外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
4.蚊遣り花
辺り一面に真っ白な花が咲き、まるで雪が積もっているようにすら見える。
それだけで幻想的な光景だったけど俺の注意は全く別の場所にあった。
「間違いない、これは除虫菊だ」
正式名称はシロバナムシヨケギク、殺虫成分のピレスロイドを豊富に含むために日本では蚊取り線香に使われていた花だ。
ドライアド国のフェリエに確かめてもらった方が確実だろうけど、とりあえず効果があるか試してみる方が手っ取り早そうだ。
俺は蚊遣り花を一抱えほど刈り取るとすぐにトロブへと引き返した。
「フラム、こいつを乾燥させてくれないか?」
蚊遣り草の花の部分だけを摘み取ってフラムの力で乾燥状態にしてもらう。
それを乳鉢と乳棒でついて粉末にする。
これを固めるのには本来タブノキという木の粉を使うのだけれどとりあえず固められれば何でもいいから今回はでんぷんを使うことにする。
「テツヤは一体何をしているのだ?」
俺が作業をしているとみんなが不思議そうな顔で見に来た。
「まあ見てなって。こいつにはきっと驚くぞ」
蚊遣り花とでんぷん、水を混ぜ合わせてひものような形にし、それをくるくると巻いて渦状にする。
「よし、じゃあこいつを乾かしてくれないか?」
形が出来上がったら再びフラムに乾燥してもらって自作蚊取り線香の出来上がりだ。
庭の土で作った即席の蚊やり豚の中に蚊取り線香を仕込んで火を点ける。
やがて豚の口と鼻からゆっくりと煙が立ち上ってきた。
「お香を作っていたのか?」
「しかしこれはまた、えらくきついお香だな。目に染みるぞ」
初めての蚊取り線香にみんな顔をしかめている。
「まあまあ、最初は慣れないかもしれないけどこいつは凄いんだぜ」
俺はそう言うと窓の網戸を開け放した。
「な、なにをしているのだ!そんなことをしたら蚊が入ってくるではないか!」
アマーリアが抗議の声をあげたけどもう遅い、俺が目視できただけでも五、六匹の蚊が部屋の中に入ってきた。
「これではまた蚊に刺されてしまうではないか…って、刺されない?」
しばらく経っても全く蚊に刺されないことにアマーリアが驚きの声をあげた。
「これがそのお香の力なんだ。これは蚊取り線香といって殺虫成分が豊富に含まれているからこのお香の煙を浴びた蚊は死んでしまうんだ」
床を見てみると確かに死んだ蚊が何匹も転がっていた。
間違いなく効果があるみたいだ。
「…これは凄いものだな。ぜひ私の部屋にも欲しいぞ!」
アマーリアが感心したように驚きの声をあげた。
「キリも欲しい!」
「私はいいかな。この煙は慣れそうにないし蚊には困ってないからな」
「私もいい。でも村のみんなは欲しがると思う」
魔法の力で蚊を寄せ付けないソラノとフラムには必要ないようだけど需要は間違いなくあるみたいだ。
「よし!とりあえず幾つか作ってトロブで試験的に使ってみるか!」
こうして俺たちは総出で蚊取り線香を作り、トロブの町やグランの村に配り回った。
そしてその効果は絶大でその日のうちに大量の追加注文が舞い込んできた。
中には商売用に大量発注できないかという問い合わせまであった始末だ。
「不味いな。このままだと蚊取り線香屋として夏を終えることになってしまうぞ」
夜通しで蚊取り線香を作りながら俺はため息をついた。
「やっぱりここはボーハルトとリンネ姫に力を貸してもらうしかないか」
その翌日、俺は網戸の試作と蚊取り線香を持ってゴルドに向かった。
行き先は当然リンネ姫のところだ。
「これがこの前言っていた網戸だよ。これを窓に嵌めれば蚊の侵入を防ぐことができる。蚊帳と違って家の中全体を守ることができるから便利なんだけど、それぞれの家に合わせて作らなくちゃいけないからちょっと手間だと思う」
まずは網戸を見せ、それから蚊取り線香を取り出した。
「それでこっちが蚊取り線香。殺虫効果のあるお香でこれを焚いておけば蚊を殺すことができる。これは実際に実演した方が良いだろうな」
俺はそう言ってリンネ姫を中庭に連れ出した。
王城とはいえ池や藪のある中庭は蚊の天国になっているから実証にはもってこいだ。
中庭のベンチで蚊取り線香に火を点けるとたなびく煙が中庭へと広がっていく。
「ふむ、何やら変わった匂いのするお香だな。それに…確かに蚊が寄ってこないようだ」
その煙をリンネ姫は好奇心のこもった眼で見ていた。
「これの効果を確かめるのは夜寝てる時が一番なんだよな。だから今夜はこの蚊取り線香を点けて寝てみてくれないか?ちょっと喉が痛くなるかもしれないけど効果はあると思う」
「…よかろう、最も説得力を持つ言葉は体験だ、という言葉もあるしな。それならば今夜は低層階にて蚊帳を付けずに確かめてみようではないか」
リンネ姫は力強く頷くとこちらを見た。
「テツヤも一緒に効果を確認してみるか?」
「いやそれはいいって!」
「なんだつまらぬ。私の部屋はいつでもお主のために開けてあるのだぞ」
リンネ姫が口を尖らせた。
確かにちょっと後ろ髪引かれるけど。
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