【連載版】断罪の不死者〜転生した俺は最愛との約束を果たす為旅をする〜
帰省②
♢アルス家  リーザ
アルスから定期的に受け取っていた手紙での連絡が、入学してから四ヶ月経った頃にばったりと止んだ。
最初は四ヶ月なんて入学したばかりと相違ないから、学園での生活が新しい事ばかりで忙しいからだと思っていて、生活が慣れて来た頃にはまた手紙を送ってくれるだろうと思っていたが、やはりそれ以降一切連絡が来る事はなかった。
どうしたのだろうか。もしかしてアルスの身に何かあったのではないか?そう心配していた頃に届いた学園から連絡。
――アルスが迷宮で行方不明になった――
行方不明などと私たちを気遣ってか随分柔らかく言っていたが、それがどう言う意味なのか冒険者でない私でも理解できる。
それは、冒険者として活躍していた旦那であるザックさんも同じく理解していた。
私は受け入れたくない現実に目の前が真っ暗になった。
♢
それから二年が経過した。
聞いた話では、アルスの行方を捜している捜査隊もこれ以上捜しても見つかる見込みがないと判断したのか、捜査を打ち切るとのことだった。
それでも私の心が折れずにいられるのは、エリナちゃんのお陰だ。
それは二年前の夏の日のことだった。
学園が夏季休暇に入った事で、帰省してきたエリナちゃんが私たちのもとに来てこう言ったのだ。
「叔母さん、叔父さん。私はこの目で確かめるまで諦めないよ」
はたしてエリナちゃんが諦めていないのに、家族である私たちが諦めて良いのか?
答えは否である。
今思えばエリナちゃんのその一言は、私たちの心の支えになって居たのかも知れない。
しかしながら、私に出来ることは両手を握り、アルスの無事を祈ることだけ。
本当は今すぐにでも迷宮へ向かってアルスを捜したいが、戦闘の経験の無い私が行けば悲しい報告が増えるだけだ。この時ばかりは、自分が戦う力を身に付けていない事を悔み、その道を選んだ過去の自分を恨んだ。
「リーザ今日はもう寝たらどうだ?あまりアルスの事で根詰めるのは良くない」
ザックさんが放ったその一言は、自分の息子に対してあまりにも冷たい一言だけど、それが本心ではない事は今のザックさんを見ていれば分かる。
学園からの報告を聞いて以来、ザックさんの身体は日に日に痩せ細くなっていった。屈強な筋肉も今ではすっかり落ちてしまい、髪の毛も白髪が増えはっきりと見えるほどまでになっている。
そうなってしまうほどにザックさんもまた、アルスの事を強く想っているのだ。
だから私が言えるのは――
「貴方こそ」
その一言に尽きる。
それは、互いが互いを気遣い心の傷を舐め合うだけの会話。
しかしその会話が日常会話となってしまっている。
もういっそアルスの事を諦めてしまえば、どれだけ楽だろうか。それでも諦めきれないのは、エリナちゃんがまだ諦めていないからなのだろうか。いや、違う。きっと自分がアルスの母親だからだろう。
捜査隊の人達は見つかる見込みは無いと諦めた。二年も経って見つからないとなればそう思うのは自然な事だろう。それでも私は、アルスの事を強く思えば思う程、どれだけ可能性が低くとも生存を信じて諦める事が出来ないのだ。
でもそれがきっと親と言う生き物なのだろう。
「はぁ……」
思わず溜息を吐いてしまった。
ザックさんの言うように今日は、もう休んだほうがいいかもしれない――そう思い、席を立とうしたその時である――。
――コンコン――
玄関のドアからノックをする音がした。
こんな夜遅くに一体誰だ?少し非常識ではないか?
しかし何故だろう――その音を聞いた瞬間、二年前に学園からの連絡を聞いて以来、凍り付いていた自分の心が、まるで熱を帯びた鉄かの様にじわじわと熱を放ちながら、ドクンドクンと激しく鼓動を打ち始めた。
早く行けと心が叫んでいる。
ふと気付けば私は玄関前にいた。
脈打つ鼓動を抑えながらドアを開けるとそこに居たのは――
「アルスっ――!!」
記憶にあるよりも身長が高くなり、髪も肩辺りまで伸びており、ましてや家を出る時には着ていなかった黒いトレンチコートの様な物を身に付けていて、随分見た目が変わってしまっているが、そこに居るのは間違い無く私の息子だった。
アルスから定期的に受け取っていた手紙での連絡が、入学してから四ヶ月経った頃にばったりと止んだ。
最初は四ヶ月なんて入学したばかりと相違ないから、学園での生活が新しい事ばかりで忙しいからだと思っていて、生活が慣れて来た頃にはまた手紙を送ってくれるだろうと思っていたが、やはりそれ以降一切連絡が来る事はなかった。
どうしたのだろうか。もしかしてアルスの身に何かあったのではないか?そう心配していた頃に届いた学園から連絡。
――アルスが迷宮で行方不明になった――
行方不明などと私たちを気遣ってか随分柔らかく言っていたが、それがどう言う意味なのか冒険者でない私でも理解できる。
それは、冒険者として活躍していた旦那であるザックさんも同じく理解していた。
私は受け入れたくない現実に目の前が真っ暗になった。
♢
それから二年が経過した。
聞いた話では、アルスの行方を捜している捜査隊もこれ以上捜しても見つかる見込みがないと判断したのか、捜査を打ち切るとのことだった。
それでも私の心が折れずにいられるのは、エリナちゃんのお陰だ。
それは二年前の夏の日のことだった。
学園が夏季休暇に入った事で、帰省してきたエリナちゃんが私たちのもとに来てこう言ったのだ。
「叔母さん、叔父さん。私はこの目で確かめるまで諦めないよ」
はたしてエリナちゃんが諦めていないのに、家族である私たちが諦めて良いのか?
答えは否である。
今思えばエリナちゃんのその一言は、私たちの心の支えになって居たのかも知れない。
しかしながら、私に出来ることは両手を握り、アルスの無事を祈ることだけ。
本当は今すぐにでも迷宮へ向かってアルスを捜したいが、戦闘の経験の無い私が行けば悲しい報告が増えるだけだ。この時ばかりは、自分が戦う力を身に付けていない事を悔み、その道を選んだ過去の自分を恨んだ。
「リーザ今日はもう寝たらどうだ?あまりアルスの事で根詰めるのは良くない」
ザックさんが放ったその一言は、自分の息子に対してあまりにも冷たい一言だけど、それが本心ではない事は今のザックさんを見ていれば分かる。
学園からの報告を聞いて以来、ザックさんの身体は日に日に痩せ細くなっていった。屈強な筋肉も今ではすっかり落ちてしまい、髪の毛も白髪が増えはっきりと見えるほどまでになっている。
そうなってしまうほどにザックさんもまた、アルスの事を強く想っているのだ。
だから私が言えるのは――
「貴方こそ」
その一言に尽きる。
それは、互いが互いを気遣い心の傷を舐め合うだけの会話。
しかしその会話が日常会話となってしまっている。
もういっそアルスの事を諦めてしまえば、どれだけ楽だろうか。それでも諦めきれないのは、エリナちゃんがまだ諦めていないからなのだろうか。いや、違う。きっと自分がアルスの母親だからだろう。
捜査隊の人達は見つかる見込みは無いと諦めた。二年も経って見つからないとなればそう思うのは自然な事だろう。それでも私は、アルスの事を強く思えば思う程、どれだけ可能性が低くとも生存を信じて諦める事が出来ないのだ。
でもそれがきっと親と言う生き物なのだろう。
「はぁ……」
思わず溜息を吐いてしまった。
ザックさんの言うように今日は、もう休んだほうがいいかもしれない――そう思い、席を立とうしたその時である――。
――コンコン――
玄関のドアからノックをする音がした。
こんな夜遅くに一体誰だ?少し非常識ではないか?
しかし何故だろう――その音を聞いた瞬間、二年前に学園からの連絡を聞いて以来、凍り付いていた自分の心が、まるで熱を帯びた鉄かの様にじわじわと熱を放ちながら、ドクンドクンと激しく鼓動を打ち始めた。
早く行けと心が叫んでいる。
ふと気付けば私は玄関前にいた。
脈打つ鼓動を抑えながらドアを開けるとそこに居たのは――
「アルスっ――!!」
記憶にあるよりも身長が高くなり、髪も肩辺りまで伸びており、ましてや家を出る時には着ていなかった黒いトレンチコートの様な物を身に付けていて、随分見た目が変わってしまっているが、そこに居るのは間違い無く私の息子だった。
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