外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
38.ドライアド国の誕生
リンネ姫に事の次第を報告し、何故かレジスタンスに乞われて吸血国の後片付けと今後の方針の検討に参加するなど忙しい毎日だった。
生き残った吸血族はレジスタンスを含めて千名足らず、国としてはかなり弱体化してしまったけどツョルトナーを筆頭とした暫定政府が置かれることになり、ドライアドや蛇髪女人族と協力体制を敷いて復興を図るらしい。
これによってドライアド国建国の許可が最終的に下りることになった。
ツァーニック討伐から八日目の朝、ドライアド国となる領地に龍人族の王ラング、蛇髪女人族の王ベルベルヒ、吸血国臨時筆頭のツョルトナー、ドライアド代表のフェリエが集まった。
ドライアド国建国を宣言するためだ。
俺たちもその会合に参加している。
「まさか本当にツァーニックを倒すとはな…」
ラングが半ば呆れたように髭をさすった。
「言ったでしょう、テツヤなら必ずやり遂げると」
アマーリアが得意そうに顎をつんと上げた。
「いやはや本当に大したものだ。しかしその姿…」
そう言ってラングが俺の方を見た。
「どうやら窓を開けてしまったようだな」
「ご存じだったんですか」
「まあ、過去に例がないわけではないからな」
ラングは軽くため息をついて椅子に背をもたせた。
「その程度であればいずれ元の姿に戻るだろう。しかし一度開いた窓は簡単に開くようになる。ヒトであり続けたいのであれば気をつけることだ」
「肝に銘じておきます」
「まあ我が姫ならこっちの方が好みかもしれんがな」
ラングはそう言ってニヤニヤとアマーリアの方を見た。
「知りませんっ!」
アマーリアは頬を染めてそっぽを向いている。
「それはそれとして本題に入らせてもらうのだが…」
ひとしきり笑った後でラングは真顔になると机に両肘をついた。
「前も言ったように我々としてはドライアドが国を作ることに異論はない。ここにいるみんなもそれは同じだろう」
ラングの言葉にベルベルヒとツョルトナーが頷いた。
「だが元々ドライアドが国を作ると決めたのはベルトラン帝国の脅威があったからだ。こちらはどう対処するつもりなのだ?」
みんなの視線が俺に集まる。
そう、そもそもはこれが本題だ。
ベルトラン帝国が攻めてくるのを止めなくてはいけない。
しかもリンネ姫が言うにはあと数日のうちにベルトラン帝国は進軍を開始するらしい。
今ではワールフィア侵攻軍が国境沿いの町に集結し、進軍の時を待っているのだとか。
もはや一刻の猶予もないというわけだ。
「実を言うと今回みんなに集まってもらったのはそれが理由でもあるんだ」
俺はそう言って立ち上がった。
「ベルトラン帝国との戦争を回避するためには帝国とワールフィアを分断するしかない。これはドライアドとも話をつけてある。だからみんなには見届け人となってほしいんだ」
「ほう、そこまで言うからにはよほどの自信があるようだな」
ラングが面白そうだと口角を吊り上げた。
「まあね。そのためにはまず国を作るという宣言が必要なんだけど、それはどういう風にやったらいいんだ?」
「それはこちらに任せておくがいい」
そう言ってラング、ベルベルヒ、ツョルトナーが立ち上がった。
「それでは今より建国の宣言を行うとしよう」
ラングの詠唱と共にテーブルを中心として巨大な魔法陣が現れた。
「我はドライアド国王フェリエ・プランテー。今、この時を持ってワールフィアにドライアド国の建国を宣言する」
フェリエが建国を宣言した。
フェリエの言葉と共に魔法陣から魔素の光が空を舞い上がっていく。
これは魔素に言葉を乗せる魔導通話で、あらゆる魔族の頭の中に直接届いていく。
俺の頭の中にもフェリエの宣言と共にドライアドが治めることになる領地のイメージが流れ込んできた。
ある程度魔力を持った者なら種族を問わずこのメッセージを受け取ることになるらしい。
「これは龍人国王ラング・ペンドラゴンが認めるものである」
「ゴ、蛇髪女人国王ベルベルヒ・パーネモルフィ・ゴルゴーンもこれを認める」
「吸血国臨時筆頭ツョルトナー・ウェンプティもこれを認める」
ラングに続いてベルベルヒ、ツョルトナーがこの宣言を承諾した。
「なお、龍人国、蛇髪女人国、吸血国はそれぞれドライアド国と正式に協定を結ぶことを併せて宣言する。これは通商、および軍事協定も含まれるものである」
ラングが続けて宣言を行い、ベルベルヒとツョルトナーもそれに続いた。
「これをもってドライアド国建国の宣言を終了する」
一層煌びやかな魔素の光が空中に弾け、こうしてドライアド国建国は正式に完了した。
さて次はいよいよ俺の番だ。
最初は自信がなかったけどアスタルさんに力を開放してもらった今ならできるはずだ。
俺は地面に手を置き、意識を集中した。
ワールフィアとベルトラン帝国の国境沿いに意識を移す。
大地を自分の意識に同調させ、自分の身体のようにイメージする。
全身から汗が噴き出してきた。
地母神の家で窓を開けた時のような、全身の内側から何かが出てきそうになる感覚を必死で抑え込む。
同時に地面が小刻みに揺れ始めた。
「な、なんだ、これは?」
「地震?」
みんなも驚いたように辺りを見渡している。
しかし意識を集中している俺にそれを確認している余裕はない。
布を手繰り寄せるように、砂場の砂をかきよせるように、頭の中に大地を描いていく。
振動は次第に大きくなっていく。
それは唐突に収まった。
成功した。
実際に確認したわけではないけど俺にはその確信があった。
同時に全身の力が抜けて地面に倒れ込んだ。
体中の魔力を消費しきったみたいだ。
「テツヤッ!」
みんなが驚いたように駆け寄ってきた。
「だ、大丈夫だ」
俺は震える手で持っていた魔加露を口に入れた。
相変わらずとんでもない不味さだけど魔力が回復するのを実感する。
「これでもう大丈夫だ。ベルトラン帝国も簡単には攻めてこられないはずだよ」
俺はそう言ってフェリエに向かって親指を突きだしてみせた。
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