外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
27.帰国前日
ゼファーが重々しく呟いた。
バグラヴス捕縛から三日後、俺たちは帝都ガルバジアに戻って事の次第をゼファーに説明していた。
シセロが死亡したことでマッシナの全権はゼファーに移譲され、隠し財産も全て接収されることになったという。
隠し持っていた作物は全て被災地への支援物資として届けられるそうだ。
「しかしそれほどの人物をシセロが擁していたとはな。バグラヴスとかいう男、余が登用していればこの国は更に豊かになっていただろうに」
ゼファーが惜しそうにため息をついた。
ベルトラン帝国でも虫使いはフィルド王国と同じように人気はないけど重要なスキル、ということらしい。
虫使いがいるだけで害虫被害が低減することから貴族が囲い込んで表に出すことはほとんどないのだとか。
ある意味で俺の持つ土属性よりも遥かに価値のある能力と言えるかもしれない。
「ともあれ此度の張本人を捕らえた以上この虫害もいずれ収まるだろう」
ゼファーの言葉通りこの三日間で虫の被害は目に見えて少なくなっているという。
このまま対策を続けていればいずれ元に戻るだろうということだ。
「お主たちには世話になったな。この礼はいずれさせてもらうとして今はゆっくりと休んでくれ」
◆
「結局何だったんだろうな」
俺は客間のベッドにごろりと横になった。
「どうしたのだ、浮かない顔をして。ここは解決したのを喜ぶところではないのか」
リンネ姫が不思議そうに聞いてきた。
「それはそうなんだけどさ…」
確かにリンネ姫の言う通り今回の件を企てたシセロが死に、バグラヴスが捕まった以上憂いはないはずだ。
それでもバグラヴスが最後に言った言葉が頭から離れなかった。
この大陸が滅びを迎えるというあれはどういう意味だったんだ?
ともあれ今の俺たちにできることは何もなかった。
バグラヴスはガルバジアの牢獄の地下深くに幽閉されている。
ガルバジアの牢獄は厳重に耐魔防壁が張られているからバグラヴスの持つ虫使いの力も及ばない。
仮に虫を操ったとしても脱出はできないだろう。
それから俺たちは更に一週間ほどベルトラン帝国に滞在していた。
虫害は日に日に静まっていき、危機的な状況は完全に脱したとのことだった。
街にも安堵の空気が広がりつつあり、店頭には普段通り商品が並ぶようになっていた。
フィルド王国に戻る前日、俺たちは最後にガルバジアの観光をすることにした。
「美味い!」
俺はガルバジア名物羊肉の串焼きを食べながら驚きの声を漏らした。
複雑に混ぜ合わせた香辛料が羊肉の臭みをうま味に変えている。
「美味しい」
「これどんな調味料を使ってるんだろう?ここで買えるのかな?」
フラムとキリも串焼肉がお気に召したみたいで目を輝かせながら頬張っている。
「はあぁ…ガルバジアのアイスクリーム…また食べられる日が来るなんて…」
ソラノはというとアイスクリームを口に運びながら昇天しそうな顔をしていた。
「そういえば前回はこうやって街を観光することはほとんどできなかったな」
リンネ姫は薄パンの中に羊の串焼き肉を挟んでヨーグルトソースをかけた屋台料理を食べながら感慨深そうにあたりを見渡している。
この前はエリオン王子の卒業式やら火神教のごたごたの後での式典やなんやかんやで結局碌に観光できなかったんだった。
「これで風呂が充実していればこの街も良いところなのだがな。いや、やっぱりこんなに乾燥していては駄目だな。やはり私はフィルド王国が性に合っている」
アマーリアが店頭に並んでいる服を吟味しながら答えた。
片っ端から服を選んでは次々と店員に渡していく。
一体幾つ買うつもりなんだ?
ちなみに今回の観光はゼファーの計らいでベルトラン帝国の護衛がついていて支払いも全てゼファー持ちだ。
ありがたいと言えばありがたいんだけどそんなに調子に乗っていいんだろうか?
「なに、この位あの男にとっては端金よ。これしきの浪費では彼の者の一食分にすらならないだろうな」
リンネ姫がいたずらっぽく笑ってみせた。
「せいぜいあの者の眉をひそませるくらい使ってやろうではないか」
こうして散々食べ歩き、買い物をして王城へと戻ってきた時は既に日が沈もうとしている時だった。
王城に入ろうとすると門の前で揉め事が起きてるのが目に入った。
近寄ってみるとみすぼらしい恰好をした老人と門兵が言い争いをしているところだった。
「じゃから言っておるじゃろう。これはこの国を揺るがす危機なのじゃ!儂が来たと言えば陛下も通してくれるはずじゃ!」
「しつこい爺さんだな!世迷言はよそでやれと言ってるだろ!」
「世迷言じゃと!儂を誰だと思っておる!」
門兵が拒絶しても老人は一向に引こうとしない。
「何事だ!」
「はっ!先ほどからこの者が陛下に会わせろと言って聞かなくて…」
俺たちについてきた護衛が問いただすと門兵が敬礼をして答えた。
「この手の輩はいつものことなのですが、この爺さんはどうにもしつこくて…」
そう言って門兵が閉口したように肩をすくめる。
「じゃからアディルが来たと陛下に伝えよと言っておるじゃろう!そう言えば陛下もお目通りをしてくれるはずじゃ!」
老人が声を張り上げた。
アディル?どこかで聞いたような…?
この名前を聞いたのは…確かウルカンシアで…イネスか誰かに聞いたような…って、まさか!?
「…あんた、ひょっとして虫老人のアディルさん?」
「おや若いの、何故儂のあだ名を知っておるのじゃ?」
驚く俺にその老人は不思議そうな顔でこちらを向いた。
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