外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
7.紙がない!
「いや、そうではない。もっと直接的なことだ」
リンネ姫が首を横に振った。
「テツヤ、特許制度などで特に重要なことは何かわかるか?」
「特許で重要なこと…誰が何を発明したかはっきりさせておくこととか?」
「それは確かにそうだが、それを実現するために必要なのがこれなのだ」
そう言ってリンネ姫が懐から何かを取り出してテーブルの上に置いた。
「これは…紙?」
リンネ姫が置いたのは何の変哲もない一枚の紙だった。
「そう、紙だ。これこそが特許制度の要の中の要と言える」
リンネ姫が言葉を続けた。
「例えばテツヤが何かを発明したとしよう。特許権を取るためにはそれがテツヤの発明であると届出をしなくてはならない。そして当局はそれがテツヤの発明であると記録をすることになる。その時に使われる記録媒体として私は紙が最適だと考えている」
「なるほど、言われてみれば確かに記録をつけておかなくちゃいけないか」
「紙は羊皮紙や木簡と違って嵩張らない。金属板と違って文字を書くのが楽だしインクが乾けば紙が残っている限り残り続ける。薄いから束ねておくのにも最適だ。しかし問題がない訳ではない」
リンネ姫はそう言って言葉を切った。
「この国では紙はまだ貴重品なのだ」
「我が国の紙は綿と藁を使っているのだけれど、その綿もベルトラン帝国からの輸入品でね」
エリオンが後に続いた。
「綿は衣類にも使われているから紙に回せる分はごくわずかなんだ。かと言って羊皮紙を使ったんじゃ羊が何頭いても足りなくなるだろうね」
「そんなにたくさん特許が出るのかな?」
「他人事のように言うでない!お主の考えたものだけで数百の特許が作られるのは確実なのだぞ」
「そ、そうかな?」
「そうなのだ!道路に敷設するアスファルトの混合率、敷設の仕方、マットレスの構造、ばねの作り方、鉄条網、列挙したら一日では終わらぬぞ」
リンネ姫は呆れたようにため息をつくと椅子に腰を下ろした。
「ともかく、この特許制度の成否はいかに紙を安価に手に入れられるかにかかっていると言ってもいいだろう。そういう意味では手がないことはないのだが…」
「なんだ、簡単に紙を作る方法があるのか」
「簡単ではないがな。紙の繊維に綿でなく木を使う方法を以前から研究していてそれは既に目途が立っているのだ。なのだが……」
リンネ姫が言葉の途中で口を濁した。
「木を紙にするためには一旦溶かしてパルプとしなくてはならない。パルプになってしまえばむしろ綿で作った紙よりも滑らかで使いやすい紙を作れるのだが、パルプにするのが問題なのだ」
リンネ姫はそう言うと再び懐から取り出したものをテーブルに置いた。
一体どこにしまってるんだろうか?
それは一見すると何の変哲もない石ころだった。
「それは魔石だ。ただしただの魔石ではない。水と火の属性を兼ね備えた複合魔石と呼ばれるものなのだ」
手に取ってみると確かに水と火の属性を感じる。
しかし相反する属性を同時に持つことなんて可能なのか?
「本来ならありえない。生き物であれば稀に多属性持ちとなるものもいるのだがな。そこにいるお兄様のように」
そう言って横目でエリオンを見た。
エリオンは肩をすくめている。
やけに色んな魔法を使うと思っていたらやっぱり多属性持ちだったのか。
「多属性持ちは人であれば百万人に一人という超稀有な存在だが魔石となると更に希少になる。自然界で存在することはほとんどない。しかし人工的に作ることは可能なのだ」
そう言ってリンネ姫は再び懐から何かを取り出した。
一体幾つ持ってるんだ?
それは白く濁った半透明の石のようなものだった。
河原で見かける軟玉に似てないこともないけどもっと透明度があって柔らかな色合いをしている。
「これは亜晶という。亜晶は謎の多い物質でこれ自体は魔素を全く含有していないのだが一つ変わった性質を持っていてな。異なる属性の魔石を融合させることができるのだ」
そして更に懐から二つの魔石を取り出した。
もう驚かないぞ。
「これはそれぞれ火の魔石と風の魔石だ」
そう言ってリンネ姫は二つの魔石と亜晶をテーブルの上でくっつけ合わせると詠唱を開始した。
詠唱と共にテーブルが光に包まれ、やがて光が晴れた時に三つあった魔石は完全に融合して一つの魔石となっていた。
「複合魔石は従来の魔石とは全く異なる特性を持っている。そして木をパルプにするのには水と火の性質を兼ね備えた複合魔石が欠かせないのだ」
リンネ姫はそう言ってため息をついた。
「火と水の魔石は我が国でも大量に産出しているから問題ない。問題は亜晶が絶対的に少ないことなのだ」
「亜晶というのは魔石や魔晶以上に希少な存在でね。ベルトラン帝国でもわずかしか産出されず、完全に禁輸措置が取られているんだ」
エリオンが言葉を続けた。
「つまり、特許制度を作るためにか紙が欠かせず、紙を作るためには亜晶が欠かせないけどその亜晶が全然ないってことか」
その通り、とエリオンとリンネ姫が頷いた。
「亜晶はどこで、どのように生成されるのかもわかっていない謎の物質だ。しかしお主の能力ならなにかヒントが得らえるのではないかと思ってな」
「なるほどそういうわけね。だったら他に亜晶を持ってないか?ちょっと調べさせてくれ」
リンネ姫がまたも懐から亜晶を取り出した。
手に取った亜晶はほのかに温かく、まるで生きてるようだ。
いや、これは単にリンネ姫の体温が移っているだけか?
ともかく亜晶をスキャンしてみる。
「…これは、何かの魔獣の体組織だな」
「本当なのか!?」
リンネ姫が驚いたように身を乗り出した。
「ああ、詳しく調べることはできなかったけど魔獣の身体の一部が石化したものみたいだ」
「魔獣…ということはワールフィアに手がかりがあるのだろうか…?」
リンネ姫が呟くように言った。
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