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神様、別にアンタにゃ何も望むまい。でもどうか、煙草くらいは、吸わせてくれよ。

椋畏泪

自尊心の許す方。

 ひとまず、財布を取り出して中身を確認した。札はやはり無く、小銭入れの方から百円玉二枚と十円玉三枚、そして一円玉が二枚と、なんとも微妙な金額であった。

 これでは、十本入りのホープを買おうにもやや足りない。今後の精神安定の意味を込めて、二十本入りの安煙草を買っておくためには、やはり三百円程度は欲しいところである。

 金の当てなんて、はなから無い。自分でなんとかする他なく、そのためにどうすれば最善なのか、考える。

「シケモクはしたくねぇなぁ……」

 コンビニなどの灰皿の近くに行けば、まだ吸えそうな吸い殻が落ちているだろう。しかし、それを拾い上げて吸うことは、俺自身のプライドが許さなかった。

「仕方ない……」

 と、独り言をつき、俺は立ち上がって上着を羽織った。百円ライターと、小銭入れをポケットにねじ込んで、出かける準備を整える。

「ちょっくら出かけて三百円、見つかるかなぁ……」

 そうして俺は、この休日を使って町中から小銭を拾い集めることに決めた。なんともみっともない行動であるが、不思議とシケモクよりは圧倒的にプライドを損ねずに済そうに直感できていた。

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