外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
4.パーティーの夜
リンネ姫と別れて何となく手持ち無沙汰になってしまった俺は屋敷の中を歩き回ってみることにした。
俺の能力を使えば屋敷の全体像から内部構造まで把握するのはたやすいのだけどやはり肉眼で見るのはまた違った発見がある。
屋敷は四階建てで母屋の両側に左右に伸びる離れが付いている。
俺たちが泊まる西側の離れは客室棟となっているらしい。
流石は貴族学園所有の屋敷だけあって豪華さは王国の並み居る屋敷と何ら変わらない。
いや、こっちの方が豪華なくらいだ。
ふらふらと目を移しながら歩いていると廊下の角から学生が曲がってきた。
「おっとすいません」
「よそ見をするな!」
ひょいと脇に避けたら怒号が飛んできた。
怒鳴ってきたのは三人組の学生だった。
恐ろしく高飛車な目つきでこっちを睨んでいる。
「いやどうも不注意でした。申し訳ない」
別にぶつかったわけじゃないんだけど、と心の中で思いながらもこっちの方がよそ者なので素直に謝ることにした。
「貴様、見ない顔だな。どこから来た」
三人の中の中心人物と思われる男が更に突っかかってきた。
「自分はフィルド王国よりリンネ姫殿下の付き添いできました。テツヤと申します」
イラっとしながらも素直に答えることにする。
俺の返答を聞いた男たちの顔にあからさまな侮蔑の表情が浮かんだ。
「フィルド王国ぅ?ああ、あの田舎の小国か!田舎者なら礼儀を知らなくても仕方ないな、特別に許してやろう。だだし田舎者は田舎者らしくこれからは隅の方を歩いているんだな」
あざけるように顔を見合わせて笑っている。
こいつら嫌いだ。
「どうしたんだい?」
その時背後から声がした。
振り向くとそこに立っていたのはエリオンだった。
「やあカイウス、それにテツヤ君まで。こんなところで談笑かな?」
先ほどと変わらないにこやかな顔で気さくに話しかけきた。
それを見てカイウスと呼ばれた男が不機嫌そうに眉をひそめた。
「エリオン、君のところの従者がよそ見をしていたそうで私にぶつかりそうになったぞ」
「それは大変だ!お二人とも怪我はなかったかい?」
大げさに驚いてみせるエリオンにカイウスがあからさまに舌打ちをする。
「もういい!その間抜けをしっかりと躾けておくんだな」
吐き捨てるように言うと残りの二人を従えて肩をぶつけるようにいからせながら俺とエリオンの間を通り抜けていった。
流石に間抜けと言われてカチンときたのでカイウスが踏み降ろそうとした時に能力でそのブーツを少し前にずらしてやった。
重心を崩したカイウスが盛大にすっ転んだ。
「な、なんだ突然!」
カイウスは真っ赤な顔をして辺りを見渡し、こっちを鬼のような形相で睨みつけると走るように去っていった。
「やれやれ、大丈夫だったかい?」
三人が消えてからエリオンはため息とともに肩をすくめた。
「連中は一体?」
「ああ、彼はカイウスと言うんだ。悪い奴ではないんだけど親が元老院議員なこともあって少し高慢なところがあってね。まあ見逃してやってくれないかな」
「まあ別に気にしていませんよ」
「その割にはしっかり仕返しをしたみたいだけど?」
ばれてたか。
「あれは君の能力なんだろ?リンネから聞いているよ。話に違わず土属性だというのに大した能力だね」
「別に大したことはしてないですけどね」
「何を言ってるんだ。あれほどさりげなく繊細に力を操れるのがどれほど難しいかわかっていないのかい?君がこの学園生だったら間違いなくトップクラスの成績を治めていただろうね」
「そうなんですか?みんなこの位普通にやってると思ってたんですけど」
「それは君の周りの人間が全員A級以上の力の持ち主だからだよ」
エリオンが呆れたと言うようにため息をついた。
「僕の学年だってA級は十名程度、S級に至っては一人だけなんだ。もっともここは貴族学園だから魔力はそれほど重要視されていないのだけどね」
エリオンはそう言って俺の肩に手を置いた。
「とは言え学園が学園なだけに彼らのように尊大な連中もいるから気をつけた方がいいよ。僕たちよそ者を快く思っていないものもいるしね」
頼んだよ、とエリオンは俺の肩を叩いて去っていった。
ああ見えてエリオンも結構苦労してるんだろうか。
◆
夜になって母屋の二階にある大広間でパーティーが始まった。
テーブルには見たこともないような異国の料理が溢れ、楽団が陽気な音楽を奏でながら大広間を練り歩き、着飾った学生たちが思い思いに歓談している。
中でも一番人を集めていたのはリンネ姫とエリオンだった。
ひっきりなしに人が入れ代わり立ち代わり集まっては会話に花を咲かせている。
「姫様、私と踊っていただけませんか」
「いやいや、ここは是非とも私めに」
踊りを誘う手が何本もリンネ姫の前に出されている。
「失礼、リンネ姫殿下の相手は私が務めることになっていますので」
俺は並み居るその手をかわしてリンネ姫の手を取った。
「よろしいですか?リンネ姫殿下」
「もちろん」
俺はリンネ姫の腰に手を当て、二人で回るように踊りながら人混みから離れていった。
「助かったぞ。ああいうのはどうにも苦手でな」
「このくらいなんてことないさ、少し辛そうだったしな。でもいいのかな、エリオン王子を一人にさせても」
「気にするな。私たちをこんな所に呼びつけたんだ、少しくらい苦労をさせても罰は当たらないさ」
そう言ってリンネ姫がいたずらっぽく舌を出した。
いつもの元気なリンネ姫が戻ってきたみたいだ。
俺たちが踊る中、楽団の陽気な音楽はますます盛り上がっていく。
いよいよ音楽が最高潮を迎えようとした時、突然部屋中のあかりが消えた。
一瞬で辺りが闇に包まれる。
「な、なんだ?」
「何も見えないぞ!?」
辺りが一気に騒然となった。
何が起こったんだ?
俺はすぐ横にいるリンネ姫の手を強く握りしめた。
何かが変だ。
光の魔石がいきなり魔素を失った?そんなわけはない。
電灯じゃないんだから電力が失われるなんてこともあり得ない。
考えられるのは辺りの魔力が全て遮断されたということ、つまり……
「敵襲だ!」
俺はリンネ姫を抱えて駆けだした。
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