外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
28.カミウス司祭長
ギョッとして振り向くとドアの向こうから声が聞こえてきた。
「なんだ?なんでドアが開かないんだ?」
「故障か?」
やばい、地下室に来た時点でドアは封印しておいたんだけど人が来ちまった!
「もはや選択の余地はないな。テツヤ、我々をカミウス司祭長の元まで運んでくれるか?」
「任せておきなって。みんな一か所に集まってくれ!」
俺は全員を抱えると天井に穴を開けて舞い上がった。
いくつも天井を抜けて上空に舞い上がる。
空から見た本殿は土で出来た巨大な城塞といった形状をしていた。
単純に宗教的施設なだけでなく戦闘にも備えているのだろうか。
本殿は中心に巨大な大聖堂があって三方に翼棟が伸びた丁の字型をしている。
「あそこです!あの一番奥がカミウス様の居室です!」
エイラが指を指した場所に俺たちは飛んでいった。
天井に穴を開けて飛び込み、到着するなり窓という窓、ドアというドアを封鎖した。
これで誰も入ってこれないだろう。
意外にも部屋の中は簡素だった。
だだっ広い部屋の中に質素なベッドと机と椅子、応接セットが置かれていて壁には宗教画らしきものがかかっている。
そして部屋の中央、椅子に座る人物がいた。
がっしりした体格をしているが髪も髭も真っ白な老人だ。
おそらくこの人物がカミウス司祭なのだろう。
俺たちが天井から飛び込んできたことに驚いた表情を見せてはいるけど取り乱してはいない。
しかしその眼がエイラの姿を認めた途端に大きく見開かれた。
「お、おお…」
言葉にならない声を発しながら両手を広げて近づいてくる。
その前にゼファーが立ちはだかった。
ゼファーを前にしたカミウス司祭は何とも言えない表情を浮かべて動きを止め、しばらくしてから諦めたように軽く息を吐くと跪いた。
「ようこそおいでくださいました、ベルトラン陛下」
「突然の訪問ですまぬな、カミウス司祭」
ゼファーは相変わらず落ち着き払っている。
「どうやら余が来ることが分かっていたようだな」
「は、ここへ来られるのは時間の問題だと」
来ることが分かっていた?それってつまり…
「その通り、こやつは我々が攫われたことを知っていたということよ」
カミウス司祭がその言葉に答えることはなかったが沈黙が肯定を物語っていた。
「じゃ、じゃあ…」
口を開きかけた時に部屋に通じるドアが乱暴に叩かれた。
「司祭様!ご無事ですか!先ほど何者かが魔法を用いてこの部屋に入っていくのが見えました!」
「ドアを開けてください!」
クソ、もう他の信徒が来たのか。いっそこのままカミウス司祭をどこか山奥にでも連れていくか?
「大丈夫だ。この者たちは私の客人だ」
その時カミウス司祭が廊下に向かって話しかけた。
「し、しかし…」
「急を要する要件ゆえに魔法で来てもらったのだ。他の者にも大丈夫だと伝えておいてくれ。私はこれから重要な会談があるため今朝の礼拝は他の者に変わってもらいなさい」
「わ…わかりました。何かありましたらお呼びください」
信徒たちはなおも腑に落ちないという声だったけれどそれで納得したのか部屋の前から去っていった。
「話の腰を折ってしまい申し訳ありません。それでは続けることにしましょう」
カミウス司祭は振り返ると部屋にある応接用の椅子を指し示した。
二脚ある椅子にゼファーとエリオンが座り、俺とヘルマはそれぞれの後ろに着いた。
エイラは俺のシャツの裾を掴んで立っている。
「まずは何から話しましょうか」
「決まっている。余とテツヤがここへ飛ばされたことについてだ」
「…それを話すにはまず我々を取り巻く状況から話さねばならぬでしょう」
カミウス司祭は立ち上がると机の上にあった水差しを取り上げた。
「お茶を淹れるところだったのですがいかがですか?」
俺たちが首を横に振るとカミウス司祭は頷いてカップを一つだけ取り出し、お茶を注いだ。
部屋の中にハーブティーの香りが漂ってきた。
「ご存じだと思いますが我らが火神教には創火派と滅火派という二つの宗派があり、元々我ら創火派が主流だったのですが近年は滅火派が力をつけてきています」
カミウス司祭はお茶を啜って話を続けた。
「この地は元々貧しい土地だったのですが、近年は地元の有力者が住人を奴隷として使役するようになり、ますます貧しくなっています。過激な信条を掲げる滅火派はそういった貧しい人々の間で支持を集めているのです」
その話はイネスもしていたな。
奴隷にするためにあえて作物の収量を上げないようにしているのだと。
「滅火派は人々の支持を集めつつ裏で有力者と手を組んで富と権力を手中に収めているのです。その力は留まることを知らず、火神教が完全に彼らの手に落ちてしまうのは時間の問題、いやそれはもう間もなくなのです」
カミウス司祭はそう言ってため息をつくとエイラの方を見た。
「我らにも落ち度はありました。身内に滅火派への転向者が潜んでいたのです。その者の企みによってそちらのエイラが彼らの手に落ちるという失態をしてしまったのです。エイラを取り戻していただいたことには感謝しています。もし我らの元に戻らなければ火神教は完全に滅火派のものになっていたでしょう」
「ちょっと待て、なんでそこにエイラが出てくるんだ?エイラは火の巫女で燼滅教団に売られたんじゃないのか?」
俺の疑問にカミウス司祭は頭を振った。
「エイラはただの火の巫女ではないのです。彼女は、火神信奉の精神的象徴、火の花嫁となる巫女なのです」
「なんだ?なんでドアが開かないんだ?」
「故障か?」
やばい、地下室に来た時点でドアは封印しておいたんだけど人が来ちまった!
「もはや選択の余地はないな。テツヤ、我々をカミウス司祭長の元まで運んでくれるか?」
「任せておきなって。みんな一か所に集まってくれ!」
俺は全員を抱えると天井に穴を開けて舞い上がった。
いくつも天井を抜けて上空に舞い上がる。
空から見た本殿は土で出来た巨大な城塞といった形状をしていた。
単純に宗教的施設なだけでなく戦闘にも備えているのだろうか。
本殿は中心に巨大な大聖堂があって三方に翼棟が伸びた丁の字型をしている。
「あそこです!あの一番奥がカミウス様の居室です!」
エイラが指を指した場所に俺たちは飛んでいった。
天井に穴を開けて飛び込み、到着するなり窓という窓、ドアというドアを封鎖した。
これで誰も入ってこれないだろう。
意外にも部屋の中は簡素だった。
だだっ広い部屋の中に質素なベッドと机と椅子、応接セットが置かれていて壁には宗教画らしきものがかかっている。
そして部屋の中央、椅子に座る人物がいた。
がっしりした体格をしているが髪も髭も真っ白な老人だ。
おそらくこの人物がカミウス司祭なのだろう。
俺たちが天井から飛び込んできたことに驚いた表情を見せてはいるけど取り乱してはいない。
しかしその眼がエイラの姿を認めた途端に大きく見開かれた。
「お、おお…」
言葉にならない声を発しながら両手を広げて近づいてくる。
その前にゼファーが立ちはだかった。
ゼファーを前にしたカミウス司祭は何とも言えない表情を浮かべて動きを止め、しばらくしてから諦めたように軽く息を吐くと跪いた。
「ようこそおいでくださいました、ベルトラン陛下」
「突然の訪問ですまぬな、カミウス司祭」
ゼファーは相変わらず落ち着き払っている。
「どうやら余が来ることが分かっていたようだな」
「は、ここへ来られるのは時間の問題だと」
来ることが分かっていた?それってつまり…
「その通り、こやつは我々が攫われたことを知っていたということよ」
カミウス司祭がその言葉に答えることはなかったが沈黙が肯定を物語っていた。
「じゃ、じゃあ…」
口を開きかけた時に部屋に通じるドアが乱暴に叩かれた。
「司祭様!ご無事ですか!先ほど何者かが魔法を用いてこの部屋に入っていくのが見えました!」
「ドアを開けてください!」
クソ、もう他の信徒が来たのか。いっそこのままカミウス司祭をどこか山奥にでも連れていくか?
「大丈夫だ。この者たちは私の客人だ」
その時カミウス司祭が廊下に向かって話しかけた。
「し、しかし…」
「急を要する要件ゆえに魔法で来てもらったのだ。他の者にも大丈夫だと伝えておいてくれ。私はこれから重要な会談があるため今朝の礼拝は他の者に変わってもらいなさい」
「わ…わかりました。何かありましたらお呼びください」
信徒たちはなおも腑に落ちないという声だったけれどそれで納得したのか部屋の前から去っていった。
「話の腰を折ってしまい申し訳ありません。それでは続けることにしましょう」
カミウス司祭は振り返ると部屋にある応接用の椅子を指し示した。
二脚ある椅子にゼファーとエリオンが座り、俺とヘルマはそれぞれの後ろに着いた。
エイラは俺のシャツの裾を掴んで立っている。
「まずは何から話しましょうか」
「決まっている。余とテツヤがここへ飛ばされたことについてだ」
「…それを話すにはまず我々を取り巻く状況から話さねばならぬでしょう」
カミウス司祭は立ち上がると机の上にあった水差しを取り上げた。
「お茶を淹れるところだったのですがいかがですか?」
俺たちが首を横に振るとカミウス司祭は頷いてカップを一つだけ取り出し、お茶を注いだ。
部屋の中にハーブティーの香りが漂ってきた。
「ご存じだと思いますが我らが火神教には創火派と滅火派という二つの宗派があり、元々我ら創火派が主流だったのですが近年は滅火派が力をつけてきています」
カミウス司祭はお茶を啜って話を続けた。
「この地は元々貧しい土地だったのですが、近年は地元の有力者が住人を奴隷として使役するようになり、ますます貧しくなっています。過激な信条を掲げる滅火派はそういった貧しい人々の間で支持を集めているのです」
その話はイネスもしていたな。
奴隷にするためにあえて作物の収量を上げないようにしているのだと。
「滅火派は人々の支持を集めつつ裏で有力者と手を組んで富と権力を手中に収めているのです。その力は留まることを知らず、火神教が完全に彼らの手に落ちてしまうのは時間の問題、いやそれはもう間もなくなのです」
カミウス司祭はそう言ってため息をつくとエイラの方を見た。
「我らにも落ち度はありました。身内に滅火派への転向者が潜んでいたのです。その者の企みによってそちらのエイラが彼らの手に落ちるという失態をしてしまったのです。エイラを取り戻していただいたことには感謝しています。もし我らの元に戻らなければ火神教は完全に滅火派のものになっていたでしょう」
「ちょっと待て、なんでそこにエイラが出てくるんだ?エイラは火の巫女で燼滅教団に売られたんじゃないのか?」
俺の疑問にカミウス司祭は頭を振った。
「エイラはただの火の巫女ではないのです。彼女は、火神信奉の精神的象徴、火の花嫁となる巫女なのです」
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