外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
9.帝王からの招集
国賓待遇はこういうのがあるから最高だ。
各部屋にふんだんにお湯が使える風呂が設置されていて、アマーリアは二時間風呂から出てこなかったらしい。
食事もゴルドの最高級レストランと同じクラスのお店で、肉やミルクをふんだんに使ったベルトランの名物料理をこれでもかというくらい食べてきた。
当然食事代も国費持ちだ。
もう一生この旅でも良いな。
ガルバジアに着いた翌日、エリオン王子の卒業式典が行われた。
巨大な講堂で行われた式典は国家行事かと思いそうなくらい壮大で壮麗、俺にはよくわからなかったけどベルトラン帝国の並み居る貴族や大立者が列席していたらしい。
そしてあんな事件があったからなのか警備も恐ろしく厳重だった。
講堂に入るまでに何度もボディチェックがあり、講堂も壁を埋め尽くすほどの警備兵が立っていた。
私たちを犯人だと疑っているのかとリンネ姫はプリプリ怒っていたけど、警備のお陰なのか式典は滞りなく進んでいった。
驚いたことに卒業生による式辞はエリオンだった。
「当然だ。兄は今年の首席だからな」
リンネ姫が得意そうに胸を張った。
そうだったのか、じゃあ学年でただ一人というS級の持ち主というのは……
「当然兄だ」
涼やかな顔の割にかなりの実力を隠し持っていたのか。
それにしても主席とはいえ留学生に式辞の権利を与えるなんて懐が深いというか度量があるというか…
「確かにそういう点においてはこの国を認めざるを得ないな」
リンネ姫が悔しそうに呟いた。
「特に現王が即位してからこの流れが加速したらしい。私もまだ数度しか会ったことはないのだがなかなかの切れ者だぞ」
ふーむ、これだけでかい国を切り盛りするってことは人間的にもかなりできた人物なのだろうな。
式典はつつがなく進行し、何事もなく終わりを迎えた。
「やれやれ、心配してたけど何も起こらなかったな」
「流石にあれだけの警備ではおいそれと手は出せまいよ。それよりも堅苦しい場で肩が凝った。早く帰りたいぞ」
「そうだな、アマーリアたちと合流して明日は観光でもしたいよな…」
そんな他愛もないことを話しながら講堂を出ようとした時、一人の影が俺たちの前に立ちはだかった。
「リンネ姫殿下、テツヤ、お二人に話がある」
「ヘルマ?」
それはヘルマだった。
会場の警備をしていたのか今は鎧で完全武装していて表情も鉄のように無表情な軍人の顔になっている
「どうかしたのか?」
「帝王陛下が二人をお呼びだ」
「ベルトラン帝王陛下が?俺たちを?なんで?」
「訳は知らぬ。私はただ二人を呼ぶように言われただけだ。ついてきてくれ」
そう言うとヘルマは踵を返して歩き始めた。
俺たちは顔を見合わせた。
何でいきなり呼ばれたんだ?
「あの事件についてかな?」
「わからぬ。とりあえず行ってみるしかあるまい。断れるわけもないしな」
リンネ姫はため息をつくとヘルマの後を追い、俺もそれに続いた。
◆
ベルトラン帝国の王城は川の北側にある丘の上にあった。
丘の周りは川から引いた水で堀となっていて都市から完全に切り離されている。
城の区域だけで一つの町がすっぽり入るくらいの広さだ。
ヘルマの用意した竜車は堀にかけられた跳ね橋を越え、いくつもの門を通過して城へと向かっていった。
「とんでもないでかさだな」
その規模の大きさに俺は門を通過するたびに息を呑んでいた。
どの門も巨大で緻密な彫刻が施されている。
この国が高い文化を持っているのは明らかだ。
「ふん、有り余る金にあかせてるだけにすぎん」
リンネ姫は面白くなさそうに顔を背けている。
「着いたぞ。ここからは歩きだ」
城の中庭に着いたところで竜車から降り、中へと入っていった。
そこから更にうんざりするくらい歩き、いい加減休みたくなってきた所でようやく謁見の間に着いた。
謁見の間も巨大だった。
天蓋は見上げるほどに高く、豪華絢爛に飾り立てられている。
壁の柱に沿って衛兵が立ち並ぶ様子はまるで今から戦争でも起こすかのようだ。
一人の王にこれだけの警備が必要なのか。
そしてその部屋の一番奥にあるまばゆく輝く金色の玉座にベルトラン帝王がいた。
その横には貴族や議員と思わしき威厳を持った老人たちが円弧を描いて着座している。
ベルトラン十五世、即位してまだ十年も経っていないというが既にその威名は大陸中に轟き渡っているという。
出会って最初に感じたのは驚きだった。
若い。
もっと年上を想像していたけど俺よりも少し上、いっても二十代後半くらいだろう。
銀髪に褐色の肌、瞳も髪の色のような銀色だ。
ゆったりとした絹のガウンを身にまとい、体中に純金のアクセサリをまとっている。
思わず見とれるような美形だけど全身から漂うオーラはこの男が尋常のものではないことを雄弁に語っていた。
列席するベルトランの議員や貴族も帝王の放つ迫力に気圧され、緊張して冷や汗をかいている。
俺たちを見つめるその瞳は退屈しのぎに床石の目地を見ているようだった。
「陛下、リンネ姫殿下とテツヤをお連れしました」
しかしそんな場にあってヘルマは全く動じる様子がなかった。
それだけでヘルマがこの王に持つ忠誠が本物だと分かる。
「ご苦労だった。下がって良いぞ」
王の声は決して大きくはなかったけど不思議と耳に入ってきた。。
低い声なんだけど妙によく通るというか、ついつい耳を傾けてしまうような響きを持っている。
これがカリスマというものなのだろうか。
その声にヘルマは一礼して一歩下がった。
王がこちらを見た。
床の目地を見る目がようやく人を見る目になった。
「よく来たな」
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