外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
38.ガルバジアへの帰還
ゼファーはこの場でやることは済んだとヘルマたちと共にとっとと帰ってしまい、惨状を見過ごせなかった俺は残ることにしたのだ。
主の好きにするがよい、とゼファーは言っていたけど本当に自由にできるとは思ってもいなかった。
俺がこうしたいと言えばそれは一つの異議もなく通っていった。
エリオン王子によると帰る前にゼファーが地方行政官に俺の言葉には完全に従うようにと言い含めていたらしい。
よその国から来た人間にそんな権利を与えていいのかよ、という疑問はあったけど与えられた特権を享受させてもらい、復旧は瞬く間に進んでいった。
そしてガルバジアへ帰る前日、俺たちは火神教本部へとやってきたのだった。
火神教本部は暴動の被害が一番大きく、振動のタイタヌスによって破壊された大聖堂と翼棟は全く復旧が進んでいなかった。
「これを置いては帰れないもんな」
俺は崩れ落ちた壁に手を当てて意識を集中した。
ビデオを逆再生させるように本部が元の姿へと戻っていく。
「す、凄い…テツヤさんは本当に何でもできてしまうんですね」
見ていたエイラが驚いたように目を丸くしている。
「細かい部分は再現しきれてないけどね。その辺はおいおい直していってよ」
「とんでもござらぬ!修復に何年かかるかすらわからず途方に暮れていたところです。これ以上望んではウルカン様から罰を与えられてしまいますわい。なんとお礼を言ったらいいのやら」
カミウス司祭はそう言って胸の前で手を組んだ。
「とりあえずこれで心残りなく帰れるかな」
「あ、あの、テツヤさん…」
帰る準備をしているとエイラがはにかみながら話しかけてきた。
「また、遊びに来てくれますか?何年かかってもいいので…私たちはここをもっともっと良くしていきます。それを見てほしいんです」
「もちろんさ!何か困ったことがあったらいつでも言ってくれよ。飛んでくるからさ」
エイラの頬が薄く朱に染まった。
「嬉しいです。きっと来てくださいね。約束ですよ」
「ああ約束だ!」
俺はエイラやカミウス司祭と別れを告げ、ガルバジアへ向かう帰路へついた。
◆
「此度の主の活躍、誠にご苦労であった。改めて礼を言おう」
ガルバジアに戻った俺たちは謁見の間ではなく王の居室に案内されることになった。
そこで待っていたのはゼファー、ベルトラン十五世とヘルマだけだった。
「主らへの公式な謝儀はまた日を改めて行う予定だが、その前に個人的に礼を言っておきたくてな」
「いいよそんな畏まったのは肩がこっちまう」
「そうはいかん」
ゼファーがテーブルの上の焼き菓子を摘まみながら首を振った。
「今回は火神教滅火派に協力していたウルカンシア地方行政官、力添えをしていた元老院議員を軒並み処分したのだ。その功績者が誰であるのかをはっきりさせねば皆に示しがつかぬ」
そう言いいながら俺たちへ焼き菓子を勧めてきた。
ベルトランは小麦の産地だけあって焼き菓子が凄く美味い。
「…だったら仕方がないけど…そこまで大事になってたのか」
「国家転覆を謀っていたのだから当然だな。総勢十五名の議員、行政官が処刑されたよ。元老院はまるで狩猟期のアナグマのように怯えておるわ」
「そんなにかよ…」
「主にとっては複雑かも知れぬがな。これも国を維持するためには必要なことなのだ。締めるべきところは締めねば国家という家屋はすぐに朽ち倒れてしまう。まあ近頃権力を傘に好き勝手していた元老院には良い薬になっただろう」
ゼファーはそう言って身を乗り出した。
「テツヤ、主には改めて礼を言う。あの地方は元老院の力が強く余と言えどもおいそれと手を出せる場所ではなかった。おかげであの地にはびこる腐敗と圧政を葬ることができた。あの地も今後は住みやすくなっていくだろう」
「止めてくれ、俺は降りかかる火の粉を払っただけだ。…そういえばイネスはどうしたんだ?悪徳役人がいなくなったらちょっとは報われるのか?」
「あの女はウルカンシアの糧食管理長及び農政長官に任命したよ。あのような者がいればあの地も豊かになっていくだろう」
「そうか…」
俺は胸をなでおろした。
彼女の苦労が報われるのならこんなに喜ばしいことはない。
リンネ姫やアマーリアたちの視線が痛い気もするけどイネスのことはおいおい説明することにしよう。
「今まで火神教が管理していた水利も今後は国で管理する手はずになっている。彼の地の農業もやりやすくなるだろう」
「何から何まであんたの思惑通りって訳だな」
「嫌な言い方をするな。そもそもあの地は火神教の力が大きすぎたのだ」
ゼファーが苦笑した。
「火神教と地方行政官の癒着は余が王となる遥か前から続いていた。元老院も絡んでいたから手を入れようとするたびに横やりが入ってしまってな。どうしたものかと思案していたところにあの誘拐騒ぎが起こったというわけよ。主が巻き込まれたのは余にとって僥倖というしかあるまい」
そう言うとゼファーが改めてこちらを見てきた。
「テツヤ、あの地を治める気はないか?」
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