外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
38.新たな危機
ルスドールが心配そうに呟いた。
「ああ、それなら大丈夫だよ。ウズナと約束もしたから、もう少ししたら起こしてなんとかしてもらうつもりだ」
「そうですか…」
その言葉にルスドールが安心したようにため息を漏らす。
「ともあれテツヤ殿もお疲れでしょう。我が屋敷で休んでくだされ」
リオイが俺の手を持った。
「いやいや、テツヤ殿は我が屋敷の客人、ここは私の屋敷で休んでいただく」
ルスドールも折れようとしていない。
「やれやれ、族長同士が和解したと思ったら今度はこちらで問題か」
リンネ姫が困ったように笑っている。
いや、それは勘弁してほしいんだけど。
その時彼方から雷鳴のような音が響いてきた。
いや、これは何か大集団の足音だ。
それも一方向からじゃない、南北両方向から聞こえてくる。
「「ま、まさか!」」
その音を聞いてバルドとローベンの顔が青くなった。
ほどなくして俺たちのいる場所に二つの軍隊がやってきた。
片方はエルフ族、もう片方は獣人族だ。
両部隊とも兵士の数は千名をゆうに超え、辺りは見渡す限り槍や剣といった武具で埋め尽くされていた。
「ド、ドミウム殿!」
バルドが転がるように前に出てきた。
「これはこれはバルド殿、お言葉に従い馳せ参じましたぞ」
エルフ族の軍隊の先頭にいた煌びやかな鎧に身を包んだエルフが馬上からバルドに呼び掛けた。
「どうやら既に戦闘が始まっていたようですな。しかもかなりの激戦だった模様。しかし私が来たからにはもう安心ですぞ!共に力を合わせて獣人どもを蹂躙せしめてやりましょうぞ」
「い、いや…それは、もういいのです」
バルドはばつが悪そうに答えた。
「…それはどういうことですかな?」
「そ、その…実はもう獣人族とは和解したのです。我々マスロバ氏族は今後獣人族と争いを起こさぬことで合意をとりました。よって…誠に申し訳ないのですがドミウム殿の助勢は不要ということに…」
◆
「おいおい、こりゃひでえ有様だなあ。よっぽど凄え戦闘が行われたみてえだな」
走竜にまたがったスマトーが辺りを見渡しながら驚いた声をあげた。
「しかし相手もまだまだ元気そうじゃねえか。ま、こっから先は俺様に任せておくんだな。あんな連中、歯牙にもかかりゃしねえよ」
「ま、待ってくれ、スマトー!いやスマトーさん」
ローベンがスマトーの前に飛び出した。
「戦いはもういいんだ。俺たちはエルフ族と和解した。これ以上の戦闘は不要なんだ」
「なんだと?和解しただあ?」
「あ、ああ、その通りだ。せっかく来てもらって悪いんだけど、このまま引き取ってくれないか。この借りは必ず返すと約束する」
ローベンは真剣な顔でスマトーに懇願した。
それを聞いたスマトーは何かを考えるように肩に担いだ槍を揺らし、しばらくして軽くため息をついた。
「失望したぜ、ローベン。まさかおめえがそこまで根性なしだったなんてな」
「い、いや、そういことじゃないんだ。無用な戦争は起こす必要がない、そういうことなんだ」
「ああ、もういいわ」
スマトーがうんざりしたように吐き捨てた。
「せっかくエルフ族を攻める口実ができたってのによお。もうお前いいわ。お前ら腰抜け氏族は猫首並べてそこで見てろや」
「スマトー!」
ローベンが声を張り上げた。
「俺のことだけならいい、だが俺の氏族を馬鹿にすることは許さねえ。それにエルフ族との戦争もさせねえ!」
その言葉を合図にパンシーラ氏族が一斉に武器を構えた。
「ほーう、俺たちとやりあおうってのかよ?強がりばかり言っていざって時に逃げ出してた腰抜けが少しは根性見せるじゃねえの」
にやりと笑ってスマトーが槍を構えた。
◆
「つまり、バルド殿は獣人族に屈したということですかな」
ドミウムが眉をひそめてバルドを見つめた。
「い、いや、そういうわけでは…とにかく、我々の問題はもう解決したのです。ご足労いただいて申し訳ないのですが、このままお引き取り願えないでしょうか。この借りはいずれ必ず返し…」
「嘆かわしい!」
ドミウムはバルドの言葉を遮った。
「それでも歴史ある森エルフ族の末裔なのかね、バルド殿!あのような下賤のものと交渉するというだけでもエルフ族の面目が立たないというのに和解するなど!それはもはや敗北に等しい決断ですぞ!」
「い、いや…これには訳が…」
「もうよい!言い訳は聞きたくない!」
ドミウムがマントを翻した。
「其方の不始末はこのドミウムがあの獣人どもをせん滅することで雪いでくれよう。お主はそこで私の戦いぶりを見てエルフ族の高潔さを今一度学ぶといい」
言い捨てて馬を翻そうとしたドミウムの動きが止まった。
バルドが剣先をドミウムに向けていたからだ。
「自分が何をしているのか分かっているのかね」
「も、もちろんです。しかし、今は戦争を起こすわけにはいかぬのです」
バルドの声は震えていた。
それでも目線はドミウムをしっかりと見据えている。
ドミウムは呆れたように頭を振った。
「マスロバ氏族を任せるにはまだ若すぎると思ってはいたが、これほどとは…」
そしてキッとバルドを睨みつけた。
「その行為、気の迷いでは済まされぬぞ!」
「待て!」
俺はよろよろと立ち上がった。
「なんだこ奴は。どこから湧いてきたのだ?」
ドミウムがネズミでも見るような眼で俺を見下ろす。
「みすぼらしいヒト族風情が俺たちに口を挟むんじゃねえよ!」
スマトーが叫ぶなり槍を振り下ろしてきた。
クソ、かわすだけの体力が残ってねえ!
その槍を塞いだのはローベンだった。
「ローベン、こいつは何の真似だ?」
「こ、この人を傷つけるわけにはいかねえんだよ」
「バルド殿、何故そのヒト族を庇う」
背後でもバルドが剣を構えてドミウムと俺の間に割って入っていた。
「い、今、この方に危害を与えるわけにはいかぬのだ」
二人とも冷汗をながしながらも目を背けることはしなかった。
「ふん、ここまで落ちぶれるとは、もはや其方に族長たる資格はないようだな」
「ローベンよ、こうなった以上おめえに任せるわけにはいかねえな。こっちで勝手にやらせてもらうぜ」
ドミウムとスマトーは呆れたようにため息をつくと武器を高々を掲げた。
「いくぞ!エルフ族の力を刃を持って獣人族の身体に刻み付けてやるのだ!」
「高慢なエルフ族を地の底に埋めてやれ!」
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