外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
8.帝都ガルバジア
翌日、昨日の事件などなかったかのように俺たちは学園生たちと共に帝都ガルバジアへと向かった。
結局あれ以来事件のことは聞けずじまいだった。
警備の人に聞いてもけんもほろろに断られ、学園関係者に尋ねても取り付く島もなかった。
というかまだ誰も真相を知らないだけなのかも。
とにかく心の中にしこりを残したまま帝都ガルバジアへと向かうことになってしまった。
俺たちはベルトラン帝国の用意した竜車に乗り換え、一路ガルバジアへと向かっている。
学生たちとその護衛も含めた大旅団だ。
流石に走竜だけあって足の速さは馬と比べ物にならない。
ガルバジアとはかなり離れているという話だけど一両日中には着くらしい。
道もしっかりと整備されているし、車箱は車台と分離していて革ひもで固定されているために振動もそんなに気にならない。
「テツヤが作ったサスペンションほどではないけど良い馬車だな」
ソラノも感心したように馬車を見渡していた。
「ベルトラン帝国は技術においても最先進国だからね。帝都に着けばきっと驚くと思うよ」
「ふん、そう言っていられるのもいまのうちだ。我が国がすぐに追い抜いてみせるわ」
エリオンの言葉をリンネ姫がツンと切り捨てた。
どうもエリオンとリンネ姫はベルトラン帝国に対する印象が正反対みたいだ。
「そんなことよりも私は早く帰りたい」
珍しくアマーリアが弱気になってるな。体調でも悪いんだろうか。
「そうじゃない。そうじゃないんだが……この国はどこに行っても風呂がないのだ!私には耐えられない!」
そう言ってアマーリアは頭を抱えた。
「お風呂に入りたいお風呂に入りたいお風呂に入りたいお風呂に入りたい…」
そ、そこまでか。
そう言えばベルトラン帝国内に入ってから風呂らしい風呂はなくて全て湯あみだった気がするな。
ヘルマもベルトランには温泉が少ないと言っていたし、乾燥気候だから水は貴重品という話だったっけ。
「まあまあ、ガルバジアに行けば流石に風呂はあるから。それまでの辛抱だよ」
「本当ですか!絶対ですか!」
アマーリアは立場も忘れてエリオンに詰め寄っている。
「私もお風呂に入りたい」
「キリも」
フラムとキリもうんざりした顔をしている。
そう言えばトロブでは毎日風呂に入るのが当たり前だったもんな。
「もうちょっとの辛抱だって」
俺は二人の頭を撫でた。
そんなこんなで俺たちを含めた旅団は次の日の早い時間に帝都ガルバジアへ到着したのだった。
「これは…凄いな」
ガルバジアに入った俺は息を呑んだ。
ガルバジアは荒涼とした大地に流れる大河を挟んで広がる大都市だった。
長大な城壁が都市を囲み、その周囲にも町が広がっている。
城外町を持つゴルドと似てはいるけどその規模が桁違いだ。
エリオンの話だとガルバジアの人口は三百万、ゴルドの三倍とのことだったけどそれ以上だと言われても驚きはない。
城壁の中に入って真っ先に驚いたのは道路だった。
「これは…アスファルトじゃないか!」
ガルバジアの主要道路にはアスファルトが敷き詰められていた。
「去年から大工事が始まってね。今は東西南北に走る大通りのみだけどいずれは幹線道路全てがアスファルトになるらしいよ。なんでもフィルド王国に視察に出かけた者がアスファルト道路のことを知ったという話だけど、我が国にそんなところがあったっけ?」
エリオンの説明にみんなの視線が俺に集まった。
ひょっとしてトロブにやってきたヘルマがアスファルト道路のことを伝えたのか?
「この一大事業は市民に大好評でね。元老院としても計画を前倒しにして国全体に広げる予定らしいよ」
「…ああ、もう!」
リンネ姫が突然絶叫した。
「うわぁびっくりしたぁ!」
「いつもこうだ!いつもこの国は美味しいところを持っていく!我が国だってアスファルトが豊富にあれば!資金があれば今頃国中の道路がこうなっていたのに!」
「お、落ち着け、他の人たちに聞こえるぞ!」
「これが落ち着いていられるか!この国は無駄に広くて資源が豊富で土地も豊かだからこういう大規模なことを砂場で遊ぶ感覚で出来るのだ!私たちがどれだけ苦労しているのか……っ!」
「…ひょっとしないでも、リンネ姫ってこの国が嫌いなんですかね?」
「まあね。妹としては隣国にこれだけ発展した国があるのが面白くないみたいなんだ」
エリオンが苦笑しながら首肯した。
「僕としては見習うべきことも多いと思うんだけどね。この国は豊かなだけでなく決断や行動も早い。技術や魔法の研究にも熱心なんだ。あんな風にね」
そう言ってエリオンが指差した先を見て俺は思わず目を疑ってしまった。
そこには空飛ぶ荷台に乗った人がいたからだ。
「あれも今年になって実用化された魔法なんだ。国の最高魔導機関が最先端の魔導研究チームを結成して実現させたらしいよ。あんなことができるなんて凄いと思わないか?」
「あれだったらテツヤもできる」
フラムが面白くもないと言うように呟いた。
「ああああああああっ!!!!」
リンネ姫が声にならない悲鳴を上げてのけぞった。
「私だって、私だってできるのに!テツヤの能力をヒントに基礎魔法で空中浮遊を実現させてあとは応用だけだったのに!先を越されたあ~!」
叫ぶなり俺の胸に飛び込んでおいおい泣き始めた。
「あれって凄いことなんですか?」
「凄いなんてもんじゃないよ。基礎魔法による空中浮遊は遥か昔に失われたとされる古代魔法なんだ。なんでも土属性の魔法を組み込むことで基礎魔法として再現させることに成功したらしいよ。もっともまだ不安定なんで完全な実用化には程遠いらしいけどね」
…ひょっとしてあれも俺の魔法を見たヘルマが伝えたんじゃないだろうか…
うかうか魔法を使うのも考えものなのかも。
それにしてもベルトラン帝国最高レベルの研究チームと同じ成果をたった一人で達成したリンネ姫って…ひょっとして天才なのか?
「リンネは大陸一の狭き門と言われる帝国魔導学校から直々に入学依頼が来たくらいだからね。学長自らやってきて頭を下げていたよ。当然リンネは頑として断ったんだけど、もし行っていたら学校史上最高の天才と呼ばれていただろうね」
そこまで。
泣きじゃくるリンネ姫と興味津々で窓の外を見つめるみんなを運んで竜車はひたすらガルバジアの道を進むのだった。
結局あれ以来事件のことは聞けずじまいだった。
警備の人に聞いてもけんもほろろに断られ、学園関係者に尋ねても取り付く島もなかった。
というかまだ誰も真相を知らないだけなのかも。
とにかく心の中にしこりを残したまま帝都ガルバジアへと向かうことになってしまった。
俺たちはベルトラン帝国の用意した竜車に乗り換え、一路ガルバジアへと向かっている。
学生たちとその護衛も含めた大旅団だ。
流石に走竜だけあって足の速さは馬と比べ物にならない。
ガルバジアとはかなり離れているという話だけど一両日中には着くらしい。
道もしっかりと整備されているし、車箱は車台と分離していて革ひもで固定されているために振動もそんなに気にならない。
「テツヤが作ったサスペンションほどではないけど良い馬車だな」
ソラノも感心したように馬車を見渡していた。
「ベルトラン帝国は技術においても最先進国だからね。帝都に着けばきっと驚くと思うよ」
「ふん、そう言っていられるのもいまのうちだ。我が国がすぐに追い抜いてみせるわ」
エリオンの言葉をリンネ姫がツンと切り捨てた。
どうもエリオンとリンネ姫はベルトラン帝国に対する印象が正反対みたいだ。
「そんなことよりも私は早く帰りたい」
珍しくアマーリアが弱気になってるな。体調でも悪いんだろうか。
「そうじゃない。そうじゃないんだが……この国はどこに行っても風呂がないのだ!私には耐えられない!」
そう言ってアマーリアは頭を抱えた。
「お風呂に入りたいお風呂に入りたいお風呂に入りたいお風呂に入りたい…」
そ、そこまでか。
そう言えばベルトラン帝国内に入ってから風呂らしい風呂はなくて全て湯あみだった気がするな。
ヘルマもベルトランには温泉が少ないと言っていたし、乾燥気候だから水は貴重品という話だったっけ。
「まあまあ、ガルバジアに行けば流石に風呂はあるから。それまでの辛抱だよ」
「本当ですか!絶対ですか!」
アマーリアは立場も忘れてエリオンに詰め寄っている。
「私もお風呂に入りたい」
「キリも」
フラムとキリもうんざりした顔をしている。
そう言えばトロブでは毎日風呂に入るのが当たり前だったもんな。
「もうちょっとの辛抱だって」
俺は二人の頭を撫でた。
そんなこんなで俺たちを含めた旅団は次の日の早い時間に帝都ガルバジアへ到着したのだった。
「これは…凄いな」
ガルバジアに入った俺は息を呑んだ。
ガルバジアは荒涼とした大地に流れる大河を挟んで広がる大都市だった。
長大な城壁が都市を囲み、その周囲にも町が広がっている。
城外町を持つゴルドと似てはいるけどその規模が桁違いだ。
エリオンの話だとガルバジアの人口は三百万、ゴルドの三倍とのことだったけどそれ以上だと言われても驚きはない。
城壁の中に入って真っ先に驚いたのは道路だった。
「これは…アスファルトじゃないか!」
ガルバジアの主要道路にはアスファルトが敷き詰められていた。
「去年から大工事が始まってね。今は東西南北に走る大通りのみだけどいずれは幹線道路全てがアスファルトになるらしいよ。なんでもフィルド王国に視察に出かけた者がアスファルト道路のことを知ったという話だけど、我が国にそんなところがあったっけ?」
エリオンの説明にみんなの視線が俺に集まった。
ひょっとしてトロブにやってきたヘルマがアスファルト道路のことを伝えたのか?
「この一大事業は市民に大好評でね。元老院としても計画を前倒しにして国全体に広げる予定らしいよ」
「…ああ、もう!」
リンネ姫が突然絶叫した。
「うわぁびっくりしたぁ!」
「いつもこうだ!いつもこの国は美味しいところを持っていく!我が国だってアスファルトが豊富にあれば!資金があれば今頃国中の道路がこうなっていたのに!」
「お、落ち着け、他の人たちに聞こえるぞ!」
「これが落ち着いていられるか!この国は無駄に広くて資源が豊富で土地も豊かだからこういう大規模なことを砂場で遊ぶ感覚で出来るのだ!私たちがどれだけ苦労しているのか……っ!」
「…ひょっとしないでも、リンネ姫ってこの国が嫌いなんですかね?」
「まあね。妹としては隣国にこれだけ発展した国があるのが面白くないみたいなんだ」
エリオンが苦笑しながら首肯した。
「僕としては見習うべきことも多いと思うんだけどね。この国は豊かなだけでなく決断や行動も早い。技術や魔法の研究にも熱心なんだ。あんな風にね」
そう言ってエリオンが指差した先を見て俺は思わず目を疑ってしまった。
そこには空飛ぶ荷台に乗った人がいたからだ。
「あれも今年になって実用化された魔法なんだ。国の最高魔導機関が最先端の魔導研究チームを結成して実現させたらしいよ。あんなことができるなんて凄いと思わないか?」
「あれだったらテツヤもできる」
フラムが面白くもないと言うように呟いた。
「ああああああああっ!!!!」
リンネ姫が声にならない悲鳴を上げてのけぞった。
「私だって、私だってできるのに!テツヤの能力をヒントに基礎魔法で空中浮遊を実現させてあとは応用だけだったのに!先を越されたあ~!」
叫ぶなり俺の胸に飛び込んでおいおい泣き始めた。
「あれって凄いことなんですか?」
「凄いなんてもんじゃないよ。基礎魔法による空中浮遊は遥か昔に失われたとされる古代魔法なんだ。なんでも土属性の魔法を組み込むことで基礎魔法として再現させることに成功したらしいよ。もっともまだ不安定なんで完全な実用化には程遠いらしいけどね」
…ひょっとしてあれも俺の魔法を見たヘルマが伝えたんじゃないだろうか…
うかうか魔法を使うのも考えものなのかも。
それにしてもベルトラン帝国最高レベルの研究チームと同じ成果をたった一人で達成したリンネ姫って…ひょっとして天才なのか?
「リンネは大陸一の狭き門と言われる帝国魔導学校から直々に入学依頼が来たくらいだからね。学長自らやってきて頭を下げていたよ。当然リンネは頑として断ったんだけど、もし行っていたら学校史上最高の天才と呼ばれていただろうね」
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