外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
35.グランの行動
バルドが恐怖に顔をひきつらせた。
放った魔法を防ぐでも弾くでもなく消滅させられたのだ。
これは魔力的に己よりも上位存在でなくては実現しえない。
初めてバルドは自分が相手にしてはいけないものに刃を向けたのだと悟った。
それは森の中で安穏と暮らしてきたバルドにとって初めて出会う圧倒的な捕食者となる存在だった。
どうあがいても勝てない、いや勝つどころか逃げることすらできないと本能が告げている。
バルドは自分が地べたにへたり込んでいることも気付かなかった。
それは傍らにいたローベンも同じだった。
己こそ平原で最強だと自負していたローベンだったが、それがただの思い上がりだったと、世界を知らない子供の驕りに過ぎなかったのだと魂が学んでいた。
「グゴアアアアッ!!!」
テツヤの咆哮と共に放たれた必殺の魔力衝撃がバルドはおろかその場にいたエルフ族と獣人族全員に向けて放たれた。
「ひっ…」
エルフ族も獣人族も、みんなが死を覚悟した…が、その魔力咆哮はすんでのところで弾かれた。
「ル、ルスドール殿…!」
「親父!」
魔法障壁を展開してテツヤの攻撃を防いだのはルスドールとリオイだった。
「早く逃げよ!」
「長くはもたんぞ!今のうちに撤退するのだ」
リオイとルスドールが叫んだ。
「し、しかし…あれは…わ、私はどうしたら…」
「で、でもよう、逃げるったって、あれからどう逃げればいいんだよ…」
バルドとローベンが涙声を漏らした。
自分より遥かに強い存在が敵意を向けてきたことに今までの自信はすっかり消し飛んでいる。
「「しっかりせんか!」」
ルスドールとリオイが吠えた。
「お主は我らマスロバ氏族の族長ではないか!ここで民を守らなくてどうする!」
「ローベン!我らパンシーラ氏族の命はお前のその肩に乗っているのだぞ!」
「「は、はひ…」」
先代族長が初めて見せる気迫に二人の身体は再び力を取り戻した。
よろめくように立ち上がると部下たちを先導すべく歩き出す。
しかしそこへ再びテツヤの攻撃が襲い掛かってきた。
「「いかんっ!」」
ルスドールとリオイが魔法障壁を展開するもそれは無残にも打ち砕かれる。
「ぐああっ」
「ぎゃあっ!」
テツヤの放った魔力の衝撃に両部族がまとめて吹き飛ぶ。
「こ、これほどとは…」
「み、みな早く逃げるのだ…」
傷だらけになりながらも皆を守るように立ち上がるルスドールとリオイだったが、ゆっくりと歩み寄ってくるテツヤを見てその顔に絶望の色が浮かんでいる。
「こうなったら我らの命と引き換えに刺し違えるよりほかあるまい」
「願わくばこれが両氏族の懸け橋とならんことを」
ルスドールとバルドは笑みをかわした。
その顔には決死の覚悟が浮かんでいる。
「待つのだ!」
そこへリンネ姫とアマーリアが割って入った。
「テツヤ!目を覚ませ!ここにいるのはお主の敵ではない!」
リンネ姫の必死の叫びもむなしく、獣のような爪を生やしたテツヤの手が襲い掛かってくる。
「くぅっ!」
リンネ姫の放った魔法障壁が辛うじてそれを防ぐ。
しかし魔界最狂の魔導士と言われたワンドの攻撃をも防いだリンネ姫の障壁すらもテツヤを完全に止めることはできず、むしろ徐々に破れようとしていた。
「姫様、いましばらく持ちこたえてください。私がテツヤを止めます」
アマーリアが前に出た。
アマーリアの角が青白く発光している。
魔力を全開放しようとしている証だ。
「いかん!それではお主が!」
焦るリンネ姫にアマーリアは笑みを返した。
「良いのです。ここでテツヤを暴虐の徒にさせるわけにはいかない。そのためならこの身など」
「駄目だ!アマーリア!」
悲痛な声をあげるリンネ姫を背に前に進もうとしたアマーリアの肩が掴まれた。
「グラン殿?」
その手はグランのものだった。
「嬢ちゃん、そう気負うなって」
グランはアマーリアをリンネ姫へと押し付けるとテツヤの目の前に近づいた。
グランの腕に嵌められていた金属製のリングがいつの間にか外されており、折れていたはずの片角が完全に復活している。
「こういう切れてる奴ってのは、だ」
グランの右手がかき消えたかと思うとテツヤの顔面にめり込んだ。
テツヤが数十メートル吹き飛んで岸壁にめり込む。
「ぶん殴ってやれば目が覚めるもんなんだよ」
「ゴアアッ」
岩が爆散したかと思うとテツヤが飛び出してきてグランに体当たりをかました。
「ぬんっ」
グランは十メートルほど押し戻されつつ両手を組んでテツヤの背中に振り下ろす。
「グアアッ」
地面に叩き伏せられたテツヤは瞬間的に跳ね起き、同時にグランの顔へ頭突きを放つ。
グランの顔が弾けるように持ち上がる。
「ちょうどいいぜ。お前とはいつか全力でやりあいたいと思ってたんだ」
口から血を吐きだしながらグランは不敵に笑った。
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