【連載版】断罪の不死者〜転生した俺は最愛との約束を果たす為旅をする〜

ノベルバユーザー519900

VS 百階層 ②

 アルス×∞   -7




 俺たちがカオスネグロと戦い始めてから約一時間は、経過した。
 その間に俺は、七回は死んだ。


 一回目は、《瞬歩》を数回使用して、間合いに入り込み、そのまま《瞬歩》により生じた勢いを利用して背後に回り込んで、カオスネグロの首筋目掛けて斬り伏せようとした所、カオスネグロは振り向く事なく、右手に持つ黒剣でそれを受け止め、左手に持つ黒剣で横薙ぎに一閃されて、身体が二つに別れて死んだ。


 二回目は、カオスネグロの隙のみえない、まるで手に持つ二本の黒剣と舞い踊っているかの様な見事な剣さばきに翻弄されて、なすすべなく死んだ。
 もしも敵対関係でさえ無ければ、教えを請いたいとさえ思った。


 三回目は、再び接近戦を持ちかけようと《瞬歩》でカオスネグロの間合いに入って攻撃を仕掛けようとしたら躱されて、そのまま背後に回り込まれた後、《瞬歩》によって生じた勢いを利用され、足蹴りで壁に向かって吹き飛ばされた。そして壁に衝突した俺に向かってカオスネグロの黒剣が背中から突き刺さり死んだ。


 四回目は、三回の死の経験により、接近戦では敵わないと学んだ俺は、カオスネグロとの距離を取りながら魔術や技能を駆使しながら応戦していたところ、俺の遠距離からのちまちました攻撃に痺れを切らしたのか奴は、まるで俺の《瞬歩》の様に一瞬で間合いを詰めてきて、二回目の死同様に奴の剣さばきに翻弄され死んだ。


 五回目は、近接戦も遠距離も駄目……ならば空中ならばどうだと安易な考えで《空歩》で上空へと駆け上がるも、カオスネグロが手に持つ二本の黒剣が禍々しく光を放つと思えば次の瞬間には、俺の《飛剣》を遥かに上回る十字の斬撃が襲い掛かり死んだ。


 六回目は、カオスネグロが放つ、避ける事が不可能な広範囲魔術を打ち消そうとすべく、魔術と技能で応戦するも、奴の魔術を打ち消すほどの威力は出ず、そのまま奴の魔術に呑まれ死んだ。


 そして最後の七回目は……石に躓いてかけたところを好機と見られ、リリムの援護も間に合わず、トドメを刺されて情けなく死んだ……。


 ……もちろんただ七回も無抵抗に殺されるつもりはなく、俺はある仕掛けの準備をした。そして八回目の死が訪れる前にその準備は整ったのだった。


 辺り一帯には、俺が噴き出した大量の血。


 リリムが新たに取得した【技能】《血の契約》――。それはリリム自身の血だけでなく、召喚者である俺の血も操る事が出来る【技能】。つまり、今辺り一帯に飛び散ってる俺の血を操れる訳で――


 「リリム!」
 「うむ!《血液操作》―――!」


 奴の足下にある俺の血が棘状に変化してカオスネグロに襲い掛かる。カオスネグロはそれを後ろへ回避するが――


 「――!?」


 今度は背後から何かが爆ぜてカオスネグロの背中を襲った。
 ――そう、俺が仕掛けたのは、辺り一帯に撒き散らされた自身の血だけではない。俺はカオスネグロの相手をしながら、【技能】《空絶》で奴の周囲の至る所に斬撃を設置していたのだ。そして今のは、そのうちの一つに掛かり、カオスネグロに攻撃したという事になる。


 地面からは、俺の血が襲い掛かり、空中からは、俺の斬撃がカオスネグロを襲う。つまり今の奴には逃げ場が無いという事だ。
 そして――


 「《執行者となる我が命じる/聖なる光よ/敵を討ち滅ぼせ》!」


 「――!?」


 カオスネグロがリリムの《血液操作》と俺の《空絶》で配置された斬撃に翻弄されている隙に追い討ちをかけるべく攻撃を仕掛ける。――《第三階位魔術》【ホーリーブラスト】を詠唱省略して唱えると、出現した魔法陣から一筋の聖なる光が放たれた。そしてその聖なる光は、勢いを止める事なく超速でカオスネグロへと向かい、あっという間に奴を巻き込んで、そのまま壁にまで届いた次の瞬間――ドゴーンと壁が破壊されたかの様な大きな騒音と振動と共に、視界が悪くなる程の煙が舞い上がった。








 やがて煙が治り視界が晴れると其処に居たのは、身に纏っている漆黒の鎧がボロボロになり、全身の至る所から出血しながらも二本の脚で地面を踏みしめて、それでも立つのがやっとかの様な状態のカオスネグロだった。



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