外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
8.夕食
「そんなに急な話なのか?」
「ああ、この特許制度は現在計画しているフィルド王国十年計画の足掛かりとなる制度だ。それに紙は今後訪れるであろう様々な法整備にも欠かせないからな」
「魔石とか魔晶に記録できたりしないのか?なんかこう、マジカルな感じで」
「魔法とはいえ万能ではないのだぞ」
リンネ姫が苦笑した。
「確かに魔石に録音したり映像を記録するのは可能だ。可能なのだがどうやってそれを整理する?いずれは全てが魔法で完結できるようになるかもしれないが今はまだその時ではないな」
うーむ、魔法の力でいきなりペーパーレスというわけにはいかないか。
「とにかく、この話は極秘中の極秘だ。決して他の者には漏らさぬように気を付けてくれ」
そう言ってリンネ姫とエリオンが立ち上がった。
「とりあえず今日は顔合わせのようなものだ。明日またここで続きをするとしよう」
「それでは今日はここで失礼するよ。これから国王陛下とも話をしなくてはいけないのでね」
そう言って二人は去っていった。
もう夕刻になるというのに流石に王族ともなると忙しいんだな。
「テツヤさん」
その時アダムが声をかけてきた。
「よければご一緒に夕食などいかがですか。先ほどはゆっくり話すこともできなかったですし。家内の作る料理はゴルド中のレストランにも引けを取らないですよ」
夕食と言われた途端に空腹なことに気が付いた。
そう言えば食事をどうするかまだ考えてなかったな。
「もしお邪魔じゃなかったらご馳走になります」
「それは良かった!では一緒に我が家へ向かうとしましょう」
というわけで俺はアダムの家に招待されることになった。
アダムの家はゴルドの一等住宅区の外れに建つ簡素な屋敷だった。
すぐ近くに城下町と一等区を隔てる塀が立っている。
簡素とは言ってもそれは一等区の基準から見た話であって、城下町の平民の家に比べたら遥かに大きくメイドも雇う規模の屋敷だ。
「さあさあ遠慮せずどうぞ」
アダムに案内されて広々としたダイニングルームに入る。
テーブルには食器が四セット置かれていた。
うん、何故に四セット?
「家内はまだ準備をしているようですな。呼んできますから少々お待ちいただけますか」
アダムはそう言って部屋を出ていった。
所在なく立っているとしばらくして背後で扉が開く音がした。
「んな?」
振り返った俺は息を呑んだ。
そこには淡い水色の華やかなドレスに身を包んだソラノが立っていたからだ。
普段は垂らしている金髪を美しく結い上げ、唇には紅を指している。
もともと美人だったけどこうして化粧をするとまるで王侯貴族の淑女にしか見えない。
「な、な、なん…」
「か、勘違いするな。帰省していたら今日は大事なお客様が来るからおもてなしをするようにと言われたのだ」
続く言葉を見失っているとソラノが頬を染めながらツンと横を向いた。
そう言えば確かに数日前からソラノはゴルドに里帰りしていたっけ。
思わず見とれているとソラノが横目でこちらを見てきた。
「へ、変じゃないか?」
「あ、ああ、凄く似合ってるよ。びっくりした」
「そ、そうか、それなら良かった」
「…」
「……」
「さあさあテツヤさんどうぞ座ってください。食事にしましょう!」
ぎこちなく黙りあっているとアダムが朗らかに声をかけてきた。
しかしその声には明らかに緊張が漂っている。
しかも席は俺の隣がアダム、正面がソラノになっているんですけど…
こうしてぎこちない雰囲気でソラノ家との食事が始まったのだった。
「ささ、もっと食べてくださいな。今日は良いお肉が入ったんですのよ」
ソラノの母親、エスラが料理を勧めてくる。
美味しい美味しいんだけど、緊張で碌に味を感じないぞ。
「テツヤさんのご活躍は街中の噂になっていますのよ。なんでもこの国どころかベルトラン帝国の危機まで救いになったとか。うちのソラノも帰ってくると話はテツヤさんのことばかりなんですのよ」
エスラはそんな緊張に気付いているのかいないのか明るく話し続けていた。
「お母さま!」
エスラの言葉にソラノが顔を真っ赤にしている。
「何を恥ずかしがっているのです。こっちは娘がもう良い年なのに浮いた話の一つもなくてずっとやきもきしていたんですからね。テツヤさん、親の私が言うのもなんですけどソラノはがさつだけど根は素直でいい子ですから、どうか見捨てないでやってくださいね」
「お母さん…」
ソラノが頭を抱えている。
「それはこちらがお願いしたいくらいです。ソラノ…ソラノさんにはいつも助けられっぱなしですから。僕にとってはもうかけがえのない人です」
「まあまあまあ!」
エスラの顔が更に明るくなった。
「ちょっと、今の聞いた?ソラノ!あなたも聞きまして?」
「テツヤさん」
隣で黙々と食事をしていたアダムが食器をテーブルに置いた。
「は、はい!」
その声に思わず背筋が伸びる。
「ソラノは王立騎士隊という軍人として最も誉れのある隊に所属しています。娘自身も隊に属していることを誇りに思っていました」
そう言うとこちらを向いた。
「その娘が隊を離れてあなたと一緒にトロブという辺境の地へ行くと言った時は驚きました。あれほど王立騎士隊に誇りを持っていた娘にそこまでさせるテツヤという男は何者なのかと気になるのは父親として当然のことです」
アダムが椅子をずらして体全体をこちらに向けた。
「それ以来城内であなたの話を聞くうちに何故ソラノがあなたについていったのか分かったような気がしました。それに娘はもう大人ですからその意志を尊重したいとも思っています。しかし私にとってはたった一人の娘なのです。どうか、どうか娘をよろしくお願いします!」
そう言って頭を下げてきた。
「ちょ、ア、アダムさんっ」
「そんな他人行儀な言葉遣いは無用です。なんでしたらどうぞ義父さんと呼んでください」
「いやそういうことじゃなくて!」
「お父さんっ」
こうしてソラノ家での夜が過ぎていったのだった。
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