外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
34.作戦会議
「私がこのレジスタンスを率いているツョルトナーです」
目の前の吸血族の男性がそう自己紹介をしてきた。
あれから改めてレジスタンスも交えて会合を開くことになった。
「俺はテツヤだ。俺のことはもうみんなから聞いていると思う」
「はい、しかし…ヒト族と聞いていましたが…」
「ああ、これはちょっと事情があってね」
俺の姿は吸血族にとっても驚きだったみたいだ。
広間を見渡すとレジスタンスは総勢三百名くらいだろうか、正直言うとツァーニックへの抵抗力としてはあまりに矮小すぎる戦力だ。
それでもやるしかない。
この戦力を考えれば次の戦いが天王山となるだろう。
「それはそうと、なんでベルベルヒがいるんだ?」
今回の会合はレジスタンスに混ざってベルベルヒ含め蛇髪女人族も参加していた。
「テ、テツヤが戻ってきたと聞いて、い、居ても立っても居られなくて」
ベルベルヒがもじもじと答えた。
「じゃ、邪魔…?」
「いや、そんなことない。ベルベルヒたちが来てくれるのは凄く助かるよ!」
「よ、良かった」
ベルベルヒが頬を染めた。
「テ、テツヤ、凄く強くなってる。ま、前にあった時とはまるで別人」
「ああ、今までも強かったが今は全くレベルが違う。おそらく龍人族の戦士が束になっても敵わないだろう」
アマーリアも頷いた。
自分ではあまり実感がないけど見る人が見れば違うんだろうか。
ただ、今まで以上にものの流れや要所みたいなのが実感できるのは確かだ。
生き物でも無生物でも要と呼ばれるものがあり、そこをどう操作すればどういう結果になるのかが直感的にわかるようになってる。
それが強さなのか?
「それで、今後はどのようにするつもりですか?」
「その前に聞きたいことがあるんだ」
俺は改めてツョルトナーの方を向いた。
「ツァーニックは今はあの場所から動けない、そうじゃないのか?」
「よ、よくわかりましたね。その通りです」
ツョルトナーが驚いたように頷いた。
やはりそうだったか。
「あの男は咀魔になったとはいえまだ完全ではありません。そのためにあの地に縛られているのです」
「それはあんたたち吸血族が魔晶を体内から取り出せることと関係しているんだろう?」
俺の言葉に吸血族の中にどよめきが起こった。
「な、何故それを知ってるのですか?それは我ら吸血族にとって秘中の秘となっているのに!」
ツョルトナーも驚愕している。
「その話は今は置いておこう。それよりもツァーニックの話が先だ」
俺の言葉にツョルトナーは頷いた。
「確かに我々吸血族は魔晶を体内から取り外して別の場所に隠すことでどれだけ身体を破壊されても復活することができます。それがあの男にとって枷になっているのです」
ツョルトナーは話を続けた。
「普通であれば自分の魔晶を手元に置くことで幾らでも移動できるのですが奴は魔晶を集めすぎたために遠く離れて移動できなくなっています」
「魔晶を一個だけ離して遠隔で動かすことはできないのか?」
無理です、とツョルトナーは首を振った。
「奴の一部となった魔晶は遠くへ切り離されると崩壊してしまいます。なので奴が手下として操っているのは魔力で作り出した土人形に過ぎません」
だから攻撃力はほとんどなかったのか。
「その代わりツァーニックの魔晶が埋められた場所は彼の勢力下となります。奴の圏内に入ると我々では太刀打ちできません」
「城の周囲どの辺までが奴の圏内なのかはわかっているか?」
「残念ながら正確にはわかっていません。しかしおそらく城から二キロ四方は奴の勢力下と見て間違いないでしょう」
二キロか、思ったより広いけど奴の魔晶の数を考えればそれも当然か。
「話を整理すると奴は遠くまで行けないし魔晶を切り離すこともできない、その代わり城の二キロ以内だったらほぼ無敵だし、方々に隠された九千九百九十九個の魔晶を破壊しない限りどんなに破壊しても復活するってことでいいのかな?」
「その通りです」
ツョルトナーが頷いた。
「何か弱点とかはないのか?猫に弱いとか、水を見たらビビって動けなくなるとか、日光に当たったら灰になるとか」
「残念ながら」
地球の吸血鬼とそういう部分は違うのか。
「まことに申し訳ないのですが我々では打つ手がなくなっていたというのも事実なのです」
ツョルトナーはそう言って悔しそうに歯噛みをした。
「まあその辺はなんとかなるかもしれない。でもその前に一つ聞いておきたいことがあるんだ」
不思議そうな顔をするツョルトナーに俺は話を続けた。
「こんな時に聞くのもあれだってのはわかっているけど、あんたたち吸血族は他の種族の血を吸って生きているんだろ?例えばヒト族とか。その辺のことを確認しておきたいんだ。もし無理やり襲って血を吸っているんなら…」
「そんなことはありません!」
俺が言葉を言い終わる前にツョルトナーは激しく否定した。
「確かに私たちは血を吸って生きる種族ですが無理やり吸うなどという野蛮な風習はとうの昔に捨て去っています!今ではしっかり契約をしたうえで血を頂いているのです!」
思わず身を引くほどの迫力だった。
「そ、それはその通りです」
その時、レジスタンスの中から声がした。
振り返るとそれはヒト族の女性だった。
「わ、私たちは定期的に血を与える代わりに給金をもらう契約をしています。それ以外はいたって普通の扱いと言うか、むしろ厚遇をいただいてるくらいです」
そうです、その通りですと他のヒト族からも声が上がった。
「今でも無理やり血を吸う輩が出ていることは認めざるを得ませんが、それは我々の法の下ではっきり違法となっています。この仕組みはツァーニックを倒した後でも変えるつもりはありません」
「わかった、悪かったよ、急に変なことを聞いちゃって。ただその辺はヒト族としてどうしても気になっちゃって。この通り謝るよ」
俺は素直に謝罪した。
「いえ、いいんです。我々も吸血族に対する世のイメージを変えようと思っていたのです。ツァーニックを倒した暁にはヒト族との交流も増やしたいと考えています。ご協力していただけますか?」
「ああ、もちろんだ」
俺はそう言ってツョルトナーと固い握手を交わした。
目の前の吸血族の男性がそう自己紹介をしてきた。
あれから改めてレジスタンスも交えて会合を開くことになった。
「俺はテツヤだ。俺のことはもうみんなから聞いていると思う」
「はい、しかし…ヒト族と聞いていましたが…」
「ああ、これはちょっと事情があってね」
俺の姿は吸血族にとっても驚きだったみたいだ。
広間を見渡すとレジスタンスは総勢三百名くらいだろうか、正直言うとツァーニックへの抵抗力としてはあまりに矮小すぎる戦力だ。
それでもやるしかない。
この戦力を考えれば次の戦いが天王山となるだろう。
「それはそうと、なんでベルベルヒがいるんだ?」
今回の会合はレジスタンスに混ざってベルベルヒ含め蛇髪女人族も参加していた。
「テ、テツヤが戻ってきたと聞いて、い、居ても立っても居られなくて」
ベルベルヒがもじもじと答えた。
「じゃ、邪魔…?」
「いや、そんなことない。ベルベルヒたちが来てくれるのは凄く助かるよ!」
「よ、良かった」
ベルベルヒが頬を染めた。
「テ、テツヤ、凄く強くなってる。ま、前にあった時とはまるで別人」
「ああ、今までも強かったが今は全くレベルが違う。おそらく龍人族の戦士が束になっても敵わないだろう」
アマーリアも頷いた。
自分ではあまり実感がないけど見る人が見れば違うんだろうか。
ただ、今まで以上にものの流れや要所みたいなのが実感できるのは確かだ。
生き物でも無生物でも要と呼ばれるものがあり、そこをどう操作すればどういう結果になるのかが直感的にわかるようになってる。
それが強さなのか?
「それで、今後はどのようにするつもりですか?」
「その前に聞きたいことがあるんだ」
俺は改めてツョルトナーの方を向いた。
「ツァーニックは今はあの場所から動けない、そうじゃないのか?」
「よ、よくわかりましたね。その通りです」
ツョルトナーが驚いたように頷いた。
やはりそうだったか。
「あの男は咀魔になったとはいえまだ完全ではありません。そのためにあの地に縛られているのです」
「それはあんたたち吸血族が魔晶を体内から取り出せることと関係しているんだろう?」
俺の言葉に吸血族の中にどよめきが起こった。
「な、何故それを知ってるのですか?それは我ら吸血族にとって秘中の秘となっているのに!」
ツョルトナーも驚愕している。
「その話は今は置いておこう。それよりもツァーニックの話が先だ」
俺の言葉にツョルトナーは頷いた。
「確かに我々吸血族は魔晶を体内から取り外して別の場所に隠すことでどれだけ身体を破壊されても復活することができます。それがあの男にとって枷になっているのです」
ツョルトナーは話を続けた。
「普通であれば自分の魔晶を手元に置くことで幾らでも移動できるのですが奴は魔晶を集めすぎたために遠く離れて移動できなくなっています」
「魔晶を一個だけ離して遠隔で動かすことはできないのか?」
無理です、とツョルトナーは首を振った。
「奴の一部となった魔晶は遠くへ切り離されると崩壊してしまいます。なので奴が手下として操っているのは魔力で作り出した土人形に過ぎません」
だから攻撃力はほとんどなかったのか。
「その代わりツァーニックの魔晶が埋められた場所は彼の勢力下となります。奴の圏内に入ると我々では太刀打ちできません」
「城の周囲どの辺までが奴の圏内なのかはわかっているか?」
「残念ながら正確にはわかっていません。しかしおそらく城から二キロ四方は奴の勢力下と見て間違いないでしょう」
二キロか、思ったより広いけど奴の魔晶の数を考えればそれも当然か。
「話を整理すると奴は遠くまで行けないし魔晶を切り離すこともできない、その代わり城の二キロ以内だったらほぼ無敵だし、方々に隠された九千九百九十九個の魔晶を破壊しない限りどんなに破壊しても復活するってことでいいのかな?」
「その通りです」
ツョルトナーが頷いた。
「何か弱点とかはないのか?猫に弱いとか、水を見たらビビって動けなくなるとか、日光に当たったら灰になるとか」
「残念ながら」
地球の吸血鬼とそういう部分は違うのか。
「まことに申し訳ないのですが我々では打つ手がなくなっていたというのも事実なのです」
ツョルトナーはそう言って悔しそうに歯噛みをした。
「まあその辺はなんとかなるかもしれない。でもその前に一つ聞いておきたいことがあるんだ」
不思議そうな顔をするツョルトナーに俺は話を続けた。
「こんな時に聞くのもあれだってのはわかっているけど、あんたたち吸血族は他の種族の血を吸って生きているんだろ?例えばヒト族とか。その辺のことを確認しておきたいんだ。もし無理やり襲って血を吸っているんなら…」
「そんなことはありません!」
俺が言葉を言い終わる前にツョルトナーは激しく否定した。
「確かに私たちは血を吸って生きる種族ですが無理やり吸うなどという野蛮な風習はとうの昔に捨て去っています!今ではしっかり契約をしたうえで血を頂いているのです!」
思わず身を引くほどの迫力だった。
「そ、それはその通りです」
その時、レジスタンスの中から声がした。
振り返るとそれはヒト族の女性だった。
「わ、私たちは定期的に血を与える代わりに給金をもらう契約をしています。それ以外はいたって普通の扱いと言うか、むしろ厚遇をいただいてるくらいです」
そうです、その通りですと他のヒト族からも声が上がった。
「今でも無理やり血を吸う輩が出ていることは認めざるを得ませんが、それは我々の法の下ではっきり違法となっています。この仕組みはツァーニックを倒した後でも変えるつもりはありません」
「わかった、悪かったよ、急に変なことを聞いちゃって。ただその辺はヒト族としてどうしても気になっちゃって。この通り謝るよ」
俺は素直に謝罪した。
「いえ、いいんです。我々も吸血族に対する世のイメージを変えようと思っていたのです。ツァーニックを倒した暁にはヒト族との交流も増やしたいと考えています。ご協力していただけますか?」
「ああ、もちろんだ」
俺はそう言ってツョルトナーと固い握手を交わした。
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