外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
37.破壊の後
頭の中に自分のうめき声が響いている。
うっすらと目を開けても霞がかかったようにぼんやりしている。
俺は…一体どうなったんだ?
何かが目の前にいる?
次第にはっきり像を結んできたそれはリンネ姫とアマーリア、ソラノ、フラム、キリだった。
全員涙を浮かべてこちらを見下ろしている。
なんだ?なんでみんな泣いているんだ?
頭の中がはっきりしてくるにつれ、何が起こったのか次第に思い出してきた。
確か、ウズナにキスをされて…自分の中から何かが出てきた…ような。
そこで俺は辺りの惨状に気が付いた。
木々はなぎ倒され、あちこちにクレーターのような穴が開き、まるで戦争でも起きたみたいだ。
まさか…俺がこれをやったのか?
「気が付いたようですね」
頭上からカーリンの声がした。
見上げると箒に跨ったカーリンがふわりと舞い降りてきた。
「カーリン…さん?なんでここに…」
立ち上がろうとしたが体に力が入らない。
「休んでいてください。まだ動けないはずですから」
カーリンが優しく俺を制した。
「お、俺は一体何を…」
「あなたの裡にある力が暴走したのです」
カーリンが静かに告げてきた。
信じたくはないがその言葉にはどうしようもないほどの説得力があった。
やはり、これは俺がしでかしたことだったのか。
「幸いグランさんがあなたを止めてくれました。力の暴走も今は抑えられています」
カーリンはそう言って俺の首元を指差した。
喉元に触れると冷たい金属の感触がある。
「それは封魔環といって強すぎる魔力を封じるための魔具です。しかし気を付けてください。封魔環に付けられている五つの魔石が青から赤に変わると封魔環でも力を抑えきれなくなりますので」
俺は鏡を作り出して首元を見た。
封魔環の魔石は三つ赤くなっている。
「今は暴走を抑えているのでその状態になっています。時間が経てばいずれ青くなっていくはずですよ」
「…すいません。何から何まで」
俺は自分が情けなかった。
まさか自分の力に流されてしまうなんて…
いつかそうなるんじゃないかという恐れはあったけど、それがこんなところで起きてしまうとは。
「いいのです。アスタル様に会ったと聞いた時からこうなることは予想していました。ともあれテツヤさんが無事で安心しました。私は用があるのでもう行かなくてはなりませんが、これからしばらくは力の使用を抑えてくださいね」
カーリンはそう言って優しく微笑むと懐から取り出した魔加露を俺に手渡すと再び箒に跨ると飛び去って行った。
「みんなもすまない。俺はなんてことを…」
俺は目をつぶって周りのみんなに謝った。
みんなの顔も身体も泥と埃で汚れている。
間違いなく俺のせいだ。
申し訳なくて合わせる顔がない。
このまま穴でも掘って隠れていたい気分だった。
「何を言っているのだ。これはテツヤのせいではない」
リンネ姫が俺の頭を抱いた。
「むしろ謝らねばならないのは私たちの方だ。テツヤにばかり無理をさせてしまって…」
アマーリアが声を潤ませている。
「そうとも、これはテツヤの責任じゃない。テツヤの責任だというのならそれはここにいるみんなの責任だ」
ソラノが俺の手を取った。
「テツヤは頑張ってた。それはみんな知ってる」
フラムがそう言って頷いた。
「ご主人様は謝る必要ないよ!みんなを止めようとしてただけだもん!」
キリが叫びながら抱きついてきた。
「みんな…ありがとう」
みんなの言葉に救われた気がした。
それでもやったことの責任は取らなくちゃいけない。
俺は周囲を見渡した。
エルフ族と獣人族は遠巻きに俺たちを見ている。
幸い死者は出ていないみたいだ。
それだけで全身が安堵する。
俺が見ていることに気付いて一気に緊張が走ったのがわかった。
無理もない、記憶はないけどあれだけ暴れまわったのだから。
「みんな…本当に申し訳ない」
俺は上体を起こして地面に両手をついた。
「今回の件は必ず責任を取る。だからどうか許して…」
「申し訳ありませんでした!!!!!」
突然両部族が揃って土下座をした。
「は?」
突然の出来事に俺はどう反応していいのかわからなかった。
「我々が間違っていました!ど、どうかお怒りをお鎮めくださいませ」
バルドが震える声で謝ってきた。
あのバルドが?
「す、すいません、調子に乗っていました!これからは心を入れ替えますので、どうか許してください!」
ローベンも地面に額をこすりつけている。
なんだ?何が起こっているんだ?
「顔を上げてくだされ、テツヤ殿」。
顔を上げるとそこにはルスドールとリオイが立っていた。
「あなたに非はござらぬ。これは我々両氏族の傲慢が招いた結果なのだ」
「これはそもそも我々が今の事態を謙虚に受け止めていれば起こらなかったことなのだ。むしろあなたにあれほどのことを起こさせてしまったことを謝らねばならぬ」
そう言ってリオイとルスドールは俺の前に手をついた。
「感謝こそあれ、あなたに非を問う言葉があろうはずもない。この通り、どうか我々を許してはもらえないだろうか。我ら一堂、心より謝罪いたします」
その言葉にエルフ族獣人族全員が俺に頭を下げてきた。
「いや、そんな謝るのはこっちの方で…」
それでもみんな頭を上げようとしない。
困り果ててリンネ姫を見ると肩をすくめてきた。
「みなお主の言葉を待っているのだ。観念するよりほかあるまいよ」
「…わかった、わかったよ。みんな顔をあげてくれ。俺はただみんなに和解してほしいだけなんだ。そうすると約束するなら喜んで許すよ」
俺の言葉にようやくみんなが顔を上げた。
「もちろんです。これからは獣人族とも協力していくとエルフ族の祖先に誓って約束します」
ルスドールが高らかに宣言した。
「お、俺、いや私も宣言する!パンシーラ氏族はマスロバ氏族と決して争わない!これは頭領としての言葉だ!我が父リオイ・パンシーラにかけて宣言する!」
ローベンの言葉にリオイが嬉しそうに頷いた。
そして両部族から歓声が上がった。
なんだかんだあったけど一件落着みたいだ。
俺もほっと胸をなでおろした。
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