外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
11.再びベルトラン帝国へ
荷台に乗ってボーハルトを越え、ベルトランの国境を越えて更に南へ南へと下っていく。
今回も国境を越える際に武器の携帯は許されなかったけどこれは現地で調達できるしいざとなれば俺が作ればいいから何の問題もない。
途中で武器などを調達しつつ一日南下してワールフィアとの国境沿いにあるフォージャスという村に着いた。
じっとりとした湿気が体にまとわりついてくる。
かなり南下しただけあって冬の始まりだというのに半袖でいなければ汗をかくほどの暑さだ。
「ここがその現場だ」
ヘルマに言われて俺は絶句した。
フォージャスはまるで廃村と見間違うような荒れようだった。
家はどれもボロボロ、中には焼け落ちている家屋まであり、しかも片付けられてすらいない。
「ここまで酷いとは……」
アマーリアやソラノもあまりの惨状に言葉が出ないようだ。
村人たちはみな怯え切ったような眼でこちらを窺っている。
度重なる襲撃ですっかり参ってしまっているみたいだ。
「魔界は向こうだ」
ヘルマが森の方を指差した。
「奴らは森に潜み、地下道を使って移動するためになかなか動きが掴めぬのだ。そのために軍を動員しても目ぼしい成果があげられぬ。それに貧しい地域ゆえに冒険者に依頼することもままならないのだ」
なるほど、そんな事情があったのか。
「だから俺に目を付けたという訳か」
「貴様の力なら役に立つだろう?」
「そりゃまあそうかもな」
俺は地面に手を置き、地中をスキャンしてみた。
あるわあるわ、森の中は地下道だらけだった。
はるか遠くから森の際まで、数百本はあろうかという地下道が数キロに渡って伸びている。
しかも幾つも枝分かれし、時には途中に水を張って煙やガスの侵入を防ぎ、至る所に罠が仕掛けられている。
森にも罠が仕掛けられまくっている。
確かにこれは討伐に骨が折れそうだ。
「元々この辺一帯は決して貧しい土地ではなかったのだが魔界のゴブリンに目を付けられて疲弊しきってしまったのだ。どうだ?どうにかなりそうか?」
「とりあえずあの地下道をなんとかしないことには無理だろうな。どこか近くに石切り場はないか?でかい岩がたくさんあるところならなんでもいいんだけど」
「それならあの山のすそ野が良いだろう」
ヘルマはそう言って近くにある山を指差した。
「よし、じゃあさっそくやってみるか」
俺たちは山の麓へと向かった。
「この山がそのまま我が国と魔界の境界になっている。ここから北に向かって平地になっているためにゴブリンどもが侵入してくるのだ」
ヘルマが説明してくれた。
ベルトラン帝国とワールフィアは山脈を境に別れているけどところどころ山が切れて平地で続いている部分がある。
フィルド王国のトロブとベルトラン帝国のマテクがある地域もその一つだし、今俺たちが来ているフォージャスもそういうところだった。
「しかしここへ来て何をするつもりなのだ」
「まあ見ていなって」
俺は地面に手をあてて山をスキャンした。
うまい具合にこの山は大部分が玄武岩で占められている。
これなら大丈夫だろう。
精神を集中し、山から玄武岩の塊を高さ二十メートル、長さ二十メートル、厚み一メートルほどの板状の岩として切り出した。
「国境はどの辺だ?」
「あの森が切れているラインが見えるか?あれが国境になる」
ヘルマの指差した先を見ると確かに森の中に木のない部分が線のように存在していた。
「んじゃいっちょうやりますか!」
俺は切り出したその岩を国境に沿って地面に打ち込んだ。
岩は地面に半分ほど埋まって巨大な壁となった。
「こうやって壁を作っていけば同時に地下道も寸断できるだろ?あとはこっちに残ったゴブリンを討伐したらいい」
森の幅は二キロほどでその先は川になっているから少なくともそこまで壁を作ればゴブリンは入ってこれないだろう。
「どういう手を使うのかと思ったが、これは予想外だったぞ」
ヘルマが感心したような呆れたような声を漏らした。
「お褒めに与り恐悦至極」
言いながら俺は次々と岩の壁を作っていった。
「地下道を一つずつ潰すのは手間だし、潰したところですぐに別のを掘られてしまうだろうからね。だったら掘れないようにしてしまえばいいのさ」
ゴブリンの地下道の深さはせいぜい地下五メートルほどだ。
俺が岩を埋め込んだ下は岩盤が走っているからゴブリンと言えども掘ることはできないだろう。
俺の作る岩の板が次々と森に壁を作っていく。
「来たぞ!」
その時、森の中から飛び出してくる影があった。
ゴブリンだ。
突然の事態に狂乱を起こして地下道から飛び出してきたのだろう。
「俺は手を離せないから任せたぞ!」
「「「「了解した!」」」」
俺の言葉にアマーリア、ソラノ、フラム、キリが飛び出していった。
四人は森から出てくるゴブリンたちを次々に倒していく。
これなら難なく終わりそうだ。
そう思った時、森の奥から凄まじい咆哮が聞こえてきた。
「来たな」
ヘルマが剣を抜いた。
「奴らの首領、ゴブリンキングだ」
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