外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
5.奴隷狩り
そう言うことだったのか。
つまりここに集まっているのはワールフィアの難民ということか。
とは言えこれは簡単に答えられる問題じゃない。
ワールフィアとは正式に国交を結んでるわけじゃないから簡単に承諾するわけにはいかないだろう。
まずはリンネ姫に確認するべきだろうか…そんな事を考えているワールフィアの難民たちからどよめきが起こった。
「あいつらだ!奴隷狩りがここまでやってくるぞ!」
「そんな……ようやく逃げてきたというのに!」
「私たちはもうお終いだ…」
「誰か助けてくれ!」
難民たちから絶望に満ちた怨嗟が溢れた。
彼方に目をやると砂ぼこりが巻き上がっているのが見える。
あれが奴隷狩りなのか?
凄い勢いでこちらに向かってくる。
どうしたものかと逡巡していると、突然キリが走り出した。
「キリッ!?一体何を?」
キリは俺の問いかけにも耳を貸さず一目散に駆けていく。
向かっているのは、奴隷狩りがやってくる方向だ。
「キリ、一体どうしたんだ?」
俺は並走しながら聞いたがキリは答えようとしない。
しかしその眼が怒りに燃えているのがはっきりと分かった。
ほどなくして俺たちは奴隷狩りの集団と相対した。
「なんだあ?てめえらは?」
馬に乗った奴隷狩りの男たちが俺たちを見下ろしてくる。
「あんたら奴隷を狩っているのか」
「だったらどうしたってんだよ」
髭面の男が俺の問いかけに尊大に答えた。
「あんたらのせいでみんなが助けを求めてきてるんだ。今すぐ引き返してくれ」
「ああっ?てめえにどんな権限があってそんなこと言ってんだよ!怪我したくなきゃ大人しくすっこんでな!」
言うなり男は持っていた槍の石突きを振り上げてきた。
話し合う余地もなしかよ。
防ごうと思った瞬間、俺の横から飛び出す影があった。
キリだ。
待て、と止める間もなくキリは持っていた棍棒で男の頭を叩き砕いた。
言葉を発する暇もなく男は絶命し、崩れるように落馬した。
キリの形相で思い出した。
キリは両親を奴隷狩りに殺され、自身も奴隷商人に売り払われていたことを。
「て、てめえっ!」
「何をしやがるっ!」
他の奴隷狩りが焦った時にはもう遅く、キリは竜巻のように飛び回って男たちを叩き伏せていった。
「待て、キリ、待つんだ!」
俺がキリの両腕を羽交い絞めにした時は既に大半の男が地面に倒れ伏していた。
「フーッフーッ!」
キリはまるで獣のように荒い息を吐き、俺の腕の中で暴れている。
「こ、これは…」
遅れてやってきたアマーリアたちが凄惨な光景に絶句している。
「ク、クソ…てめえらただじゃ済まねえぞ」
生き残った男が息も絶え絶えになりながら憎まれ口を叩いてきた。
「てめえらはもう終わりだ!俺たちを敵に回したんだからな!」
「殺す!」
「ヒイィッ!」
その言葉にキリが更に逆上し、その迫力に男は情けない声をあげた。
「これ以上キリを挑発するのはやめろ。それに奴隷売買は違法のはずだ。ただじゃすまないのはそっちの方だろ」
「いや、それは違うな」
意外な方向から答えが返ってきた。
振り向くとそこにはヘルマがいた。
しゃがみこんで男の遺骸を調べている。
「この男は我が国の人間だ。そしてベルトラン帝国では奴隷売買は禁止されていない」
ベルトラン帝国の人間?つまりこいつらは国境を越えて奴隷狩りをしに来てるっていうのか?
いや、そんなことよりもキリが殺したのはベルトランの人間ということならつまり…
「何事だ!」
その時大きな声が響き渡った。
振り返るとそこにはひときわ豪華な馬に跨った男がやってくるところだった。
二十騎ほどの完全武装した兵士を連れている。
服装からしてただの奴隷狩りや山賊の類ではないことがわかる。
「タ、タレク様!」
その姿を見てさっきまで震え上がっていた男がやにわに気勢を上げた。
「これはどういうことだ?」
タレクと呼ばれた男は近くまで来ると馬から降りることなく横柄な口調で聞いてきた。
「あいつらが急に襲い掛かってきやがってんでさあ。見てくださいよ、この有様を!みんな死んじまった!」
それを聞いたタレクが俺たちを睨みつけてきた。
「貴様ら、何をしたのか分かっているのか?貴様らはベルトラン帝国の人間を手にかけたのだぞ!」
「それはこっちの台詞だ。そいつらこそワールフィアの領地内で奴隷狩りなんかしていいのかよ!」
「ふん、こんな場所は国でもなんでもない。国としての体を成していない場所をどう扱おうが勝手だ。そういう貴様らどういう権利があってこの私に口を挟んでいる」
「こいつら、トロブの方から来やしたぜ!フィルドの人間に違いねえ!」
奴隷狩りの男の言葉にタレクの眼が残忍に光った。
「ほう、貴様らフィルド王国の者か。ならばベルトラン帝国と貴様らの関係は知っていよう。その身が惜しければさっさと帰るのだな。さすれば今回だけは見逃してやろう」
フィルド王国と聞いて態度が更に尊大になっている。
タレクの態度でベルトラン帝国とフィルド王国の力関係がどういうものなのか察しがつく。
「待て」
その時ヘルマが割って入った。
「なんだ、貴様は。勝手に割り込んでくるな」
「私はベルトラン帝国軍帝王陛下直轄部隊所属のヘルマ・バハルだ。貴様の名前と所属、役職を述べろ」
ヘルマがマントを持ち上げて腕に施された刺青を見せた。
「こ、これは失礼いたしました!私はこの近くにあるマテク地区の行政長官をしておりますタレクと申します。どうか無礼をお許しくださいませ」
それを見たタレクの顔が真っ青になり、慌てて馬から降りると平身低頭でヘルマに挨拶をした。
ベルトランでは軍隊がかなり力を持っているらしい。
いや、ヘルマの勇名が国の隅々まで知れ渡っているからなのかもしれない。
「挨拶はいい。それよりも何があったのか貴様の口から申してみよ」
ヘルマが感情のない声で言った。
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