外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
3.来訪者ヘルマ
なんででヘルマがここに?
まさか俺が偽名を使っていた(本名だけど)ことがばれて捕まえに来たのか?
ベルトランの人間がフィルド王国内でそんなことをできるのか?
一瞬のうちに俺の頭の中に様々な考えが渦巻いた。
一方のヘルマはというと何の感情も示さない眼差しでこちらを見ている
ヘルマの服装はシエイ鉱山で会った時の鎧姿とは違って今はフード付きのマントを身にまとい、厚めの生地でできたズボンにブーツという普通のいで立ちで、武器は何も身に着けていない。
「リューか、こんな所で奇遇だな」
ヘルマが口を開いた。
「あ、ああ、久しぶりだな。でもなんでこんなところに?」
「私はこの土地を治めるテツヤという人物に会いに来たのだが貴様もそうなのか?ここはそのテツヤの屋敷だと聞いたのだが」
その言葉にぎくりとした。
やべえ、テツヤと俺は別人って設定だった。
なんとかばれないようにしないと。
「あ、いや…まあ、そ、そういうところかな…でもテツヤって人は今はいないみたいだぞ。日を改めて出直した方が良いんじゃないか?俺もそうさせてもらうかな、アハ、アハハ」
必死で言い繕うとする俺をヘルマはじっと見ている。
いかん、いかんぞ、ここは何としてもごまかさねば。
沈黙が続く中を冷たい風が吹いた。
今の時期は日が沈むと急に寒くなる。
「冗談だ。さっさと中へ入れてくれ。ここは寒くてかなわん」
ヘルマが再び口を開いた。
「いや、だからテツヤは…」
「それはもういい、貴様がテツヤだというのはわかっている。別にどうこうするつもりはない。ただ話をしに来ただけだ」
ようやくそこでヘルマが既に俺の正体を知っていることに気付いた。
さっきのは冗談だったのかよ、真顔だったから全然気づかなかったぞ。
アマーリアの方を見るとこちらを見て頷いてきた。
どうやら今は中に招待した方が得策ってことらしい。
「わかったよ。急な話だから大したもてなしはできないかもしれないけど、とりあえず中に入ってくれ」
俺はドアを開けるとヘルマを招き入れた。
◆
「いつから気が付いていたんだよ」
「貴様の正体がテツヤだと知ったのは一月ほど前だ。しかしただの冒険者でないことは出会った時から分かっていた」
ヘルマはそう言ってキリが淹れたお茶を啜り、美味いと褒めた。
こういう反応をすることもあるのか、なんか意外だな。
応接間の暖炉にくべた薪が乾いた音を立てて爆ぜた。
しかしやっぱり調べていたのか。
「あれほどの力を持った者が今まで無名でいられるわけがないだろう。ならば何故我が国に来たのか調べる必要がある。そのためにいるのが私だ」
そりゃまあそうだよね。でもこんな短期間によく分かったな。
「それは機密事項だ」
俺とアマーリア、ソラノは視線を交わし合った。
その言葉だけでベルトランの密偵がこの国の深い部分まで入ってきているのがわかる。
ここでそのことを口にするということはそれが半ば公然の秘密となっているからなのだろう。
「じゃ、じゃあ今日はそのことで…」
「いや、先ほども言ったようにその件をどうこうするつもりはない。今回は休暇で来ただけだ。ついでに様子を見ようと思ってな」
いや、それは絶対に嘘だろ。
「何を言う。トロブが名湯地であることは我が国にも知られている。これを見よ、私の部下が作ってくれたトロブの観光ガイドだ」
ヘルマはそう言って机の上に羊皮紙を広げた。
そこにはベルトランからトロブまでの道のりや途中途中での名所、名物が詳細に書かれていた。
こ、細けえ…
「私の部下にこういうのが好きな奴がいてな。助かったよ」
「じゃあ本当にただの旅行なのか?」
「そう言ったであろう。現に武器だって携帯していない」
ヘルマは両手をひらひらと振った。
「確かにベルトランとフィルドを行きかう時は申請をしない限り武器の持ち込みは禁じられているな」
アマーリアが頷いた。
そう言えば以前シエイ鉱山に行った時も武器は持っていかなかったから鉱山街で調達したっけ。
「ここはなかなかいいところのようだからしばらく厄介になるつもりだ。良ければ観光案内などしてもらえないか?私の貴様の仲だ、良いであろう?」
一応懇願という体を取ってはいるけどヘルマの口調には否応もない圧がこもっている。
諸々のことを考えると断る選択肢はないというのは流石に俺でもわかる。
「……わかったよ。いつでも言ってくれ。俺で良ければ案内するからさ」
「それは良かった。それではさっそく明日から頼むとして今日はこれで失礼しよう」
そう言ってヘルマは立ち上がり、お茶のお礼を言って去っていった。
「……どう思う?」
ヘルマがいなくなった後で俺はみんなに聞いてみた。
「どうもこうもないな、とりあえず向こうの出方を待つしかあるまい。相手があのヘルマである以上気を付けるに越したことはないのだから」
アマーリアがため息をついた。
「ヘルマのことを知ってるのか?」
「軍属の人間で”越えざる壁”のことを知らぬ者はいないよ。ベルトラン帝国どころかこの大陸で最強格の一人と目されている人物だからな」
「それよりもだ」
突然後ろにいたソラノが俺の肩を掴んだ。
「ヘルマとずいぶん親しげだったようだが、どういう経緯があったのか説明してもらえないかな?」
「いや、それは前も言ったようにシエイ鉱山で出会って…」
「それは聞いたとも。何故ヘルマがわざわざテツヤに会いにここまで来たのか、ということを聞きたいのだ。シエイ鉱山で何があったのか、特にヘルマとどんなことがあったのかという部分をね」
俺の肩を掴む手に力がこもってきてる気がするんですけど。
「うむ、それは私も是非聞きたいな」
アマーリアまで頷いている。
「だからそれは勘違いだって……」
俺はため息をついた。
どうやら長い夜になりそうだ。
まさか俺が偽名を使っていた(本名だけど)ことがばれて捕まえに来たのか?
ベルトランの人間がフィルド王国内でそんなことをできるのか?
一瞬のうちに俺の頭の中に様々な考えが渦巻いた。
一方のヘルマはというと何の感情も示さない眼差しでこちらを見ている
ヘルマの服装はシエイ鉱山で会った時の鎧姿とは違って今はフード付きのマントを身にまとい、厚めの生地でできたズボンにブーツという普通のいで立ちで、武器は何も身に着けていない。
「リューか、こんな所で奇遇だな」
ヘルマが口を開いた。
「あ、ああ、久しぶりだな。でもなんでこんなところに?」
「私はこの土地を治めるテツヤという人物に会いに来たのだが貴様もそうなのか?ここはそのテツヤの屋敷だと聞いたのだが」
その言葉にぎくりとした。
やべえ、テツヤと俺は別人って設定だった。
なんとかばれないようにしないと。
「あ、いや…まあ、そ、そういうところかな…でもテツヤって人は今はいないみたいだぞ。日を改めて出直した方が良いんじゃないか?俺もそうさせてもらうかな、アハ、アハハ」
必死で言い繕うとする俺をヘルマはじっと見ている。
いかん、いかんぞ、ここは何としてもごまかさねば。
沈黙が続く中を冷たい風が吹いた。
今の時期は日が沈むと急に寒くなる。
「冗談だ。さっさと中へ入れてくれ。ここは寒くてかなわん」
ヘルマが再び口を開いた。
「いや、だからテツヤは…」
「それはもういい、貴様がテツヤだというのはわかっている。別にどうこうするつもりはない。ただ話をしに来ただけだ」
ようやくそこでヘルマが既に俺の正体を知っていることに気付いた。
さっきのは冗談だったのかよ、真顔だったから全然気づかなかったぞ。
アマーリアの方を見るとこちらを見て頷いてきた。
どうやら今は中に招待した方が得策ってことらしい。
「わかったよ。急な話だから大したもてなしはできないかもしれないけど、とりあえず中に入ってくれ」
俺はドアを開けるとヘルマを招き入れた。
◆
「いつから気が付いていたんだよ」
「貴様の正体がテツヤだと知ったのは一月ほど前だ。しかしただの冒険者でないことは出会った時から分かっていた」
ヘルマはそう言ってキリが淹れたお茶を啜り、美味いと褒めた。
こういう反応をすることもあるのか、なんか意外だな。
応接間の暖炉にくべた薪が乾いた音を立てて爆ぜた。
しかしやっぱり調べていたのか。
「あれほどの力を持った者が今まで無名でいられるわけがないだろう。ならば何故我が国に来たのか調べる必要がある。そのためにいるのが私だ」
そりゃまあそうだよね。でもこんな短期間によく分かったな。
「それは機密事項だ」
俺とアマーリア、ソラノは視線を交わし合った。
その言葉だけでベルトランの密偵がこの国の深い部分まで入ってきているのがわかる。
ここでそのことを口にするということはそれが半ば公然の秘密となっているからなのだろう。
「じゃ、じゃあ今日はそのことで…」
「いや、先ほども言ったようにその件をどうこうするつもりはない。今回は休暇で来ただけだ。ついでに様子を見ようと思ってな」
いや、それは絶対に嘘だろ。
「何を言う。トロブが名湯地であることは我が国にも知られている。これを見よ、私の部下が作ってくれたトロブの観光ガイドだ」
ヘルマはそう言って机の上に羊皮紙を広げた。
そこにはベルトランからトロブまでの道のりや途中途中での名所、名物が詳細に書かれていた。
こ、細けえ…
「私の部下にこういうのが好きな奴がいてな。助かったよ」
「じゃあ本当にただの旅行なのか?」
「そう言ったであろう。現に武器だって携帯していない」
ヘルマは両手をひらひらと振った。
「確かにベルトランとフィルドを行きかう時は申請をしない限り武器の持ち込みは禁じられているな」
アマーリアが頷いた。
そう言えば以前シエイ鉱山に行った時も武器は持っていかなかったから鉱山街で調達したっけ。
「ここはなかなかいいところのようだからしばらく厄介になるつもりだ。良ければ観光案内などしてもらえないか?私の貴様の仲だ、良いであろう?」
一応懇願という体を取ってはいるけどヘルマの口調には否応もない圧がこもっている。
諸々のことを考えると断る選択肢はないというのは流石に俺でもわかる。
「……わかったよ。いつでも言ってくれ。俺で良ければ案内するからさ」
「それは良かった。それではさっそく明日から頼むとして今日はこれで失礼しよう」
そう言ってヘルマは立ち上がり、お茶のお礼を言って去っていった。
「……どう思う?」
ヘルマがいなくなった後で俺はみんなに聞いてみた。
「どうもこうもないな、とりあえず向こうの出方を待つしかあるまい。相手があのヘルマである以上気を付けるに越したことはないのだから」
アマーリアがため息をついた。
「ヘルマのことを知ってるのか?」
「軍属の人間で”越えざる壁”のことを知らぬ者はいないよ。ベルトラン帝国どころかこの大陸で最強格の一人と目されている人物だからな」
「それよりもだ」
突然後ろにいたソラノが俺の肩を掴んだ。
「ヘルマとずいぶん親しげだったようだが、どういう経緯があったのか説明してもらえないかな?」
「いや、それは前も言ったようにシエイ鉱山で出会って…」
「それは聞いたとも。何故ヘルマがわざわざテツヤに会いにここまで来たのか、ということを聞きたいのだ。シエイ鉱山で何があったのか、特にヘルマとどんなことがあったのかという部分をね」
俺の肩を掴む手に力がこもってきてる気がするんですけど。
「うむ、それは私も是非聞きたいな」
アマーリアまで頷いている。
「だからそれは勘違いだって……」
俺はため息をついた。
どうやら長い夜になりそうだ。
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