【連載版】断罪の不死者〜転生した俺は最愛との約束を果たす為旅をする〜

ノベルバユーザー519900

VS 百階層④

 五体満足のカオスネグロを見ていると、まるでここまでの俺たちの攻撃が無意味かのように感じてしまい、思わず溜息が漏れてしまう。


「追い詰めたと思ったのに仕切り直しかよ……」


 先程俺が放った《第三階位魔術》【ホーリーブラスト】でカオスネグロの周囲に撒き散らされていた俺の血は、すっかり蒸発してしまい、仕掛けた《空絶》による罠もその光線に巻き込まれて全て無くなってしまった。その状況がまた仕切り直しになってしまったことを物語っている様に感じた。


「これはかなり長期戦になりそうだな……」














 それから更に数時間が経過した。予想通りヨルムンガンドとの戦いは長期戦となり、互いに攻防の繰り返しをしていた。
 数時間も戦えば、カオスネグロの攻撃は見慣れてしまうもので、躱すのも対応するのも容易にできるようになった。しかし、かと言ってこちらの攻撃もすでに種を明かしてしまい、カオスネグロに対応されて、両者決まらず仕舞いでいた。


 だが、優位に立っているのはこちらの方だった。――というのも、時間が経つにつれて、カオスネグロの再生能力が劣っていき、遂には再生しなくなったからだ。
 どうしたのかと【技能】《観察眼》でカオスネグロのステータスを覗いてみると――






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 カオスネグロ(魔物) Lv150


  【体力】3685/ 15693


  【魔力】146/ 13582




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 再生しなくなったおかげで【体力】がそれなりに減っていたが、注目すべきはそこじゃなくて【魔力】の方だ。
 5桁もあった【魔力】が今では3桁までに減っていた。
 恐らくだがカオスネグロは戦闘慣れしていない。いや、それどころか戦うことすら初めてのはずだ。何せ現在の迷宮最高突破階層は二十五階層。それはつまり俺たちを除いて一人もこの百階層には辿り着いていないという事になる。故に今回が初戦となる筈。
 そしてそれ故に、前半に畳み掛けてしまい、魔力配分を見誤ったのだろう。並の人間なら確かにそれで片付いていただろう。けど俺はその常識から外れた不老不死者だ。結果カオスネグロは【魔力】が殆ど無い状態になってしまった。
 そして、そのせいかカオスネグロの動きには少し疲れのようなものが伺えた。
 それに対し、俺の方は、例え【体力】と【魔力】が著しく減っていたとしても、自決して《不老不死》の効果で蘇りさえすればリセットされるさから問題はない。当然そんな事を繰り返せば精神的疲労は募るばかりになるがそれは相手も同じ事。それにこっちにはリリムも居て2対1だ。ならば、こちらの方が有利になるのは明らかだ。
 勿論それが絶対という保証はどこにも無い、だから仕留めるなら今が好機――。


 「《執行者となる我が命じる/聖なる光よ/敵を討ち滅ぼせ》!」


 やる事は最初と同じで【技能】《空絶》でカオスネグロの周囲に斬撃を配置し更に、リリムの《血液操作》でカオスネグロの動きを止め、その隙に《第三階位魔術》【ホーリーブラスト】を再び放つ。


 「これで…終わりダァ――!!」


 放たれた聖なる光の光線は、カオスネグロを一瞬で巻き込み、そのまま壁に向かって衝突する。すると数刻前同様にドゴーンと壁が破壊されたかの様な大きな轟音と振動と共に、舞い上がる土煙りによって再び視界が遮られた。


 煙が止み、視界が晴れるとそこには、ふらつきながらも二本の脚でしっかり立っているカオスネグロがいた。


 (マジかよ……これでもまだくたばらないのかよ!)


 そう思った次の瞬間――。


 カオスネグロが手に持っていた二本の黒剣を手放し、カランカランとまるでこの場には似つかわないそんな陽気な音を出して地面に落ちた。そしてそれが合図かの様に、兜の隙間から見える鋭い紅い眼光が光を失うと、まるで機械ロボットが動きを止めたかの様にその場に崩れ落ちた。




 それから数分経つもカオスネグロが動く事は二度と無かった。つまり――


 「……やったのだ……?」
 「あ、ああ……」


 なんとも微妙な終わり方だが、とにかく――


 「俺たちの勝ちだ……」








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 〜ディーティアの観察日記〜 


 やった!やりました!やりましたよ!遂に私の彼が百階層を攻略しました!
 あ〜どうしましょう、まるで私のことの様に嬉しく思います!そう、私のこの気持ちは応援していたチームが優勝した時の様です!
 気付けば、ポップコーンを三杯もお代わりしてしまいました。今夜の夜ご飯は控えておきましょう。でないと太ってしまいそうです。……あ、別に今が太っているわけではありませんよ!えぇなにせ私は女神なのですから、そんな事はあり得ません!


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