外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
最終話.冒険は続く
今回は一連の事件の全てのけりが付いたことによる今後の話し合いのためだ。
結局ゼファー失脚をもくろんだヒラロス一行は多くが死罪で、極刑を免れた者も私財没収の上で貴族の位を没収ということになったらしい。
先の蝗害もあってベルトラン帝国の政治機構は屋台骨が揺らぐほどのダメージを負ったがゼファーは容赦がなかった。
その粛清の嵐がようやく終わり、こうして俺たちとドライアド国のフェリエ、龍人国のラングと共に話し合いの場を設けるということになったわけだ。
ちなみに囚われたいたバグラヴスはどうなったかというと、蝗害が終わった数日後に死体で発見されたらしい。
手を下したのはローカスの貧しい家出身という牢番の兵士で、寝ている所を檻の隙間から槍で刺し殺されたのだという。
国家転覆を企んだ男としてはあまりにもあっけない最期だった。
「まず最初に、先の蝗害でのお礼を言わせてほしい。おかげで我が国は生きながらえることができた。諸兄らの助けがなければ今ごろ我が国はあの蝗共に食い尽くされていただろう」
開口一番ゼファーはそう言って頭を下げた。
「本来であれば正式に報酬の話をすべきなのだが、現在我が国は未だ蝗害から立ち直っておらず即座に報酬を与えるという事ができぬ。誠に申し訳ないのだがそれはご理解していただきたい」
ゼファーの言葉にフェリエとラングが頷いた。
フィルド王国に対する報酬もしばらく後になるという事は聞いている。
「納得していただき感謝する」
ゼファーが息を吐いた。
「それでは今回の本題に入らせていただこう」
ん?今日はこの件を話し合うために集まったんじゃないのか?
「先の蝗害、その前の虫害において一番の功労者がテツヤであることはみなの一致するところであろう」
俺の疑問に構わず言葉を続けるゼファーに再びみんなが頷いた。
「なのでまずはテツヤの貢献に対して褒賞を与えるべきだと思うのだ」
な、なんだ?話が全く見えないんだが?
「テツヤよ」
ゼファーがこちらを向いた。
「お主、王になる気はないか?」
王?俺が?なんで?どこの?
言ってる意味が全く分からない。
リンネ姫を見るとおかしそうに笑っている。
ここでぴんときた。
ははあん、二人で示し合わせて俺をからかおうとしているな。
「言っておくが冗談でも謀ろうというわけでもないぞ」
ゼファーがそう言いながら円卓の上に地図を広げた。
「我が国は今後ワールフィアの諸国と国交を結ぶ用意がある。とはいえ国民には魔族に対する根強い警戒心が残っているのも事実だ。先の反乱で余はそれを痛感した」
そうして地図上のベルトラン帝国とフィルド王国、ワールフィアの国境が接する地域を指で示す。
「そこでまずヒト族と魔族が共生できる国を作ってはどうかと考えたのだ。その国を介してならば我が国の者も忌避感は少なくなるだろう。その候補地として選んだのがここだ」
ゼファーは地図を示しながら話し続けた。
「幸い我が国もワールフィアとの国境沿いは魔族との交易がある。この地とフィルド王国、ドライアド国の一部地域を併せて三国協同支援特区としようと考えているのだ」
「つまり…?」
「我々三か国の手で一つの国を作ることにしたのだ。その管理をテツヤ、お主に任せたいのだよ。これは事前にベルトラン十五世陛下とフェリエ殿とも話し合っていたのだ」
リンネ姫が言葉を継いだ。
「特区と言ってもその地域では完全に独立した法を施行することになる。私たちも立ち上げには力を貸すことになるが、法律や行政は完全に独立したものになるので国と言っても過言ではないだろう」
「むしろ国でなくては駄目なのだ。でなければ我が国民も納得しないだろうからな」
ゼファーが続けた。
「幸いにも我が国とて国境沿いは交易がある関係で魔族に対する悪感情は薄い。そこを足掛かりにワールフィアとの交易を始めたいのだ」
「ま、待ってくれ!言いたいことはわかるよ、そりゃわかる!」
俺は二人に向かって手を振った。
いきなりわっと言葉を投げかけられてこんがらかりそうだ。
「確かにいきなりやりとりするんじゃなくてクッションを置いた方が良いって場合もあると思うよ。今回なんかは特にそうだろうな。でもさ…なんで俺なんだ?」
それが最大の疑問だ。
「俺なんかよりももっと相応しい人物がいるんじゃないのか?長年政治家を務めていた人とか、その土地の有力者とかさ。俺なんか素人も良いところだぞ?そんな奴に一つの国を任せてもいいのか?」
ゼファーとリンネ姫は顔を見合わせた。
「お主以外に相応しい者がいるのか?」
「いるのかって…」
「そもそもお主は今回の件の最大の功労者であり、褒賞を与えねばならぬという前提条件もある。お主の功績に報いるためにはこれ位せねばならぬのだ。それに、我々三人としてもお主以外選ぶ気はないのだ」
「そ、そうです!私たちドライアドとしてもテツヤさんが上に立つのであればという条件で承知しているんです!でなければこの件はなしだと皆の意見が一致しています」
フェリエが断固とした口調で割り込んできた。
「そ、そうは言ってもなあ…」
「なに、そう難しく考えるでない。今までと同じようにやればいいのだ。持ちかけた以上我々もできる限り協力するしな。それに面倒な事ばかりでもないぞ」
ゼファーがにやりと笑った。
「例えば法律はお主の好きなようにしていいのだ。例えば嫁は何人持っても良いとかな」
「そうだな!」
ゼファーの言葉にリンネ姫が勢いよく前に出てきた。
「テツヤが国王になれば私との立場は同等かそれ以上になる。これ以上の縁談先はあるまい!」
「確かに一夫多妻制は魔族にとっては普通のこと、新しく作る国でもその制度を受け入れるのは自然な道理だな」
アマーリアが頷いた。
「我が姫、アマーリアの嫁ぎ先が王のもとであるなら我としても異論はない。むしろ願ったりであるな」
ラングも頷く。
「わ、私は別にそれで構わないぞ。当然その国が出来たら私もテツヤのサポートに行く予定だったしな。うん、その方が色々都合が良さそうだ」
ソラノが頬を染めながら独り言ちるように呟いた。
「私もです!テツヤさんが我々の王になってくれるのであれば文句の言いようもありません。これからは公私共々お世話させていただきます」
フェリエが身を乗り出した。
「私はどうでもいい。テツヤが行くところについていくだけ」
「キリも!テツヤはキリとずっと一緒だと言ってくれた!」
「んな…っ」
みんなの熱意に思わずたじろぐ。
「どうする?ここまで望まれているのだぞ?それでも自分にはできぬと断るのか?」
ゼファーが愉快そうに畳みかけてきた。
こいつ、他人事だと思って。
とはいえここで結論を先延ばしにすることはできそうもなかった。
みんなの期待に応えたいという自分もいる。
というかそこまで想われている以上答えは一つしかないのはわかりきっていた。
「…わかった、その提案に応えさせてもらうよ」
「「「「「「「テツヤ!!!!」」」」」」
「失礼します!」
俺の言葉と同時にみんなが飛びかかってくるのとドアが開かれたのは同時だった。
「失礼しました。お取込み中でしたか」
「い゛い゛や゛い゛い゛ん゛た゛、続けてくれ」
押しつぶされそうになりながら俺はやってきた兵士を促した。
「は、ただいま我が国の港湾都市ポートマより報告がありました。南方国家サウランドの艦隊がこちらに向かっているそうです。その数実に数百隻を超える大艦隊とのことです!」
「なんだって!?」
俺は上ののしかかってくるみんなを押しのけて立ち上がった。
「これは一大事じゃないか!さっそく様子を見に行かないと!」
そう叫んで部屋から出ようとするとゼファーが肩を掴んできた。
「貴様、そうやって今の件をごまかすつもりだな?」
ぎくり。
「まあよい。言質はとってあるのだ、国の件はこちらで進めておいてやるからしばらくは好きなようにするがいい」
ゼファーはそういうとヘルマの方を向いた。
「ヘルマ、たった今より余の護衛隊長の任を解き我が国から派遣するテツヤの助手に任命する。しばらくこの男の身の回りの世話をしてやるといい」
「はっ」
ヘルマが敬礼をした。
ゼファーは満足そうに頷くと笑いながら手を差し出してきた。
「お主のおかげでまだしばらくは退屈せずに済みそうだな。これからは同じ王としてよろしく頼むぞ」
「お前のためってわけじゃないんだけどな。でも乗り掛かった舟だし行けるとこまで行ってみるさ!」
俺は苦笑しながらその手を握り返すとドアへと足を向けた。
「ま、待て、テツヤ!式の日取りはいつにするのだ?まずはそれを決めねばならぬぞ!」
「お待ちください、姫様。そういうものは皆の同意を取って同時に行わなければ。抜け駆けはなりませぬぞ」
「ア、アマーリア様の言う通りです!テツヤの妻という立場においてはみなは一緒なのですからね!」
「その中に私も入っているのか?まあ陛下のお許しがあるなら私もやぶさかではないが」
「キリも?」
「嫁とか結婚とかよくわからないけど私はもうテツヤのものだから」
「わ、私は皆さんに合わせます…」
みんながワイワイ言いながら後についてくる。
これから俺の身の上にどんなことが起こるのか、それはまだわからないけどみんなと一緒ならどんなことでもできる、そう思えた。
「さあ、次はどんな相手が待っているのか確かめに行こうじゃないか!」
― 完 ―
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