ブラック企業戦士、異世界で救国の勇者になる
メダル
「じゃあまた明日。」
「あ、その前にちょっとお待ちください。」
ルノアはそう言ってメダルを持っていた俺の手を取り、メダルに手をかざした。
「水と銀はその姿を映し
ヨンデライトは素を映す
映すは移す
其を持つ者を映す
其を持つ者の素を移すもの也」
ルノアの言葉に呼応してメダルが紫色に輝き、一瞬熱を帯びた。
光はあっという間に消え、熱もすぐになくなっていった。
「い、今のは一体……?」
「これでこのメダルは仁志様の物となりました。
他の者がこのメダルを使う事は出来ません。」
なるほど、今のは魔術による個人認証みたいなものだろうか。
どういう風に使うのかは分からないが魔術にはこういう使い方もあるのか。
「……それでは、お休みなさいませ。」
「ああ、お休み。」
俺はルノアに挨拶をして食事をしていた主賓室から部屋に戻り、ベッドに寝転がった。
貰ったメダルを手で弄びながらさっきのルノアの言葉と表情を思い出す。
「くそっ、俺にはどうしようもないだろ!」
そう一人呟いて寝返りを打った。
この国が危険な状態にある、それは事実だろう。
そしてそのために俺が呼ばれた、これも事実だ。
しかし、俺に何が出来るのか、当人の俺にもよく分かっていないしこの世界で俺に出来る事があるとも思えない、それも事実だ。
動きようのない事実が俺の周りに立ちふさがり、俺の身動きを出来なくしている。
部屋の明かりにメダルをかざすとメダルがキラキラと虹色の光を放った。
「ここまでしてもらって、何もしないというのもなあ……」
せめてルノアの為だけでも何か役に立ちたい、そんな思いが漫然と俺の頭に持ち上がってきていた。
「失礼します。」
その時、ノックの音と共に扉越しかに声がした。
ニッキーの声だ。
扉を開けるとタオルを持ったニッキーが立っていた。
「お風呂の準備が整いましたのでどうぞ。」
そう言って部屋の中にある扉を促してきた。
俺の居候している部屋には壁の一面に扉があり、中にはトイレとバスタブが置いてある。
ちなみにその部屋も廊下側に扉があって普段は鍵がかかっているが侍女は鍵を持っているために自由に入る事が出来る。
「ああ、ありがとう。」
俺がそう言ってもニッキーは出ていく様子がない。
「えっと、他に何か用?」
「早く服を脱いでください。」
「いやいや、君がいちゃ脱げないでしょ。」
「しかし脱がないと体を洗えません。」
「いやいやいやいや。」
最初は冗談だと思ったが、ニッキーは引く様子がない。
元々表情が伺えにくい目をしてはいるのだが、どうやら冗談ではないっぽいぞ。
「裸を見られるのに抵抗があるというのならご心配は無用です。
仁志様が召喚された際に既に見ておりますので。」
「そういう問題じゃないから!」
俺はニッキーからタオルをひったくり、風呂場に駆け込んだ。
どうやら本当に入浴の介助をするつもりだったらしい。
この世界のしきたりはよくわからん。
風呂場に入ると湯船には既にお湯が張ってあった。
とりあえず汗を流してさっぱりしようとズボンとパンツを下した所で廊下側の扉が開いた。
「替えの服はこちらの棚に置いてあります。
来ていた服とタオルは下の籠に入れておいてください。」
表情も変えずにニッキーはそう言って再び扉を閉めた。
「つ、疲れる…」
俺はへなへなと服を脱ぎ、湯船に体を沈めた。
この世界に来てから今日で二日目、今日も色んなことがあった。
ブレンダンに殺されないためにも一カ月の間にこの世界で生きる術を見つけなくてはいけない。
しかし、そんな事情とは裏腹に俺の頭の中には何かルノアの手助けができないだろうかという思いもあった。
今の俺には加速と超感覚の能力があるから一カ月必死で戦い方を学べば戦争になった時に多少の役に立てるかもしれない。
しかし俺に戦争が出来るのかという前提としての問題もある。
だが同時に今の俺には加速と超感覚位しか取り柄が無いのも事実だ。
どうすれば俺にルノアの役に立てるのか……
いや、ルノアの役に立つとか立たないとかの前に今後どうするのか、そっちの方が先だろ。
などととりとめもなく考えてるうちにうつらうつらしてきた。
時間はまだ九時位だと思うのだが夜になるとやる事がないせいか眠くなってきた。
そろそろ寝るかとバスタブから立ち上がり、ふと思い立ってお湯が入ったバスタブを持ち上げてみた。
流石に無理だろうと思ったがバスタブはなんなく持ち上がった。
えーと、一立方メートルの水の重量が確か一トンで、このバスタブのサイズが大体長さ百八十センチの幅百センチで水の深さが六十センチ位だから……
「ハハ……ハハハ……」
まさか、一トンまで持ち上げられるとはね。
これはもう人間の筋肉に出来る事じゃない。
風呂から上がった俺は寝巻に着替えてベッドに倒れ込んだ。
昨日の事もあるので一応扉と窓はには鍵をかけてある。
今日も色んなことがあった。
どうやら俺の能力は俺の想像している以上らしい。
これはかなり気を付けないといけないようだ。
ルノアもそれを分かっていたが今まで以上に秘密にする必要があるみたいだ。
今日、俺をずっと見ていた視線も気になる。
あれはブレンダンではなかったみたいだが、だとしたら誰なんだ?
ブレンダンの部下かもしれないが今はまだ分からない。
とりあえず明日は森に行ってもう少し加速の力を試してみよう。
そんな事を思いつつ、知らない間に俺は眠りに落ちていった。
「あ、その前にちょっとお待ちください。」
ルノアはそう言ってメダルを持っていた俺の手を取り、メダルに手をかざした。
「水と銀はその姿を映し
ヨンデライトは素を映す
映すは移す
其を持つ者を映す
其を持つ者の素を移すもの也」
ルノアの言葉に呼応してメダルが紫色に輝き、一瞬熱を帯びた。
光はあっという間に消え、熱もすぐになくなっていった。
「い、今のは一体……?」
「これでこのメダルは仁志様の物となりました。
他の者がこのメダルを使う事は出来ません。」
なるほど、今のは魔術による個人認証みたいなものだろうか。
どういう風に使うのかは分からないが魔術にはこういう使い方もあるのか。
「……それでは、お休みなさいませ。」
「ああ、お休み。」
俺はルノアに挨拶をして食事をしていた主賓室から部屋に戻り、ベッドに寝転がった。
貰ったメダルを手で弄びながらさっきのルノアの言葉と表情を思い出す。
「くそっ、俺にはどうしようもないだろ!」
そう一人呟いて寝返りを打った。
この国が危険な状態にある、それは事実だろう。
そしてそのために俺が呼ばれた、これも事実だ。
しかし、俺に何が出来るのか、当人の俺にもよく分かっていないしこの世界で俺に出来る事があるとも思えない、それも事実だ。
動きようのない事実が俺の周りに立ちふさがり、俺の身動きを出来なくしている。
部屋の明かりにメダルをかざすとメダルがキラキラと虹色の光を放った。
「ここまでしてもらって、何もしないというのもなあ……」
せめてルノアの為だけでも何か役に立ちたい、そんな思いが漫然と俺の頭に持ち上がってきていた。
「失礼します。」
その時、ノックの音と共に扉越しかに声がした。
ニッキーの声だ。
扉を開けるとタオルを持ったニッキーが立っていた。
「お風呂の準備が整いましたのでどうぞ。」
そう言って部屋の中にある扉を促してきた。
俺の居候している部屋には壁の一面に扉があり、中にはトイレとバスタブが置いてある。
ちなみにその部屋も廊下側に扉があって普段は鍵がかかっているが侍女は鍵を持っているために自由に入る事が出来る。
「ああ、ありがとう。」
俺がそう言ってもニッキーは出ていく様子がない。
「えっと、他に何か用?」
「早く服を脱いでください。」
「いやいや、君がいちゃ脱げないでしょ。」
「しかし脱がないと体を洗えません。」
「いやいやいやいや。」
最初は冗談だと思ったが、ニッキーは引く様子がない。
元々表情が伺えにくい目をしてはいるのだが、どうやら冗談ではないっぽいぞ。
「裸を見られるのに抵抗があるというのならご心配は無用です。
仁志様が召喚された際に既に見ておりますので。」
「そういう問題じゃないから!」
俺はニッキーからタオルをひったくり、風呂場に駆け込んだ。
どうやら本当に入浴の介助をするつもりだったらしい。
この世界のしきたりはよくわからん。
風呂場に入ると湯船には既にお湯が張ってあった。
とりあえず汗を流してさっぱりしようとズボンとパンツを下した所で廊下側の扉が開いた。
「替えの服はこちらの棚に置いてあります。
来ていた服とタオルは下の籠に入れておいてください。」
表情も変えずにニッキーはそう言って再び扉を閉めた。
「つ、疲れる…」
俺はへなへなと服を脱ぎ、湯船に体を沈めた。
この世界に来てから今日で二日目、今日も色んなことがあった。
ブレンダンに殺されないためにも一カ月の間にこの世界で生きる術を見つけなくてはいけない。
しかし、そんな事情とは裏腹に俺の頭の中には何かルノアの手助けができないだろうかという思いもあった。
今の俺には加速と超感覚の能力があるから一カ月必死で戦い方を学べば戦争になった時に多少の役に立てるかもしれない。
しかし俺に戦争が出来るのかという前提としての問題もある。
だが同時に今の俺には加速と超感覚位しか取り柄が無いのも事実だ。
どうすれば俺にルノアの役に立てるのか……
いや、ルノアの役に立つとか立たないとかの前に今後どうするのか、そっちの方が先だろ。
などととりとめもなく考えてるうちにうつらうつらしてきた。
時間はまだ九時位だと思うのだが夜になるとやる事がないせいか眠くなってきた。
そろそろ寝るかとバスタブから立ち上がり、ふと思い立ってお湯が入ったバスタブを持ち上げてみた。
流石に無理だろうと思ったがバスタブはなんなく持ち上がった。
えーと、一立方メートルの水の重量が確か一トンで、このバスタブのサイズが大体長さ百八十センチの幅百センチで水の深さが六十センチ位だから……
「ハハ……ハハハ……」
まさか、一トンまで持ち上げられるとはね。
これはもう人間の筋肉に出来る事じゃない。
風呂から上がった俺は寝巻に着替えてベッドに倒れ込んだ。
昨日の事もあるので一応扉と窓はには鍵をかけてある。
今日も色んなことがあった。
どうやら俺の能力は俺の想像している以上らしい。
これはかなり気を付けないといけないようだ。
ルノアもそれを分かっていたが今まで以上に秘密にする必要があるみたいだ。
今日、俺をずっと見ていた視線も気になる。
あれはブレンダンではなかったみたいだが、だとしたら誰なんだ?
ブレンダンの部下かもしれないが今はまだ分からない。
とりあえず明日は森に行ってもう少し加速の力を試してみよう。
そんな事を思いつつ、知らない間に俺は眠りに落ちていった。
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