外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
7.燼滅(じんめつ)教団
これは服毒自殺…まさか!?
振り返るとエリオンがこちらを見て首を振った。
見渡すと壁に貼り付けられていた襲撃犯たちは全員死んでいた。
先ほどの男と同じように自ら毒を飲んだろう。
拘束を解くと全員糸の切れた人形のように地面に倒れ込んだ。
「助かったのか…?」
「な、なんだったんだ、今のは…」
学生たちもようやく助かったという実感が湧いてきたらしく、あちこちで安堵と喜びの声が上がっている。
「クソ、この野蛮人が!この私をよくも足蹴にしてくれたな!こんなクソ共は死んで当然だ!」
元気を取り戻したカイウスが憎しみに顔を歪ませながら地面に横たわる亡骸を蹴り上げようとしている。
その足元の地面を少し横に動かすとカイウスは再びもんどりうった。
当たりどころが悪かったのか腰を押さえて悶絶している。
まああのくらいならしばらくしたら動けるようになるだろう。
それよりも重要なのはこいつらが何者でどういう目的で襲ってきたのかだ。
残念ながら全員死んでしまった以上直接聞きだすことはできないけど。
しばらくしてようやくベルトランの警備兵がやってきた。
パーティーは強制的に中止となり、俺たちはみんな自室へ戻されて外出しないように強く釘を刺された。
アマーリアたちも渋々と宿へ戻っていった。
「あいつらは一体何者だったんだ?」
部屋に戻った俺たちはあまりの事態に自然と口数も少なくなっていた。
セレンさんによると外で生き残っていた連中も全員毒を飲んで死んでしまったらしい。
何者か知らないけどとんでもない覚悟を持っていたのは確かだ。
「あれは…シャンファ国の生き残りだね」
独り言ちた俺の言葉にエリオンが答えた。
「シャンファ国?」
初めて聞く名前だ。
「ああ、ここから少し南に下ったところにあった小国の名前だよ。今はベルトラン帝国に併合されて国としては残ってないけどね」
エリオンが説明した。
「彼らには胸から肩にかけて特徴的な刺青が入っていた。あれはシャンファ族に伝わる成人の証しの刺青なんだ」
「そんなことまで知っているんですか」
「ベルトラン帝国の歴史を知ることもこの留学の目的だったからね。ベルトラン帝国は先ほどのシャンファ国などいくつもの小国や部族国家を併合・併呑してきた歴史があるんだ。だから国という形は残っていなくても国の中に別の国があると言ってもいいね」
エリオンは壁に背中を預けて話を続けた。
「中には平和裏のうちにベルトラン帝国との併合を果たした国もあるけど戦争によって強引に服従させた国もある。そういうところでは今も再独立の動きが絶えないんだ」
「ふん、ベルトラン帝国の強引なやり方だったらそういう手合いが出てもおかしくないわ」
リンネ姫が当然だと言うように眉をしかめた。
なるほど、つまりあれはそういう独立派によるテロ行為だったわけか。
「いや、それがそうとも言えないんだ」
エリオンはそう言って困ったように息を吐いた。
「確かに彼らはシャンファ国の生き残りではあるし、元シャンファ国領内では独立運動があるのも事実だ。でもそれだけとも言い切れない点もあるんだ。あの男が死ぬ間際に言った言葉を覚えているかい?」
「確か、ウルカン…バなんとかだったかな…」
「ウルカン・バーラヤーン、火神と共にあらんという意味だよ」
「火神?」
エリオンが頷いた。
「ベルトラン帝国南部では火神信奉が盛んで近年とみにその勢いを増しているんだ。信者の急増を憂慮した元老院による締め付けが信者たちの怒りを買って最近は各地で暴動や破壊活動が増えているんだよ」
「つまり…あいつらはシャンファ国の独立派かも知れないし、その火神信奉の過激派かも知れないってことですか?」
「あるいはその両方かも。火神信奉は元シャンファ国領内にも広がっているからね。なお悪いのはそれが悪名高い燼滅教団だということなんだ」
「燼滅教団?」
「燼滅教団というのは火神信奉の中で最も先鋭化された教団でね、彼らはいずれ世界は火に焼き尽くされ、そこから新たな世界が始まると信じている」
いわゆる終末思想だね、とエリオンは困ったように笑った。
「いずれにせよこれで終わりということはないだろうね。今までも小競り合いはいくつもあったけど貴族を直接狙った攻撃はなかった。これは何かが変わったということを示しているのかもしれない」
俺たちは顔を見合わせた。
とんでもないタイミングで来てしまったんじゃないだろうか。
大陸最大の国家であるベルトラン帝国と言えども内情は一枚板とはいかないってことか。
いや、大きいからこそ内部の歪みも大きいのかもしれない。
「とりあえず明日は卒業式典のために帝都ガルバジアに戻る予定になっている。今回の件もあるし警護は厳重になっていると思うよ」
エリオンの言葉にも俺は不安を拭い去ることができなかった。
なにか大きなことが動いている、そんな気がしてならない。
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