 どれだけ鍛えあげられた筋肉を持つ屈強な者でもあの痛みに勝てる事はないだろう……。


「いきなり何するだよリリム!?」
「ふんっ、別に何でもないのだ……」
「えぇ……」


 何が面白いのか、その様子を見ていたロッソ達が何故か「ほほぅ……」「へぇ……」と言った、何か理解した様な言葉を口にした次の瞬間には眼と口元を三日月の様にしながらニヤニヤし出した。
 その次の瞬間――


「あのぉっ!」
「「「「「「っ!?」」」」」」
「《四星剣》の皆さんは彼と知り合いなのですか?」


 最初の頃の何処か遠慮気味だった口調とは打って変わって、まるで自分の存在を忘れるなと言わんばかりの、少し怒りのこもった強い口調でターニャさん訪ねてきた。


 ロッソ達が来てまだ数分程度しか経過していないが、正直ターニャさんの存在が頭の片隅に追いやられていたのは黙っておこう。何せ言ったところで得しないし、何より彼女自身がそれに気付いたから声を挙げたのだから。


 まさか戦える程の筋肉を身に付けていないか弱な女性から、そんな強い声が出ると思わなかったのかロッソは一瞬驚き、そしてターニャさんの強い気迫に押されながらもなんとか声を出し応える。


「あ、あぁ、昨日報告の時に話した盗賊に襲われてる時に助けてくれたのがコイツだ」
「成る程、この方が貴方たちでも敵わなかった者達を一掃したと言う……」


 あれ?なんか雲行きが怪しくなってきたぞ?せっかく目立たないように変な役回りをしたと言うのに、なんかターニャさんの向ける視線が物珍しい物を見ているような視線になってるぞ?ここは話を逸らさないと……。


「そ、それより《四星剣》ってのは何だ?」
「あぁそれは俺たちのパーティー名だな」
「はい、彼ら《四星剣》は他の冒険者がDランクで行き詰まる中、齢二十にしてCランクにまで登り詰めた実力者パーティーであり、新人冒険者の憧れ的存在なんですよ」


 ロッソが俺の問いに答えると、続けてターニャさんが頷きながら話を続けた。


「へぇー、意外と有名なんだな」
「まぁ、こっちには依頼でちょくちょく来てたしな。隣国程度には名を知られてるって事だ。でもまぁ《栄光の七人》と比べたらその程度だけどな」
「何それ仮面ラ○ダーかな?」
「は?仮面ラ○ダー?なんだそれ?」


 おっと、つい聞き覚えのある言葉に反応してしまった。実は結構好きなんだよね、仮面ラ○ダー。
 勇者としてこの世界に召喚される前よく観てたなぁ。まだシリーズ続いてるのかな……。


「俺の故郷の言葉で正義の味方って意味だよ――それよりその《栄光の七人》ってのは?」
「あぁ、それは――」
「はいはい私知ってるよ!確か七人組のパーティーで、登録してから僅か二年足らずで一人はSランクに昇格して他の子もAランクBランクに昇格した凄い人達なんだよ!そう言う事から正式なパーティー名とは別に冒険者内では期待の意味を込めて《栄光の七人》って呼ばれてるんだよ!しかもしかもまだ学生さんなんだよね!」


 俺の質問に対してロッソが答えようとしたところをヴェルデが割って入ってくる様に答えた。


「はい、は我がギルドが誇る期待の冒険者です」
「へぇ、凄いなぁ」
「あぁ……ただな、俺も一度遠目から見た程度だが、何というか彼女たち、何かに対して焦っている様な何処か生き急いでいる様な、そんな感じがしたんだよなぁ」


 まぁ、誰でも一つや二つ何か抱えてるものがあるからな。どんな人達かは知らないが、もしその話が本当だとしたら無事解決することを他人ながらも祈っておこう。
 しかしそんな事より、一度見た程度でそこまで分かってしまうロッソの観察眼の鋭さに思わず感心してしまう。
 きっとそれがロッソ達をCランク冒険者へと成り上がった助けになった一つなのだろう。


「――おっと話に夢中になり過ぎて邪魔しちまったな。アルスは何か用があってここに来たんじゃないのか?」
「そうだった、実は――」


 俺はロッソ達にこの後、帝国へ向かう事、その道中で何か依頼を受けられないかと考えていた事などと言ったこれまでの経緯を話した。
 するとどうやらロッソ達もこれから帝国へ帰るらしく、ならばと言う事で一緒に向かう事になった。
 正直言って帝国までの道のりなど余り詳しく無かったから、これまで何度も帝国と王国を行き来して来た彼らと同行出来るのはありがたい事だ。それに加えて彼らが居るおかげで一つ上のEランクの依頼を受ける事が出来た。


 そうと決まればいつまでもギルドにいる必要は無くなったので最後にターニャさんに礼を言ってから、俺たちは冒険者ギルドを後にした。




















 ♢♢♢♢♢






 ロッソ達との同行が決まった事で彼らが用意した馬車へと向かう。


 馬車が停めてあった場所はギルドから役十分程歩いた、昨日俺たちが泊まっていた宿とは違う大きな宿にあり、リリムやロッソ達と会話に興じながら歩いていたらあっという間に着いた。


 荷台の中へ入ろうとする前に一つ、ここまで来る間に出来た些細な疑問の答えを求める為にロッソに訪ねた。


「そう言えばロッソ達はギルドに何か用があったんじゃないのか?」


 そう――実は彼ら、ギルドに顔を出したはいいものの、何か依頼を受けに来たかと思えば、俺たちと話す以外、特に何もせずに共にギルドを後にしたのだ。


「いや、ギルドに用があったと言うよりお前に用があったんだアルス」
「俺に……?」
「あぁ、だからギルドに行けば会えるんじゃないかと思ってな。でもまさか今日この日までギルドに登録すらしてないとは思はなかったぜ。マジで運が良かったわ!あははは!」
「成る程……で?俺に用ってのは?」
「おっと、そうだった。アルスこれ受け取ってくれよ」


 そう言って小袋を渡してきた。


 小袋の中には銀貨が十枚ほど入っていた。


「これは?」
「あの時助けて貰った例だ。他の奴とも話し合って、報酬の一割程度をお前に渡す事にしたんだ」
「マジか!ありがとう!」
「……」
「な、なんだよ」
「いや、渡したのはこっちだから別にいいんだけどね。でもこういうのってもっと遠慮とかするもんじゃないか?」
「は?何故遠慮する必要があるんだ?くれるって言うなら貰うだろ普通」
「そうなんだけど……まぁいいや。それより乗るぞ」
「あぁ、分かった」


 何故か知らないがロッソは眉を潜めて何処か納得し難い様な微妙そうな顔をしながら荷台へと乗り込んだ。
 俺もそれに続く様に荷台へ乗り込むとそれを確認したヴェルデが御者を担当するヴェルドゥラに合図を送った事で馬車いよいよヴァルシャ帝国へ向けて動き出すのだった。


 その道中、小一時間ほど先の件でリリムから正座&お叱りを受けたのはもはや言うまでもない……。




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 ディーティアの観察日記


 アルカナ王国を出れば、数々の出会いが待っているでしょう。そしてその出会いの数だけ別れがあります。
 しかしそれは悲しい事ではありません。何故ならその別れは決して、「さよなら」を意味するのでは無く「またね」という再会の約束であるから。
 そう、私と彼のように――。


 それが旅というものなのです。


 すでに運命の歯車は動き始めました。


 願わくば彼の旅に幸あらんことを――。




 とまぁ、久しぶりの日記で少し筆が載ってしまい、意味ありげなことを書いてしまいましたが結局何が言いたいのかというと、頑張れって事ですはい。


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