外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
3.山岳羆
「す、凄え…あれだけ凶暴な山岳羆の群れがあっちゅう間に…」
工場の人たちも驚きのあまり言葉が出ないようだ。
「よくやってくれた」
リンネ姫が労いの言葉をかけてきた。
「まあ国民として当然のことをしたまでだよ。でもこんなのがよく来るのか?」
「しょっちゅうではないな。これほどの群れが来るのは数年ぶりだろう」
「その通りでごぜえやす。前にこれだけの群れが来たのは七年前ですだ」
一人の壮年の男がやってきて俺の手を握ってきた。
「おかげで助かりました!なんとお礼を言って良いのやら」
「この者は工場長のボイルマンだ」
「姫様にはいつも気にかけていただき、誠にありがとうございます」
ボイルマンはそう言って深々と頭を下げた。
「あの年は本当に酷かったですよ。もう廃業を覚悟したくれえで。大枚はたいて冒険者たちを雇ってなんとか追い払ったんでさあ」
「父上もシュガリーの再建にずいぶんと頭を痛めていたな」
「てことは、今後もまた来るかもしれないってことか?」
俺の言葉にボイルマンは頭をかかえた。
「これだけで終わるとは思えないですよ。あれだけでかいとどんな柵を作ってもぶち壊されてしまうし、もうどうしたらいいのやら」
獣除けか…
「なあ、この辺に鉄の廃材とかないかな?」
「鉄ですか?柵や鍋の使い古したのでしたら廃材置き場に転がってやすが…」
「ちょっと見せてもらえないかな」
廃材置き場に使っている倉庫の中には古い鍋やら鉄の支柱がうずたかく積み上がっていた
この量なら大丈夫だろう。
俺はその廃材を組み合わせて七~八メートルほどの支柱と鉄柵、鉄条網を作り出した。
それを牧草地の縁へ設置していく。
小一時間もしないうちに高さ五メートルほどの鉄条網の柵が牧草地一帯に設置された。
「これなら山岳羆でも乗り越えられないと思うぞ」
山岳羆の固い皮膚にも食い込むように鉄条網の棘は太く長くしてある。
「おお、これはケンタウロスと戦った時に使ったものか!」
アマーリアたちが目を丸くして柵を見上げている。
「ああ、鉄条網は元々家畜用の柵に使うために発明されたものなんだ。下は鉄柵ですり抜けられないようにして上は鉄条網で通れないようにしてある。これならある程度効果あると思うよ」
「これは素晴らしいです!これならあの熊野郎だって入ってこられないに違えねえ!」
ボイルマンも喜びの声をあげた。
「何重かにしておくと更に入ってこれないと思いますよ。仮に入ってきても柵と柵の間で身動きが取れなくなったら狩るのも楽になると思うし」
「ありがとうございます!これでうちのスライムたちも助かります!」
ボイルマンは俺の手を取って何度も振り回した。
「やはりお主を連れてきたのは正解だったようだな」
リンネ姫も満面の笑みを浮かべている。
俺は牧草地を振り返った。
そこには倒した山岳羆の死骸が山のように積み上がっている。
「そう言えばあの熊の死体はどうするんだ?」
俺の言葉にみなが静まり返った。
「肉が食えるのはありがてえんですが、流石にこれだけの量は…」
うずたかく積み上げられた山岳羆の死骸を見上げてボイルマンが申し訳なさそうな顔をした。
「これだけの量となると、麓の肉屋にでも持っていかないことにはさばききれないかと」
みんなの視点が俺に集まる。
やっぱりそういうことになるよね。
ということで帰りは仕留めた熊と共に麓に降りることになった。
熊を乗せた砂糖運搬用の荷車をロバが引いて降りていく。
俺が運ぼうかと申し出たけどリンネ姫が普段の使い方を見せたいと言ってきたのでみんなして荷車に乗って帰ることになったのだ。
正直言うと乗り心地はかなり悪い。
「なあ、良かったらこの荷馬車も改造しようか?ベアリングとサスペンションがあるだけでもかなり違うと思うんだけど」
「それについては少し話があってな。それはボーハルトに戻ってからおいおい話すとしよう」
なんだ?まだ何かあるのか?
「それはついてからのお楽しみだ」
振動に顔をしかめながらリンネ姫がいわくありげに笑みを浮かべた。
麓の町で熊を下ろしたついでに肉屋で処理するのも手伝うことになった。
急に十数頭も熊が獲れたとあって町はお祭りのような騒ぎだった。
町のみんなが包丁を手に集まり、手を貸し合いながら熊の皮を剥いで解体していく。
肉屋ももて余す量だから好きなだけ持っていっていいことになり、町どころか周辺からも人々が集まる騒ぎになってしまった。
しばらくは商売あがったりで、と肉屋の主人は苦笑していた。
それでも一年分の塩漬け肉が手に入ったと上機嫌だ。
肉屋の前に即席のグリルが持ち込まれてちょっとしたバーベキューパーティーまで開催された。
みんな肉を焼きながら酒を飲んで談笑し、手持ちぶたさになれば解体に戻っていく。
そんな風に夜遅くまで宴会のような騒ぎが続いていった。
「どうだ?いい町だろう」
山岳羆のステーキにかぶりついているとリンネ姫がやってきた。
この町特産の香辛料を効かせたソースが野趣あふれる羆の肉によく合っている。
「ああ、来てよかったよ」
「そう言ってもらえて嬉しいぞ」
リンネ姫が俺の肩に頭を預けた。
酒を飲んでいるのか頬が少し紅く染まっている。
「お主にはまだまだこの国の色んな場所を見せるからな。もっともっとだ…」
「楽しみにしてるよ」
そう言って振り返るとリンネ姫は俺の肩に頭を乗せたまま静かな寝息を立てていた。
「今日は色々あったもんな」
俺はリンネ姫を抱き上がると別荘へと足を向けた。
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